moon Gamer>「『ほう、これは良いテンの毛皮ですね。今年はどの作物も豊作で、テンの入荷が少ないのです』
テンは市場に出回る約半分のものが農作業の合間に農夫達によって狩られるものだ。そのため、作物が豊作で農作業が忙しいとその供給も減る。ロレンスは少し強気に出ることにした。」

~「狼と香辛料」第1巻P123~P124より引用~

「狼と香辛料」にはこのように、行商人と買い手(あるいは売り手)との間で商品の価格を決める対面交渉が行われるシーンの描写があります。このような交渉の結果、条件が折り合わなければ売買は成立しないでしょうし、また逆に思わぬ高値が付くこともあるようです。

「Star Trader / SPI」では、このような具体的な交渉そのものは行われませんが、商品の売買価格や取り扱い数を決める方法は、他に類を見ないユニークなルールによって構成されています。相場をにらみつつ、適切な値付けを行わなければ、売買の機会を失ってしまうかもしれないのです。相手が人間であろうと市場であろうと、自分の都合だけを押しつけては商いは出来ません。

このエントリーでは、「Star Trader」の商品取引メカニクスについて解説します。


Star Trader / SPI moon Gamer

知力・体力・時の運。

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入札

ターン開始時に各プレイヤーは、そのターンに行いたいすべての取引について、プレイヤーログシートにプロットします。どの恒星系で、どの商品を、いくらで、「売る」か「買う」かを、希望する取引数だけ書きます。この入札は秘密入札であり、実際に取引を行う時点まで、他のプレイヤーには非公開となります。

取引

購入か売却の取引を行いたい商品について、まずは需給状態のチェックを行います。通常の価格変動時と同様に2D6のダイス目を、該当商品のS/D修正値と加算します。この結果がS/D指標となり、そこに「S/Dマーカー」を置きます。マーカーの位置が、その商品について、現在の需給状態を示します。

すなわち、これがマイナスなら「需要」(市場で商品の買い手が多い)、プラスなら「供給」(市場で商品の売り手が多い)状態というわけです。

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商品の需給チェック

もし、プレイヤーがプロットした取引が「購入」の場合、S/D指標が「供給」(プラス)でなければなりません。また逆に、プロットした取引が「売却」の場合、S/D指標は「需要」(マイナス)でなければなりません。

もし、「購入」を指定したにも関わらず、市場のS/D指標が「需要」であったり、あるいは「売却」を指定して市場が「供給」である時には、いずれの場合もプロットした取引は成立せず、何も行われません。

商品購入

無事取引が成立した場合、プレイヤーが提示した額をチェックします。ここでは「購入」の場合について説明しましょう。

提示額から現在の商品価格を引き、その差と同数の商品相場修正値を持つS/Dトラック上のマスを参照します。商品相場修正値は同じ数が3マスありますが、購入の場合はこの中から「最も左側のマス」を参照します。便宜的に、このマスのことを「基準マス」と呼びましょう。そしてダイスで導き出されたS/D指標と基準マスの間のマス数を最大値として、該当商品の購入が行えます。

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これも文章ではわかりずらいので具体例で説明しましょう。

まず対象となる商品は、相場価格が「9」で、S/D修正値が「-8」の香辛料です。この状況で、プレイヤーAは、この香辛料を「11」で購入するとプロット(オファー)しました(プロットは実際にはログシートに記載する秘密入札です)。

取引開始です。2D6のダイス目は「10」でした。これによってS/D指標は「+2(=10-8)」となり、そこにS/Dマーカーを配置します。市場は供給状態を示しました。したがって取引は成立し、香辛料を購入することが可能となります。

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もし、このダイス目が「5」だった場合、S/D指標は「-3(=-8+5)」とマイナスになり、市場は需要状態となります。つまり市場に売る香辛料がないということなので、購入は出来ません(取引不成立)。

さて、プレイヤーAは「11」という購入価格を提示しました。現在の相場価格が「9」なので、提示額を引いた「+2(=11-9)」が基準マスとなります。商品相場修正値の「+2」のマスは3つありますが、「購入」なので、最も左側のマスが基準マスとなります。

プレイヤーAは、S/D指標と基準マスの間にあるマスの数だけ香辛料を購入可能です。この場合は9マスなので、9つまでの香辛料を、単価11で購入可能です。

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プレイヤーAは5つの香辛料を購入することにしました。提示額が単価11なので、55を銀行に支払って香辛料を5個手に入れます。

この後で、S/Dマーカーを、プレイヤーAが商品を購入した数だけ左に移動させます。そして、マーカーを移動した先のマスにある商品相場修正値を、今回の取引対象となった商品の価格に反映させます。この場合「+1」なので、香辛料の相場価格は「9」から「10」へ上昇します。

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つまり、プレイヤーAが香辛料を買い付けたことで、この市場の香辛料は供給から需要へと一気に転じ、その結果として価格の上昇を招いた、ということです。


このように「Star Trader」では、プレイヤーが市場で何らかの取引を実施することで、その相場価格や需給状態がダイナミックに変動します。これを上手く利用すると相場を自分自身で操作したり、相手の取引を妨害することも可能ですが、ダイス目によっては期待する取引が成立しないこともあるので、これらの操作をすること自体にもそれなりにリスクも背負います。

このように、ダイス目によって取引が成立しないことがあるなど、確実な儲けを出すのはなかなか難しくなっており、ひょっとしたら運の比重が高いと思われる方もいるかもしれません。実際その通りです。しかしこれは「新参の行商人」をのロールプレイさせるためのデザインとしては、極めて妥当なあり方でもあるのです。

「フリーシナリオ」において、ゲーム開始時にプレイヤーは、まだ取引に不慣れな行商人であるという設定になっています。したがって相場の動きを読むことにも取引の交渉にも慣れておらず、無駄なミスも多く発生することでしょう。こういった状況を、抽象的ながら状況を的確に表現しているわけです。

しかし最初は新参者であったとしても、いつまでもそうであり続けるわけではありません。何度か取引を成立させたら「経験」を積み上げたこととなり、より柔軟に取引を行うノウハウが身につき、商人として「成長」していきます。「Star Trader」ではこの過程もまた表現されており、それは「マーケットポジション」というルールにあたります。それについてはまた別のエントリーでご紹介しましょう。 http://www.boardgamegeek.com/game/3534


Episode-3 へ続く…