2日(日)は、つなきさん宅にて開かれた「蒸気の時代会」にお呼ばれして行ってきました。「蒸気の時代」とは、このブログでもすでに何回も登場している名作鉄道ゲーム「Age of Steam / Warfrog(Winsome Games) 」です。

つなきさん宅では、前日の土曜日からすでにこの会が開かれていました。シングルゲームのテーマ会であるにも関わらず、夜を徹しての2日連続開催という快挙です。しかもプレイされたのは、国内ではほとんど出回っていないサードパーティ製の拡張マップばかりという、まさに「蒸気の時代フリーク」たちが、よりどん欲に高いところを目指して濃密に楽しむために開かれたゲーム会で、そのとろけるような素晴らしい感覚を心の底から堪能させていただきました。この場に参加出来たことを本当に嬉しく思います。

僕は2日目だけの参加でしたが、この日だけでも、つなきさんの他に puppiさん・phyさん・taroさん・手稲さん・つん坊さん、それに僕と7人も集まっていました。

Age of Steam Expansion (拡張マップ)について
2002年に発売された「Age of Steam (蒸気の時代)」は、これまでたくさんの拡張マップが発売されてきました。このうち、早くから発売されていたのが Warfrog社からライセンスを受けて販売されていた Winsome Games社の拡張マップです。現在までのところ #1~#4 まであり、#1を除くと現在でも入手可能です。国内ショップで扱われているのはこの拡張セットで、事実上の「純正」扱いです。

これとは別に、やはり同様のライセンスを受け、小規模ながら販売されている拡張マップがあります。「純正」の Winsome Games社版の拡張マップは元ゲームと同様に厚紙製のハードマップですが、これらはオフセット印刷やラミネート加工されたマップで、個人制作っぽいややチープな作りになっているのが特徴です。

この他にもPDFでオンライン無料配布されている拡張マップもあります。これらの「サードパーティ製」拡張マップの中には BoardGameGeek で高い評価を受けているものも少なくありません。今回レポートするのはその中の2つです。

Age of Steam Expansion - North Eastern USA / Steam Brothers moon Gamer

特別ルールの「Speculation」が秀逸。6人。

moon Gamer

これまで発売された「蒸気の時代」拡張マップには、そのほとんどに特別ルールがあります。ルールだけではなく、追加の線路タイルや専用のディスプレイシートなどが付属するセットまであります。つまり「蒸気の時代」拡張マップとは、単に地形の配置や広さが異なるというだけではなく、基本ゲームとはほんの少しだけ変わったパラダイムを楽しむ環境だと言えます。

moon Gamer

この「North Eastern USA」にも特別ルールがあります。いくつかある特別ルールの中で、最も大きな影響を与えるのが「Speculation (投機)」です。このセットではアクションの「Production」が無く、その代わりに「Speculation」が入ります(なので、専用のアクションディスプレイカードが同梱されています)。

「Speculation」を選択したプレイヤーは、ただちに商品キューブの色を1色だけ選択します。選択された色のキューブを Move Goods フェイズにおいて輸送すると、輸送したプレイヤーは通常の Income(収益)に加えてボーナスとして+1の収益を受け取ります。例えば「黒」が「Speculation」で選択されている時に、自分の路線を2つ使って黒キューブを輸送したプレイヤーは+3の収益を得ます。

しかもこれは全員がその恩恵に与ります。「Speculation」を選択したプレイヤーだけではなく、指定された色のキューブを輸送しさえすれば、誰でもこれらの影響を受けるのです。もちろん、わざわざ他人を利することはありませんから、「Speculation」アクションを選んだからには、出来るだけ自分だけが輸送可能な商品キューブの色を選択することになるでしょう。特に商品キューブの減った終盤ではそういう状況が現れやすくなります。

moon Gamer

また序盤〜中盤においても、下位グループ全体にメリットがあるような色を選択することで、収益を全体的に底上げして順位的にダンゴ状態にするような考えもまたあります。いずれにせよ厳しい判断が要求されるアクションですが、上手くいくとドラスティックに収益を改善する大きな効果を生み出します。

で、実はこのセッションで「Speculation」の最も大きな恩恵を受けたのは、何を隠そうこの僕でした。moon Gamer

まだ序盤でしたが、突発的に「Speculation」でボーナスを受け取るために、強引にその色の商品キューブを輸送するラッシュが発生し、輸送経路に僕の路線があったのです。「Speculation」ボーナスはキューブを輸送するプレイヤーだけが受け取れますが、そこで他人の路線を使えば、もちろん通常通りにそのプレイヤーに収益が入ります。この棚ボタな収益を得ることが出来たのが最初の幸運。さらにその後で、自分でも「Speculation」ボーナスを獲得する輸送が行えたのです。これが2つめの幸運。

moon Gamer

これら二重の幸運が重なって、2ターン終了時にはすでに収益がプラスになっていました。バランスの厳しい上級者向けマップで、しかもタイトな6人プレイにおいてこれは強烈なアドバンテージとなり、結局このリードをそのまま保った形で僕の勝利となりました。まぁ、これ自体が棚ボタのようなもので実力でも何でもないです。次にプレイした時にはこんなに上手く行かないでしょう。

ところでこの拡張マップのシティやタウンの配列もよく考えられていましたのも感心しました。東側に青と黄の都市が並んでおり、西から北には紫の都市が並んでいます。それを断絶する形で広い山地が横たわっており、その中にタウンがひしめき合っています。つまり後半に大商いをするためには、どうしても山地を突っ切って路線建設を行わなければなりません。

そのためには「Urbanization(都市化)」が路線建設の補助材料として重要となり、さらにそれは「Speculation」にも多大な影響を与えます。このコンビネーションによる相乗効果が「North Eastern」のゲーム性を高めており、周到にデザインされた完成度の高い拡張マップであると言えるでしょう。見事です。moon Gamer
http://www.boardgamegeek.com/game/21031


Age of Steam Expansion - South America / Steam Brothers moon Gamermoon Gamer

山岳は$6かかります。メンツを変えて6人。

moon Gamer

※写真の上が南です。

さて、この拡張にもまた特別ルールがあります。まずアクションの「Turn Order Pass」が無く、代わりに「El Presidente(大統領)」という変わったアクションが入ります。「大統領」アクションを選択したプレイヤーは、そのターン中は「大統領」となります。この特別アクションの説明をする前に、マップの構成から説明しましょう。

moon Gamer

このマップには「青」のシティは唯一「Buenos Aires(ブエノスアイレス)」の1つしかありません。シティタイルも青は除去されます。この「ブエノスアイレス」には Goods Growth フェイズで追加される商品キューブの他に、さらに追加して1個のキューブが毎ターン置かれます。

しかし「ブエノスアイレス」には、さらに冒頭の「大統領」と絡んだ強烈なルールがあるのです。もし、大統領でないプレイヤーが、Move Goods フェイズにおいて何らかの商品キューブを「ブエノスアイレス」から運んだり、「ブエノスアイレス」を終点としたり、あるいは「ブエノスアイレス」通過させた場合、「大統領」プレイヤーに$1を支払わなければなりません。

仮に大統領プレイヤーがいなかったとしても、このコストは銀行に支払わなければならないのです。「ブエノスアイレス」はあらゆる意味でこのマップの要所として機能することになります。

moon Gamer

他にも山岳ヘクスの路線建設コストが$6(特別ルール)であることや、シティの配色と配置がどちらも偏っている上に、6人プレイでは優良な土地が少ないので、路線建設も商品輸送も熾烈を極めます。テクニカルな要素が多く、上級者向けの渋いマップと言えるでしょう。

このセッションで僕は路線建設のルートの確保に大失敗し、路線を北上させることが出来なくなるという失態を演じました。ただでさえ狭くてコスト高の土地でこのエラーは致命的です(おまけに勝てないからってしょうもない開き直りの失言までする始末。どうもすいませんでした>参加者の方々)。

勝てなくなってからも、いろいろとあがいてみたのですが、実は順位を上げるだけなら意外と何とかなった可能性もありました。そうすると諦めてゲームを投げてしまったことがますます悔やまれます。ぜひまた機会があれば再戦をしたいところです。moon Gamer
http://www.boardgamegeek.com/game/21030


レポートは以上です。

この時点で8時をはるかに回っていた時間だったので、これにて終了となりました。

「蒸気の時代」は、何事にも代え難い魅力を持っています。しかしそれは妖しげなドラッグのごとく、底なしの色香に惑わされて悪しき幻想を生み出す発端になるかもしれません。「蒸気の時代」は極めて厳しいゲームバランスの上に成り立っているフリーク向けの作品で、ゲームが一度始まると、全てのプレイヤーは極度に緊張した不安定な状況に長時間置かれます。乱数も入り込んでくるので、先を読もうにも読み切れず、遠い将来への漠然とした不安を常に抱え込むことになります。

実のところこのしびれるような感覚がたまらないのですけれども、無理をして一度に何度も繰り返しプレイすると、精神的・肉体的な疲労が本人が意識する以上に蓄積してしまい、その結果、ささいなことで場が荒れる奇禍を呼びやすくなることがあるのではないでしょうか。

※当然ながら、だからと言って僕の失言が正当化されるとは思いません… 本当にごめんなさい。moon Gamer

あまりにも面白くてとめどなくプレイしたいゲームではありますが、短時間で何度もやりすぎるとそういう副作用が発生することもあるので、1ゲーム終わった後には十分な休息を取るとか、そもそも1日1ゲームだけにするとか、ひとつのセッションを心の底から楽しむための環境作りにもっと配慮していいかもしれませんね。「蒸気の時代」は、そういう手間をかけてでも繰り返しプレイするに耐える素晴らしいゲームであると僕は思います。

最後になりましたが、長い時間お付き合いいただいた参加者のみなさまには心から感謝いたします。
特にご自宅を開放していただいたつなきさんには深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
またこのような素晴らしい機会が訪れることを切に望みます。moon Gamer