12DaysOfChristmas

このエントリーは、ボドゲ紹介 Advent Calendar 2016 の24日目です。

✝ 概要

「12 Days of Christmas (クリスマスの12日)」は、2015年にEagle-Gryphon Gamesから発売されたKickstarter発のカードゲームです。3人から最大で8人まで遊ぶことができます。

クリスマスパーティなど、たくさんの人が集まる場で、誰もが楽しめるゲームのひとつとして、本稿ではこの「クリスマスの12日」をご紹介いたしましょう。

✝ ゲームの流れ

最初に全員へカードを12枚ずつ配ります。※人数によっては配布する枚数が少なくなります。

本作のカードは「1」〜「12」までの数字が振られていて、それが枚数も表しています。たとえば「1」のカードは1枚だけですが、「5」のカードは5枚、「12」のカードは12枚あります。

つまり本作は、全部で78枚のカードで構成されているということです。そのすべては数字のカードだけで、特殊なカードはありません。

最初にカードを出す人をリードプレイヤーといいます。

リードプレイヤーは、手札からカードを1枚のみ(シングルトン)か、2枚以上の連番(ストレート)か、2枚以上の同じ数字のカード(セット)を場に出します。

この、リードプレイヤーが場へ最初に出したカードのことをリードといいます。

続いて他の人は、時計回りの順で、場にカードを出すか、あるいはパスをします。

場にカードを出す時には、リードと同じ種類の組み合わせ(シングルトン、ストレート、セット)で、リードに含まれるカードの最小値と同じか、それ未満の数字のカードが、少なくとも1枚は含まれていなければなりません。

リードがストレートかセットであれば、リードと異なる枚数のカードを場に出すこともできます(ただし2枚以上でなければなりません)。リードがシングルトンであれば、場に出すことのできるカードは1枚だけです。

リードプレイヤーではない人たちが場にカードを出す時の制約は、あくまでリード(=最初に出されたカード)だけが判断の対象になります。リードプレイヤーではない他の人が出したカードには、何の制約も受けません。

なお、場に出せるカードを手札に持っていたとしても、任意にパスができます。ただし、リードプレイヤーだけはパスをすることができません。

こうして、全員が1回ずつカードを場に出すかパスをしたら、場に出されたカードの強さを判定し、次のリードプレイヤーを決める判定を行います。

最も小さな数字のカードを出した人が次のリードプレイヤーとなります。これを「トリックを取る」といいます。同じ人が連続してリードプレイヤーになることもありえます。

出したカードの最小値が同値の人が2人以上いたら、より後の手番でそのカード出した人がこのトリックを取ります。

その後、場のカードをすべて捨てて、また新しいリードプレイヤーから順番に場にカードを出すかパスをします。ゲームは、この一連の手順をくり返して進行します。

もし、手札を使い切ってトリックを取った人がいれば、その人は得点として「プレゼントカード」が1枚もらえます。これを「ハンドを取る」といいます。

またこの時、残った手札の枚数が最も多い人(たち)は、ハンドを取った人へ、持っている1枚のプレゼントカードを渡さなければなりません。

誰かがハンドを取ってプレゼントカードを獲得したら、ゲームは一区切りとなります。

なお、トリックの終わりに手札を使い切っていたとしても、そのトリックを取っていない人はハンドを取ることができません。

そういう場合には、直前の手番で自分の出したカードを手札に引き取ってゲームを続けなければなりません。ハンドを取るためには、単に手札を使い切るだけではなく、最後にトリックを取らなければならないのです。

ハンドを取り、プレゼントカードのやりとりが終わったら、再び78枚すべてのカードをよく混ぜて、全員に12枚ずつカードを配り、新しいハンドを始めます。

正式なゲームでは、このようにして12ハンドを行います。もっと短い時間で楽しむショートゲームなら、最初から全員が1枚ずつプレゼントカードを持った上で3ハンドだけ行います。

ゲーム終了時に、最も多くのプレゼントカードを持っていたプレイヤーの勝ちです。

✝ レビュー

「クリスマスの12日」のルールは、この記事の文章よりずっと短くて簡明です。だからインストも短時間で済み、たとえばクリスマスなどに家族や友人が集まった場などでも、手間をかけずに誰でもすぐ遊ぶことができるでしょう。

ギャンブル性が高いスコアリングルールも、制作者が幅広い層をターゲットにしたことによる当然の成り行きといえます。そのような人たちが集う場にあっては、最後まで逆転の目があるくらいの方が盛り上がるのではないかと思います。

実際に私が本作をプレイしてみたところ、こんなにも短いルールでありながらも、その裏にこっそりと隠された技巧性の面白さにすぐ気がつきました。それを同じように感じ取った方も多くいたようで、試しに検索してみると、国内ボドゲサイトで高評価なレビューがいくつも見つかりました。

ひだりの灰色
クリスマスの12日/12 days of Christmas
http://hidarigray.blog35.fc2.com/blog-entry-607.html

海長とオビ湾のカジノロワイヤル2
クリスマスの12日/Gryphon(2015)
http://www.casinoroyal2015.com/12

ボードゲーム大好き坊主
クリスマスの12日 12 Days of Christmas
http://kinako0503.blog.fc2.com/blog-entry-407.html

たっくんのボードゲーム日記
クリスマスの12日
http://www.tk-game-diary.net/12_days_of_christmas/12_days_of_christmas.html

素晴らしいですね。
そういうわけで、「クリスマスの12日」は傑作です(丸投げかw)。
ぜひお試しあれー

由来 〜エピファニー〜

さて、ゲームのタイトルである「クリスマスの12日」とは、いったいいつのことでしょうか。それは、クリスマスの12月25日から1月6日前日までの12日間のことを指します。

そして「1月6日」は、新約聖書に記されているひとつのエピソード(マタイによる福音書)に基づき制定されている「エピファニー」というキリスト教の祝日です。



新約聖書の「マタイによる福音書」 2:1〜13を抜粋して要約すると以下のようになります。

東からきた占星術の学者たちが不思議な星に導かれてベツレヘムに赴き、そこで母マリアと共にいた生まれて間もない幼子(イエス)を見いだした。
彼らは幼子に礼拝し、貴重な3つの贈り物を献げた。

ここに書かれている「占星術の学者」は"賢人"や"博士"と訳されることがあります。この物語は、そのような当時の代表的な知識階級にいる異邦人たち(つまりイエスやその家族のようなユダヤ人ではない人びと)が、その高い教養や学問をもってイエスをメシアとして認めて拝んだ、ということが示されています。

西方教会ではこれを「イエスの異邦人への現れ」として重きを置くことになりました。また一般的なキリスト教徒の歴史をたどってみても、このマタイによる幼年物語は人気が高く、多くの人に愛されてきた福音物語のひとつになっています。

エピファニーは日本語で「公現祭」「公現日」「主の公現」「顕現日」などと表記されることが多いです。クリスチャンでもない限り、国内では馴染みの薄い記念日ですが、キリスト教文化圏では、この「クリスマスの12日」こそが「クリスマスの季節」そのものです

世界の多くの地域において、12月25日を過ぎてもクリスマスツリーは飾ったままで年を越し、1月6日かその前日にツリーを片付ける、という習慣が見られるのも、エピファニーがクリスマスの終わりとされているためです。

また、主要なカトリック文化圏の国や地方では、このエピファニーを由来として1月6日は法定休日(Epiphany / Epiphany Day)になっています(イタリア、ギリシャ、スペイン、オーストリア、スウェーデン等々)。

このようにエピファニーは、現代の生活の中においても、そこに溶け込むようにして伝承され続けています。

✝ クリスマス・キャロル

ところで「クリスマスの12日(Twelve Days of Christmas)」は、有名なクリスマス・キャロルの曲名でもあります。

[クリスマスの12日間 - Wikipedia]
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%81%AE12%E6%97%A5%E9%96%93

この曲の歌詞は、マザーグースの詩をベースにして、それを「つみあげうた」と呼ばれる一種の遊び歌の形式で再構成しているようです。クリスマスからエピファニーの前日までの12日間に、日替わりでもらうたくさんのプレゼントが、その歌詞の内容です。クリスマスにふさわしい、華やかな願いのこもった伝統的なキャロルですね。

そして、ゲーム「クリスマスの12日」のモチーフはこのキャロルです。ですから、ボックスカバーのアートワークやカードイラストは、その歌詞のイメージを膨らませて作画されているというわけです(歌詞は、上記Wikipediaの記事で確認できます)。



もうすぐクリスマスを迎えようとしているこの静かな夜、あなたがここまで記事を読んでくれたことに感謝します。どうか、よいクリスマスを。あなたにとって、しあわせな日々となりますように。


家族
タイトル: 12 Days of Christmas
邦題: クリスマスの12日
メーカー: Eagle-Gryphon Games
発売年: 2015年
プレイ時間: 20〜30分
人数: 3〜8人
・メーカー製品ページ: Link
・BGGページ: Link
・Kickstarterのプロジェクト(終了): Link