moon Gamer

17日(土)は、西八王子で開催された「Twilight Struggle会」に参加してきました。これは「ハンニバル会」「ハンマー・オブ・ザ・スコッツ会」と同じく、taroさんが主催したオンリーゲーム会です。もちろんテーマは「Twilight Struggle (トワイライト・ストラグル)/ GMT」。以前と同様に、このゲーム会も公民会の会議室を借りて行われました。

参加者は、taro さん・つなきさん・ファラオさん・phy さん・U西さん・yamatoさん・手稲さん・つん坊さん・一味さん・K野さん、それに僕の11人です。

ということで当日の会場では、最大で同時に5卓の「Twilight Struggle」が並んでプレイされていました。すごい。また、1ゲームがわりと短い時間で終わることもあり、全員が組み合わせを変えて何ゲームも繰り返しプレイしていました。例えばファラオさんはこの日1日だけで7ゲームも遊んだとのことです。僕はやや遅め(午後1時くらい/ゲーム会開始は午前10時)に会場に入ったのですが、それでも3ゲームほど遊びました(最後の1ゲームは時間切れで途中終了でしたけど)。


Twilight Struggle / GMT Games moon Gamer

東西冷戦時代をテーマにしたカードドリブンな戦略ゲーム。2人。

moon Gamer

「トワイライト・ストラグル」は、第二次世界大戦が終了したあたりから、およそ半世紀に渡って全世界で繰り広げられた、アメリカ合衆国(資本主義陣営)とソビエト連邦(共産主義)との熾烈なイデオロギーの対立となった「冷戦(冷たい戦争/Cold War)」をテーマにしたシミュレーションゲームです。

ゲームは全部で10ターンあります。正確に割り当てられているわけではありませんが、1ターンは3~4年ほどを表しています。ゲームを通して、大きく3つの時期に分かれています。

1~3ターンまでは「Early War」です。戦後からポーランド問題・ベルリン封鎖を経て、超大国の対立という冷戦構造が全世界へ広がっていった時代を扱っています。

4~7ターンまでは「Mid War」です。スターリン死後、一時的な雪解けの時期を経て、キューバ危機やベルリンの壁が作られて緊張が高まった時代です。ゲーム的にはさらにデタント(緊張緩和)の時代まで包括しています。

8~10ターンは「Late War」は新冷戦時代です。ソ連のアフガニスタン侵攻によって再び世界は緊張を高め、中東での紛争が頻発した時期です。しかし80年代に入って冷戦は加速度的に終焉へと向かい、91年のソビエト連邦は解体で完全に終結したのでした。

moon Gamer

基本的なシステムはカードドリブンメカニクスです。手番では1枚ずつカードをプレイし、それのオペレーション値(OP値)として使うか、あるいはイベントとして使うかを選択します。各ターンでは6~7のアクションラウンドあり、1ラウンドで交互に1枚ずつカードをプレイします。なお、各アクションラウンドはソ連プレイヤーが先攻で固定されています。

カードをオペレーションとして使う場合、以下の4つからひとつを選びます。

  1. 影響マーカーの配置 Placing Influence Markers
    1オペレーション値ごとに1影響値を、ルールで規定された国へ配置します。複数の国に影響マーカーをばらまいてもいいですし、ひとつの国に集中して置いても構いません。ある国に対して、一定の影響値を置いた陣営は、その国を「支配国」として扱うことが出来ます。
  2. 影響度の排除 Realignment Roll
    1オペレーション値を使うことで敵陣営の影響度を下げる試みが行えます。これはダイスを使った判定になります。自陣営の影響度は増えませんが、複数の国で試みることが可能です。
  3. クーデター試行 Coup Attempt
    1国を選び、そこでクーデターを起こすことが出来ます。その国の政治的安定度(Stability Number)と敵陣営の影響度が関連し、それにダイス振って成否を判定します。クーデターによって、支配状態が一気にひっくり返ることもあります。
  4. 宇宙開発競争 Space Race
    原則として1ターンに1回ずつ「宇宙開発競争」を試みることが可能です。宇宙開発には「0」~「8」までの段階があり、新しい段階に入るためには、条件に合致したオペレーション値を持つカードをプレイした上で、ダイスによる判定をクリアしなければなりません。宇宙開発で相手陣営よりも先の段階に進むと、ゲームでより有利になる恩恵が受けられることがあります。

オペレーションとしてカードを使ったとしても、そこに敵陣営のイベントが書かれていたらそれは実施されます(たいていは自分の陣営に不利になるイベントばかりです)。これがかなりきついルールで、このために不本意なイベントを起こさなければならないことも頻繁に発生します。

moon Gamer

冷戦の時代は双方の陣営が軍拡を続けていました。その最たる存在が核兵器です。超大国が保有する核兵器の総数は人類を何回も滅亡させてしまう過剰な規模にまで膨らんでしまい、次の世界大戦の勃発は地球の破滅をも意味していました。このため、核戦争を抑止力として利用し、実際にはその行使をギリギリの瀬戸際で回避する外交的な駆け引きが冷戦を通して行われることになりました。「トワイライト・ストラグル」では、この緊張を「DEFCON(デフコン/Defense Readiness Condition)」の段階という手段で簡潔に表現しています。

デフコンの初期値は「5」です。これは世界がまだ平和であるという段階を表します。しかし陣営にとって重要な国家(Battleground)でクーデターが発生したり、あるいはイベントの結果などによってデフコンは低下します。もし「1」になってしまったら核戦争が勃発してゲームは強制的に終了します。この場合、核戦争になった瞬間に手番となっているプレイヤーが敗北です(非手番プレイヤーは勝利します)。

デフコンが低下すると、クーデターや影響力の低下オペレーションに強い制限が加わります。自分の手番で「1」にしてしまうと負けなので、あえてデフコンを低下させて手番を終わらせることで、相手の行動選択を狭めて束縛することはこのゲームで常套手段です。まさに人類の滅亡と背中合わせという綱渡り状態で覇権争いが繰り広げられるのです。

このゲームの目的は、敵陣営よりも大きな得点(VP)を獲得することです。ゲーム中には得点カードやイベント、あるいは必要軍事作戦値(詳細略)などによってVPのやり取りが頻繁に行われます。双方の陣営の得点差が20VP以上になるとサドンデスとなり、得点の大きなプレイヤーの勝利でゲームは終了します。デフコンによる強制終了も起こらず、10ターンが終了したらやはりルールにしたがって計算を行い、VPの大きな陣営が勝利となります。

moon Gamer

「トワイライト・ストラグル」の勝敗バランスはソ連が有利に傾いています。特に序盤の「Early War」はソ連側に有利なイベントが多く、その傾きが強烈です。「Late War」まで持ち込めればアメリカ陣営も勝負の形にまで持ち込むことが可能となるので、そこまで粘り強く、せめてサドンデスで負けないよう凌いでいくという耐える姿勢が必要でしょう。

この日の最初のゲームはアメリカ陣営を担当しました。初ゲームということもあり、イベントの感触やゲームの流れを把握しつつプレイしたのですが。「Mid War」に入って2ターン目くらいでサドンデス負けとなってしまいました。続いて対戦相手を変え、気を取り直して2ゲーム目もアメリカを担当。今度こそはとはりきって臨んだにもかかわらず、カードの引きが悪すぎで「Mid War」の最初のターンでサドンデス負けを喰らいました。moon Gamer

こうなったら意地でも行くぜっということで、3ゲーム目もアメリカ担当。やっとこれでアメリカの粘り方がわかってきました。一時的に自分に不利になるとわかっていても敵の使い捨てイベントカード(強力です)はあえて使ってしまうとか、そうでなくてもカードのうまい捨て方や後に回す処理方法もいくつか編み出しました。このセッションでは、カードやダイスに多少恵まれたこともありますが、Late War の直前ターンまで何とかたどりつたところで、時間切れにて協議終了となりました。

moon Gamer

バランスは確かにアメリカにやや不利なのは間違いないようです。とはいえ、対応策がないわけでもなく、ソ連が一方的にラクという訳でもありません。いずれにせよ、イベントカードの効果はド派手なものが多く、一瞬のプレイングミスは致命的な結果にすぐに結びつきます。まさに真剣勝負のツバ競り合いというわけです。

プレイに先立ってイベントカードのテキストを予習しておくことはまず必須でしょう。得点カードは当然見ておくべきとして、マップ上のどの国でどんなイベントが発生するかまで把握することも大切です。その情報を頭にたたき込んでおけば、影響力マーカーの配置・排除、そしてクーデター等の細かなオペレーション方針が自ずと決まります。

運の比重は確かに高いのですが、それだけのゲームではないこともまた確かです。実際、技巧や大局観に基づいた大戦略は確かにあり、経験の差だけではないプレイヤーの実力差も存在します。カードを使ったゲーム特有のシチュエーションの多彩さも見事で、プレイヤーは次々と降りかかる未知のトラブルに対して、限られた手札と手番でどのように打開するかを柔軟な思考で考え抜かなければなりません。それほどバランスが良くないゲームでありながら、この血路を開く過程の図抜けた面白さが欠点を補って余りあります。

個人的な感覚ではありますが、冷戦の時代に生まれそして育った人間として、イベントカードの効果に感情移入しやすいという点もまた「トワイライト・ストラグル」の大きな魅力です。ルールが簡単でプレイ時間も短いため、手軽な戦略ゲームとしてアメリカでもかなりの人が繰り返しプレイしているそうです。日本でもシミュレーションゲーム系のブログでプレイ報告が続々と書かれています。恐らくこのまま年単位で長くプレイされていくことでしょう。さらに定番ゲームとして定着するには、VPの初期値などでバランスを調整していく必要はありそうです。moon Gamer
http://www.boardgamegeek.com/game/12333


レポートは以上です。

何だか1日があっという間に過ぎ去りました。
翌日にもゲーム会の予定が入っていたので、アフターは失礼させていただきました。送迎のクルマの中でtaroさんと「トワイライト・ストラグル」についてちょこっとだけ話をしたりして、この素晴らしいゲーム会の余韻にひたりつつ帰宅の途につきました。

参加したみなさん、本当にお疲れさまでした。
またぜひ遊ばせてください。moon Gamer