Locomotive Werks

2013/3/16 のレポートの続きです。前回レポート : http://moon.livedoor.biz/archives/52310082.html

この日、2つ目のゲームは Locomotive Werks (機関車工場) / Winsome Games | Queen Games でした。

moon Gamer

生産数が少なすぎる Winsome Games のプロダクトにありがちな、「気がついたらもう地球のどこでも入手難」な状態となって、すっかり幻のゲームとなっていたわけですが、Queen Games が Kickstarter (またおまえか) でがんばってくれましたので、こうして極東の島国でもようやく遊ぶ機会が得られました。実にすばらしいことです。ゲームの内容がオリジナルとリメイクとで違いがあるかどうかまでは調べていないので不明ですけれど。

国内ではメビウス頒布会で販売されましたので、そのうち一般販売も始まるのではないでしょうか。

◆概要
Locomotive Werks のテーマは19世紀のドイツにおける鉄道機関車の開発史です。プレイヤーは機関車工場の経営者となり、次々と世代交代して市場に登場する機関車を、需要に応じて工場で生産し、それを売却することで、より大きな収益を上げることが目的となります。

プレイヤーはあくまでも工場経営者であって、鉄道ゲームによく見られる線路敷設や株式売買などの鉄道会社経営的要素はありません。

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◆需要
ゲームボードには、様々な機関車が周囲をぐるりと取り囲んでいます。左上の機関車(旅客機関車の第一世代)が、このゲームで最初に登場する機関車です。4人ゲームの場合、全員がこの機関車を「1」だけ生産する工場を持っています。

右の図は、各機関車の世代交代について、ゲームボードのデザイン構成を元に抽象的に表現して作成したものです。

現時点で取り扱い可能な機関車は、ゲームボード上にダイスが配置されている機関車だけです。このダイスは、このラウンドでのその機関車がどれだけの需要を持っているかということと、実際に売却可能な機関車の残余数を表しています。

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◆機関車工場
プレイヤーが保有する機関車工場はカードによって表されています。機関車工場には、カードに記載された機関車を生産する機能(生産能力)を持っています。

生産能力とは、その工場が機関車を製造する生産ラインのようなものです。したがって、ある工場で生産した機関車を出荷し売却したとしても、次のラウンドでその工場はまた生産能力に等しい数の機関車を生産し売却することが可能です。

機関車工場は、プレイヤーが受け取った直後は初期値で「1」の生産能力を持っており、その数字が記されたタイルをカード上に置きます。「1」の生産能力を持つ機関車工場は、あるラウンドにおいて、最大で売却代金に等しい額の収益を上げる可能性があります。

同様に「2」の生産能力を持つ機関車工場は、あるラウンドにおいて、最大で売却代金の2倍に等しい額の収益を上げる可能性があります。以下同様です。

機関車工場の生産能力は、「増設」によって増やすことができます。ただし、生産能力を「+1」するごとに、工場増設コスト(カードに記載されています)の支払いが必要です。

旧式の機関車工場は、より新しい機関車工場に生産ラインをシフトさせることが可能です。シフトするには、新式の機関車工場をプレイヤーが保有していなければなりません。またシフトさせる場合には、工場増設コストの差分を支払う必要があります。生産ラインですので、コストさえ支払えば運用は柔軟に行えるようになっています。

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◆需要と収益
工場で生産した機関車を市場に売却することでプレイヤーは収益を得ます。ですが、市場がいつでも無尽蔵にどんな機関車でも受け入れる、というわけでありません。市場の需要には上限があり、また古い型の機関車は需要が少なくなります。

ゲームボード上の各機関車には2〜4マスの「需要マス」があり、ひとつの需要マスにはひとつのダイスが配置されます(必ずしもすべての需要マスがダイスで埋められるとは限りません)。需要マス上のダイス目が、そのラウンドにおけるその機関車の需要を表します。ダイス目が高い方がたくさん売れるという意味になります。

ある機関車の需要マスに置かれたダイス目の数までは、その種類の機関車工場で生産した機関車を売却が可能です。ダイス目に等しい数の機関車が売却されたら、ダイスは「購入済み」のマスに移動させます。ある機関車工場が、需要を越える生産能力を持っていたとしても、売却可能な上限は需要マス上のダイス目の数までです。

あるプレイヤーが、需要マスのダイス目よりも少ない数の機関車を売却した場合、需要そのものは残ります(ダイス目−売却数=残り需要)。別のプレイヤーが同じ種類の機関車工場を持っていて、まだ生産能力が残っているのであれば、残った需要まではその機関車を売却することが可能です。

つまり需要マスのダイス目は、そのラウンドにおいて、購入済みの機関車工場(同じ機関車工場を複数プレイヤーが所有していることもあります)が売却可能な上限値という意味です。

ひとつの機関車の需要マスに、複数のダイスがある場合の売却については、ルールに従った手順で処理が行われます。詳細は省略しますが簡単にまとめますと、需要マス上のダイス個数が多いほど売却の機会が増加し、ダイス目が大きいほど一度に売却可能な数が多くなります。

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◆世代
ゲームが進行するにつれ、より新しいタイプの機関車が次々と登場します。ゲームボード上で、現時点で最も新しい機関車から時計回りに隣接した位置にある機関車が、次の最先端として登場する機関車です。

機関車には4つの種類があります(旅客・急行・貨物・特殊)。新式の機関車が登場しますと、それと同じ種類で旧式の機関車の需要は下落するようになります。例えば、旅客機関車の第二世代型の機関車がゲームに登場しますと、旧世代となる第一世代型の旅客機関車は需要が落ちていきます。

第三世代型の機関車が登場するようになりますと、同じ種類で二世代古い機関車は新たに購入できなくなります。需要が下落した結果ゼロとなり、市場がなくなってしまった機関車の製造工場は、生産ラインを新しい世代の機関車工場へとシフトさせない限り、もはや利益を生み出すことはありません。

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◆争点
このゲームでは、多くの部分で他プレイヤーとの絡みがあります。しかし関連が密なだけだけであって、競合要素はそれほど多くありません。そのほとんどが機関車を売却する順番に偏在しています。

新規工場の開発は極めてコストが高い設定になっています。新規開発を開始した上で、更に増設まで考慮しますと、所持金にかなりの余裕があるときだけしかこの選択を行えません。無理をして工場を購入しても、十分な利益が出るまでには時間がかかります。このゲームにおいて時間は自分だけではコントロールすることは不可能で、思わぬタイミングで世代交代が一気に進んでしまいますと、利益どころか損害を食らうこともあります。

かといって少ない生産力で工場を自転車操業しているだけでは、時代の最先端の機関車を効率よく生産して収益を上げているプレイヤーに市場の独占を許してしまいます。何をするにしても他プレイヤーの思わくが複雑に絡み合ってきますので、思い通りに進めるのはなかなか難しいゲームです。

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所持金が少なければ、次のラウンドではプレイ順が先になります。そのようなときに、あなたがたっぷり増設した工場の機関車がたまたま大きな需要に恵まれていたのであればチャンス到来です。需要はダイスでランダムに決まりますから正確に読むことはできませんが、自分にとって有利なシチュエーションを思い描きながら計画を立てることくらいはできます。

一方、不運にもそのようなときに世界が不況に波に飲み込まれていたのであれば、頭ひとつ飛び抜けたプレイヤーが収益の要としている市場に介入したり、あるいはその市場を時代遅れにするべく新規開発を推し進めるような行動を取ったりします。どちらにしても現金が必要ですけれど。


この日のセッションでは、ふうかさんが中盤すぎに大きな利益を上げることに成功した後、そのまま順調に業績を伸ばし続けていました。他の3人はそれに対抗するべく、急いで世代交代を推し進めたものの、それを無計画にやっちまったのは性急すぎた行動だったようで、それぞれが十分な収益を上げる前に、まだろくに走ってもいない車両の需要が次々としぼんでいく流れになって自滅したような気がw

中盤までは1ターラーを搾り取るような細かで地味な駆け引きが続いていたのですけれど、それを過ぎたら各自の収益は急速に膨らみ、終盤は1ラウンドで数十どころか3桁に達する大きな収益となって一気に収束しました。

結局、最終ラウンドはふうかさんのウイニングランを眺めているだけだったような。僕の結果は300ターラーちょうどの3位でした。

このゲームはダイスを多用しますが、プレイヤーが収益を上げる経営部分に偶然の要素はありませんので、中盤を過ぎてからある程度の差をつけられると後から追いつくのはかなり難しくなるような気がしました。

初回ゲーム後の感想としては、序盤はほとんどが必然手だけで場が進む作業感が強くて、また終盤の少しばかり大味な展開からしますと、中盤でどうやってゲームメイクするかを考えさせるようなデザインになっているのかなあ、と。

見通しが良くクリーンなシステムはとても気に入りました。今回は何かと悔いの残る展開でしたし、周囲には鉄道ゲーム好きが多いですから、再戦の機会が訪れることを願っています。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/3828/locomotive-werks

※レポートは後日に続きます。次のレポート:http://moon.livedoor.biz/archives/52311074.html