moon Gamer - ボードゲームブログ

テーブルゲーム(ボードゲームやカードゲームなど、電気を使わないタイプのゲーム)と、その周辺の話題を中心にした記事や写真を広く公開している個人ブログです。

カテゴリ: プレビュー・レビュー

Wars of Religion (ユグノー戦争) / 武蔵小杉ゲーム会 (11/19)

このエントリーは、War-Gamers Advent Calendar 2022 の24日目として投稿しました。

11/19(土)に、武蔵小杉にて開かれたゲーム会にお誘いいただきましたので参加してきました。参加者は、一味さん宇賀愛一郎さんと私の3人です。コロナ禍ですっかり対面ゲームとは縁遠い生活を余儀なくされてきましたが、4回目のワクチン接種するなどして家族の了承も得られたこともあり、久しぶりのゲーム会となりました。

Wars of Religion, France 1562-1598 / Fellowship of Simulations
ユグノー戦争テーマの3人ウォーゲーム。


Wars of Religionプレイ中撮影

「Wars of Religion」は、16世紀のフランス全域で、長期間にわたり断続的に続いたカトリックとカルヴァン派(改革派)プロテスタント(通称"ユグノー")による内戦「ユグノー戦争」を題材にしたウォーゲームです。

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12DaysOfChristmas

このエントリーは、ボドゲ紹介 Advent Calendar 2016 の24日目です。

✝ 概要

「12 Days of Christmas (クリスマスの12日)」は、2015年にEagle-Gryphon Gamesから発売されたKickstarter発のカードゲームです。3人から最大で8人まで遊ぶことができます。

クリスマスパーティなど、たくさんの人が集まる場で、誰もが楽しめるゲームのひとつとして、本稿ではこの「クリスマスの12日」をご紹介いたしましょう。

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ルール石炭輸送

このエントリーは、ボドゲ紹介 Advent Calendar 2015 の1日目です。

◆ルール川の水門はドイツ産業革命の扉を開けた

18世紀後半のドイツでは、ルール川を水運として活用し、ルートオルトに向けて石炭が輸送されるようになった。だが当時、ルール川の途上には複数のダムが設けられていたため、それが運行上の障害となっていた。それらの地点では、石炭を艀(はしけ)から艀へと移し替えなければならず、その工程で発生する振動や衝撃によって石炭が粉砕してしまい、品質の低下を招いていたのである。

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Credit: Hogenberg / CC BY-SA 3.0

この対策として編み出されたのが「水門」であった。ヴィッテンからルートオルトの間には、14箇所以上の水門建設が計画され、そして実際に建設されこととなった。これにより、石炭輸送のインフラとしてルール川の利便性が高まることとなり、19世紀末まで重要な存在であり続けたのである。やがて時代が進むにつれ、その役割は徐々に鉄道に取って代わられてゆく。

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Legends of Andor

Legends of Andor (アンドールの伝説) は、2013年のドイツ年間エキスパートゲーム大賞を受賞したゲームです。この記事を書いている時点では未発売ですが、近日中に日本語版が発売される予定もあるようです。

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先日、「アンドールの伝説」の英語版を購入し、ショップ添付の和訳ルールを元に、6月のSGC例会にてプレイしました。

それは、エキスパートゲーム大賞ノミネートにふさわしい、充実した内容のゲームで、一緒にプレイしたメンバー共々、楽しい時間を過ごすことができました(※6月の時点では受賞発表前)。

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「アンドールの伝説」には、シナリオに相当する「伝説」を単位としてゲームを行います。本作にはこれが 5 つ収められており、そのいずれもが緊迫感に満ちたと演出が施されています。

それぞれの「伝説」は、物語として魅力的であることはもちろん、ゲーム的にも盛り上がるよう入念に作られているのです。このような考え抜かれた「伝説」のデザインは、エキスパートゲーム大賞を受賞した大きな理由にもなっているのではないでしょうか。

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ひとつの「伝説」は、数枚のカードによる「伝説デッキ」で構成されています。プレイヤーたちは、まずどの伝説をプレイするかを選び、それで使用する伝説カードを順番に重ねて伝説デッキを作ります。伝説準備カードに記載された通りにセットアップを行い、そして伝説デッキの一番上にあるカードを読み上げることでゲームが開始されます。

「アンドールの伝説」の魅力である「伝説」についてご紹介したいところですが、その内容を書いてしまうとネタバレになってしまいます。そこで本記事では、本作の特徴的なゲームシステムである「時間トラック」と「伝説トラック」についてご紹介しましょう。

※本記事の訳語は、僕が購入したゲームストア・バネストによって添付されていた日本語ルールブックに準じています。後日発売される日本語版とは異なるかもしれません。また、伝説の内容によっては、ここに書かれたこと以外の例外的な処理が発生することもあります。

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◆時間トラックと時間マーカー
「アンドールの伝説」は協力ゲームです。プレイヤーはそれぞれ異なる特殊能力を持つ「ヒーロー」ひとりを担当し、全員が協力して伝説カードで提示された問題を解決し、クリアを目指します。

本作では、ヒーローごとの時間管理システムに特徴があります。まず、ヒーローごとに「時間マーカー」が用意されています。

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あるヒーローが手番でアクションをすると、そのヒーローの時間マーカーを時間トラック上で進めます。ヒーローごとに時間マーカーを管理しますので、それぞれの消費時間は、同じアクションをしない限りは異なってきます。

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また時間トラックは、7マスの「昼」と、3マスの「夜」に分かれています。ヒーローが夜にアクションをすると、夜のマスをひとつ進むごとに精神力を余分に消費します。「精神力」とは、ヒーローの耐久力と、戦闘能力を決定する重要な要因のひとつです。

たいていのヒーローは、精神力が減ると戦闘能力も減退し、これがゼロになるとヒーローは倒れて「体力 (Strength:基礎的な攻撃能力) 」をひとつ失います。

プレイヤーは手番で、「通常アクション」を 1 回だけ行います。手番で通常アクションを行うことは、ヒーローの (ルール的な意味で) 義務です。通常アクションには「移動」「戦闘」「待機」「盟友の移動」の 4 種があります。

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このうち「移動アクション」について簡単に説明しましょう。ヒーローが移動アクションを行う場合、ボード上の隣接するスペースへ移動するごとに、そのヒーローの時間マーカーを 1 マス進めます。

ヒーローは 1 回の移動アクションで複数のスペースを移動することもできます。例えば、3 スペース移動したら、そのヒーローの時間マーカーを時間トラック上で 3 マス進めます。つまり、1 回の手番で複数の時間が消費されたことになります。

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「戦闘アクション」も、ひとつの手番で複数の時間を消費する可能性のあるアクションです。ヒーローが戦闘を行う場合は、まずそのヒーローの時間マーカーを 1 マス進めます。そして「ヒーローの攻撃」→「モンスターの攻撃」→「戦闘力の比較」と進んで戦闘結果を適用します (戦闘の敗者は精神力を失います)。

戦闘の結果、ヒーローとモンスターがいずれも精神力が残しているなら、戦闘当事者のヒーローは、この戦闘を継続するか、あるいはやめるかを選択します。

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もし、戦闘を継続することにしたら、戦闘当事者のヒーローは、その時間マーカーをさらに 1 マス進めます。そして上述の一連の手続きを行います。こうして、時間を費やすことで複数の戦闘を繰り返すことができます。

もちろん戦闘中に夜になると、そのことによって精神力を失いますし、1 日の時間を越えて戦闘を継続することはできません。

また、複数のヒーローたちが協力して 1 体のモンスターと戦う「チーム戦闘」の場合でも、それに参加するすべてのヒーローは、戦闘開始時と、戦闘を継続するたびに、それぞれの時間マーカーを 1 マスずつ進めます。ですので、同じモンスターを一緒に攻撃しているのに、あるヒーローは昼で、別のヒーローは夜になっているということもあり得ます。

その他の通常アクションに「待機アクション」という、いわば何もしないことを選択するアクションもあります。しかしそれでも、そのヒーローは時間マーカーはひとつ進めなければなりません。

手番で選択義務のある通常のアクションの他に、時間を消費しない「自由アクション」も幾つかあります (詳細は略)。自由アクションは、通常アクションの前か後に好きなだけ行えます。しかし、自由アクションだけを行って手番を終えることはできません。ですから、手番が回ってくるたびに、原則としてヒーローの時間マーカーは少なくともひとつは進みます。

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◆1 日のサイクル
時間トラックは「日の出」枠から始まります。

全てのヒーローは、1 日の始まりを日の出枠から開始します。そして 1 日の終わりも、この日の出枠の中で処理が行われます。

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ヒーローは自分の手番を開始する前に、もう時間を使いたくないか、あるいは使えないとき、自分の時間マーカーをこの日の出枠に戻すことで「1 日を終える」ことができます。その日の最初に 1 日を終えて日の出枠に戻ったヒーローは、翌日には最初の手番となります。

あるヒーローが 1 日を終えて日の出枠に戻ったとしても、他のヒーローは、望むのであればまだ手番を使ってアクションを行うことができます。1 日を終えて日の出枠に戻ったヒーローは、その日は手番が飛ばされるので、何も行動をすることができません。

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すべてのヒーローが日の出枠に戻ってきたら、そこで 1 日の終わりに行う一連の処理を実施します。この処理では、モンスターが自動的に移動し、井戸が復活し、そして伝説マーカーが伝説トラック上でひとつ進みます。

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◆伝説トラックとは
伝説トラックは、ゲーム進行に関わる 2 つの極めて重要な意味を持っています。

伝説トラックは 14 マスあって、それぞれのマスには下から順番に「A」〜「N」の文字が描かれています。ある伝説が開始されると、その伝説ごとに、指定された伝説トラック上のマスに「星」トークンを配置します。

例えば、入門編の「伝説1」では、冒頭に「A」「B」「C」「D」「F」「H」「N」へ星トークンを配置するように指示されています。

ゲーム開始時(=伝説の開始時)には、「A」のマスに「伝説マーカー」を配置します。ゲームが進むと、この伝説マーカーがアルファベット順に(A→B→C→…)進みます。

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伝説マーカーが進んだ先のマスに「星」トークンが配置されていれば、該当する伝説カードを引きます。伝説カードにも、伝説マーカーがどのマスに進んだら引くのかが示されています。

伝説カードを引いて、その説明を誰かが読み上げることで、それが実際に起こります。例えば、モンスターが増えたり、新しいアイテムが出現したり、盟友や農夫が登場したり、その他の様々なことが起こり、時にゲーム中の環境が劇的に変化します。これによって勝利条件が変化することさえあります。

そして伝説トラックにはもうひとつ、ゲームの終了条件に関わる重要な役割が与えられています。

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伝説トラック上を伝説マーカーが進み、最後のマス「N」に到達すると(特に指定されていない限り) 伝説は終わります。

伝説が終わったとき、伝説カードで指示された勝利条件が全て達成されているのであればヒーローたちの勝利です。しかしそうでなければ失敗となります。

つまり、伝説をクリアするための時間は限られているということです。したがってプレイヤーたちは、可能な限り効率的に行動し、伝説の勝利条件を速やかに満たすよう努めなければなりません。

上述したように、伝説マーカーが自動的に進む処理は 1 日の終わりに行います。しかし、それだけではありません。実は戦闘と深い関係にあります。前置きが長くなりましたが、いよいよこの優れた仕組みについて解説しましょう。

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◆戦闘と伝説トラックとの関係
モンスターと戦闘を行ってヒーローが勝利すると、戦闘に参加したヒーロー(たち)は報酬を受け取ります。そして、敗北した(=倒れた)モンスターはスペース「80」に置くことになっています。

さて、そのスペース「80」にあるシンボルに注目してください。ここには写真のように、伝説マーカーと上矢印が描かれています。これは、ヒーローが勝利し、モンスターが敗北するたびに、伝説マーカーが伝説トラック上でひとつ進むことを意味しています。

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伝説マーカーが進んだ先のマスに星トークンがあれば伝説カードが引かれ、そこで状況が大きく変わることがあることは前述しました。戦闘勝利よって伝説マーカーが進むのですから、伝説カードによる環境の変化は、1 日の終わりだけではなく、ヒーローたちがボード上で活動している間にも起こりうるのです。

そして、伝説マーカーが進むということは、その伝説をクリアするために残された時間が減ってしまうということをも意味しています。戦闘で勝利するたびに、モンスターという障害物が消滅し、更に報酬までも受け取ることができますが、その代償として残り時間が少なくなってしまうのです。

つまりヒーローたちは、効率的な行動とともに、無駄な戦闘も行わないように考えなくてはなりません。そして必要な戦闘を行うのであれば、勝利の確率をできるだけ上げる方策をよく練らなければなりません。

戦闘はダイスを使いますので、中途半端な戦力差では不安定要因が増加するだけです。戦闘に負ければ、体力と精神力、それに何よりも大事な時間を失うことになります(戦闘は時間を消費する行動であることは前述の通りです)。

しかし状況によっては、強力なモンスター相手に、あえてギャンブルのような戦闘をしなければならないこともあるでしょうし、楽勝だと思っていたモンスター相手に、不運によって思わぬ敗北を喫することもあるでしょう(何しろダイス判定ですので)。

可能であれば、意に反した事態に陥ったときの打開策も事前に考えておくことです。もっとも、正面突破しか解決手段がないならば、運を天に任せて力任せに突進するのも、それはそれで楽しい展開ですけれどもw

◆ドイツ年間エキスパートゲーム大賞受賞の栄冠に輝く
このように、伝説カードと戦闘勝利で伝説マーカーを進める 2 つのアイデアがシナジーを生み、その他の要因も高く評価されたことによって、「アンドールの伝説」はゲーム史に名前が刻まれる作品となりました。

実際に本作をプレイしていただけば、入門編の「伝説 1」だけでも十分にその緊張感を味わうことができます。そしてそれをクリアしたら、もっと先に進みたくなるでしょう。またこのような仕組みのおかげで、本作のプレイ時間がそれほど長くならないことも大きな美点となっています。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/127398/legends-of-andor

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Full Metal Planete

4/20 (土) に、いたるさん、ふうかさん、かろくさんと僕の4人で、 Full Metal Planete / Ludodelire をプレイしましたのでレポートをお届けします。

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この日、本作をプレイすることになったのは、今年 2 月に初めてお会いしたいたるさんが、ゲーム倉庫の棚に置いてあった Full Metal Planete の箱を見るなり「やりましょう (0.2秒)」と提案されたことが発端です。

ルールをまだ訳していないことを告げると、翻訳もいたるさん自身が請け負うと即座に宣言されました。こうして、彼の並々ならぬ意欲に押される形でこの日のセッションが実現することとなった次第です。

国内で唯一と思われる Full Metal Planete のショートレビューが B級SFゲーム分科会サイトにあります。この記事を初めて読んでからというもの、僕はこのゲームに魅了され、あちこちのツテを頼りに世界中を探し求めて、ようやく入手したのは 2004 年の秋になってからでした。

[フルメタルプラネット / bqsfgage @ bgsfgame]
http://www.os.rim.or.jp/~bqsfgame/sub271.htm
※残念ながら一部のモダンブラウザではレイアウトが乱れるかもしれません。

本作は、公式にはフランスでのみ発売されたようです (1988年)。ですから、箱に入っているルールブックはフランス語のみです (タイトルが Planet ではなくて Planete なのはそういうことです)。幸いにして BGG には、有志によって英語に翻訳されたルールが置いてあります。しかし僕にはどうも敷居が高く思えて、ルールを和訳する作業をずっと後回しにしていました。

というよりも、このメタリックなコンポーネントを眺めているだけで十分に満足してしまい、実際にプレイしようとは考えなかった、と書いた方が正しいかもしれません。やたら広い (と、思い込んでいただけなのですが) ヘクスマップに小さなコマを並べ、ありふれたマルチゲームっぽいウォーゲームをやってしまうことで、Full Metal Planete に対する自分の高揚した感情が害されてしまうような気がしていたのです。

もちろんこれは、ルールをロクに読まず、単に見た目だけの印象で僕が妄想したに過ぎません。この考えが大きな誤りであることを、この日のセッションを経験して思い知らされました。これまでずっと本作のルールを翻訳しなかったこと、それにプレイしようとも思わなかったことのいずれも、心の底から後悔するほどに。Full Metal Planete は、ボードゲーム史にこのまま埋もれさせてしまうには余りにも惜しいと思える名作でした。

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概要:
ゲームの骨格はシンプルです。「鉱石」が豊富に存在するどこかの惑星を舞台にした争奪戦です。各プレイヤーは鉱石を収集し、それを母船まで輸送して積み込むことが当面の (そして得点効率が最も良い) 目的となります。

無防備であることは、この星では決して美徳とはなりません。武力は、この不毛な地において、あらゆる権利を主張するための強い根拠となります。かりそめの協調も時には必要ですが、紳士協定を破ることは勝利という目的を果たすための手段として認められています。

とはいえ、敵ユニットを破壊しても自分の得点には得点に結びつきませんし、自身の損害はそのまま得点の損失となります。しかも時間は限られています。ですからあまり戦ってばかりもいられません。そのプレイヤーの武力を低下させることで、鉱石輸送や防衛体制に深刻な影響を与えることに結びつけば、結果として彼の得点機会を奪うことくらいにはなるでしょう。

第 21 ターンか第 25 ターンのどちらかに、自分の母船へ鉱石と自ユニットをできるだけ積み込んで飛び立つ (ゲームから抜ける) ことができます。全員がそのようにしたらゲームは終了し、最後に得点計算を行って最大得点プレイヤーの勝利となります。

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アクションポイントと制限時間:
Full Metal Planete は、アクションポイント制のゲームです。特別な状況を除いて、基本的に 15 アクションポイント (AP) を持ち、何かひとつのアクションを実施するたびに AP を消費します。

「アクションポイント制」というとダウンタイムがよく問題になりますが、Full Metal Planete は、制限時間ルールを併用することでそれを解消しています。

各プレイヤーは手番ごとに 3 分間の時間が与えられ、その間に自分の望むアクションをできる限り行わなければなりません。この 3 分とは、キッチンタイマーなどで計測する現実の 3 分間です。手番中に 3 分が経過すると、そこで手番は終了します。

ただし、手番で未使用だったアクションポイントは、5 AP か 10 AP だけを次の自分の手番へ持ち越すことができます。余談ですが、これはアクションポイント制ゲームとしては少し珍しいルールかもしれません。この持ち越しルールは、単純に救済策であると同時に、戦術的に重要なオプションともなっています。

ウォーゲームにおいてはリアルタイムの制限時間ルールもまた珍しいルールです。しかもただ珍しいだけではなく、それをより効果的に表現するために周辺ルールが入念に整備されています。これには感心させられました。背景設定を生かしつつ無駄な要素は切り捨て、デザイナーがプレイヤーにこのゲームで何を楽しませたいのか、その意図がくっきりと伝わってくる良質でモダンなデザインとなっています。

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少ない乱数要素:
Full Metal Planete はサイコロを使いません。まさかとは思いますが、がっかりしましたか?

本作に導入されている乱数要素は、1ラウンドごとに (プレイヤーが 4 人なら 4 手番ごとに) ただ1枚のカードを公開して、潮の満ち引きの状態を決定することだけです。それは全体の環境が変化するだけですから、プレイヤーが行動した結果に関与するような性質の要素ではありません。端的に書けば、プレイヤーの手番が開始された後は乱数要素が全くないゲームなのです。

※潮の状態には「通常」「干潮」「満潮」があり、干潮では浅瀬が陸上となり、満潮では沼地が水上となります。通常では、浅瀬は水上で、沼地は陸上です。これを決定する潮カードは 15 枚あって、それぞれの種類のカードが 5 枚ずつあります。

手番でのわずか 3 分間で、プレイヤーは入り組んだパズルを解いていくように多くの判断を行い、そして実施していきます。これはユーロスタイルのゲームをプレイしている感覚に近いものがあります。ゲームの骨格はウォーゲームでも、そこにユーロゲーム的な要素を盛り込むことによってシナジーが生まれ、独特の面白さを表現した作品に仕上がっています。

戦闘ルール:
Full Metal Planete はウォーゲームで、手番が始まったら乱数要素はないと前述しました。では戦闘をどうやって解決するのか、それを簡単に説明してみましょう。

まず、プレイヤーが戦力として利用するユニットは 8 種類あります。これらのユニットは、種類ごとに異なる特性を持っています。このうち、敵ユニットを攻撃する機能を持つのは 4 種類のみです。攻撃能力を持つユニットは「射程」を持ち、離れた敵ユニットを攻撃することができます。

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代表的な攻撃ユニットである「戦車」を例に挙げましょう。「戦車」ユニットは「射程」が「2」です。自分のいるヘクスから 2 ヘクス先の敵ユニットを攻撃することができます。

しかしこのゲームは、攻撃能力を持つユニットがひとつだけでは敵ユニットを攻撃することは出来ません。必ず、攻撃能力を持つ自分の 2 ユニットを組み合わせなければ、攻撃を行うことが出来ません。

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2 個の自ユニットがあり、そのどちらのユニットにも射程内に含まれるヘクスを「射程圏 (Zone of Control = ZOC)」と呼びます。

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そしてこの射程圏にある敵ユニットを目標として攻撃することで、自動的に敵ユニットは破壊されます。

なお、攻撃を実施するには 2 アクションポイントの消費が必要です。

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原則として、敵の射程圏へ自ユニットを移動させることはできません。

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同様に、原則として、自ユニットによって形成された射程圏に、敵ユニットは移動することはできません。

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このルールには例外があります。敵ユニットを攻撃して破壊することによって、敵の射程圏が消滅するケースです。

これは言葉で説明するだけではわかりにくいので、右図のような状況を例に説明してみましょう。灰色のユニットは自ユニット、緑色は敵ユニット、ピンクのヘクスは敵の射程圏内です。

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攻撃を成立させるためには 2 個の攻撃ユニットが必要です。まずその 1 個目として自ユニット A を移動させ、目標の敵ユニット X を A の射程 (この例では 2 ヘクス) 内に入れます。

これによって自ユニット A は、敵ユニット X の射程内にも入りましたが、X と Y が形成する敵射程圏には入っていないので問題ありません。

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続いて、攻撃に参加させる 2 個目の自ユニット B を、1 個目の自ユニット A が目標にした敵ユニット X を攻撃目標として、その射程内に入れるよう移動します。

自ユニット B を右図のように移動すると、自ユニット A とのコンビネーションで射程圏が形成され、攻撃目標である X を攻撃することが出来ます。

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このとき、自ユニット B は、敵ユニット X と Y が形成する射程圏に侵入していますが、攻撃目標とした敵ユニット X を攻撃により破壊することで敵射程圏は消滅しますので、ルールによってこの攻撃は成立します。

まとめると、攻撃を行う 2 体目の自ユニットは、その攻撃によって敵ユニットを破壊した後に全ての敵射程圏から外れるのであれば、敵射程圏に侵入してその攻撃を行うことができます。これが敵射程圏内に自ユニットを侵入可能とする唯一のケースです。

以上のように、条件が全て満たされている状況で、攻撃に必要なアクションポイント 2 を消費すれば、攻撃は自動的に成功します。戦闘解決に乱数要素はありません。

無力化と捕獲:
攻撃の他に、敵ユニットに対する干渉として「無力化」ルールがあります。

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無力化は、自分の射程圏に敵ユニットを入れ、アクションポイント 1 を消費することで実施されます。無力化された敵ユニットは移動や射程圏の形成などの機能を失います。一方で、その無力化を実施している自ユニット 2 個も移動することはできなくなります。

無力化したとはいえ、射程圏内にある敵ユニットをわざわざ破壊しないで残しておくのはなぜでしょうか。その理由は幾つかあります。そのうちのひとつが、次に述べる「捕獲」を実施するために行うというケースです。

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「捕獲」とは、敵ユニットを自分のユニットとして支配してしまうことです。これは、攻撃能力を持つ自ユニット 2 個を、敵ユニットに隣接させ、アクションポイント 1 を消費することで実施されます。捕獲したユニットは、その手番中に自ユニットとしてすぐ利用することができます。

ユニットの種類:
前述の通り、Full Metal Planete には、以下のような 8 種類のユニットと鉱石があります。

Mother Ship
moon Gamer 母船 (母艦) です。ゲームは、母船をボード上に配置することで開始されます。母船はボード上を移動せず、自ユニットを無制限に積載することが可能です。3 つの「足」を持ち、その先には射程 2 の「砲塔」を装備しています。砲塔は固定装備ながら、無力化しないという特性を持つ強力な武装です。自分の母船を他プレイヤーに捕獲されるとゲームから脱落します。母船を捕獲するには 3 つの砲塔を全て破壊しなければなりません。

Crab
moon Gamer クラブ。通称「カニ」。クラブは、Full Metal Planete において重要な役割を果たしています。戦車・重戦車・ポンツーン、それに鉱石を 2 つも積載する能力を持っているからです。惑星上での鉱石輸送は、特に序盤から中盤にかけて、クラブが縦横無尽にボード上を駆け巡るでしょう。

Weather Hen
moon Gamer 通称「風見鶏」。あるいは「コンバーター」。風見鶏は2つの役割を持ちます。鉱石 (だけ) を 1 個 (だけ) 搭載して輸送可能なことと、搭載しているその鉱石を使ってクラブ・戦車・ポンツーンへ変換可能なことです。中盤以降は、保有戦車数によって武装しないと数で押されてしまいますので、また、風見鶏は次ターンの潮の満ち引きを知るためにも必要です。

Tank
moon Gamer 「戦車」です。攻撃の中核となる陸上ユニットです。射程 2 を持ち、山地では射程が 3 になります。各プレイヤーはゲーム開始時に戦車を 4 両ずつ保有しており、また風見鶏によって戦車を増産することも出来ます。攻撃と防御いずれにおいても、ゲームの展開に極めて大きな影響をもたらすユニットです。

Heavy Tank
moon Gamer 「重戦車」です。重戦車も戦車と同様に攻撃能力を持つ陸上ユニットです。射程は 3 あります。ただし山地へは移動することができません (重戦車を輸送する時も山地は通過できない)。各プレイヤーは重戦車をゲーム開始時に 1 両ずつ持っています。戦車や巡視船とを組み合わせると強力な布陣となります。

Speed Boat
moon Gamer 通称「船」、あるいは「ボート」。巡視船です。戦車が陸ならボートは射程2を持つ水上の攻撃ユニットです。Full Metal Planete のボードは海の面積がとても広く、また潮が満ちることで更に多くの部分が水上となります。各プレイヤーが保有するボートはわずか 2 隻ながら、行動範囲が広いためにその影響力は大きなものとなるでしょう。

Barge
moon Gamer 「艀 (はしけ)」です。我々の知る艀 (はしけ) は水上をのっそりとけん引されつつ移動する巨大な平底船ですが、この艀には航行能力があります。艀は 2 ヘクス分のサイズを持つ巨大な水上倉庫であり、巡視船と母船を除いた全てのユニットを輸送することが出来ます。積載量も多く、戦車や鉱石なら一度に 4 つも搭載できます。艀は水上ユニットなので、移動は水上に限られます。

Pontoon
moon Gamer ポンツーンです。通称「橋」あるいは「浮橋」。ポンツーンは 1 ヘクスサイズの軍橋として扱われます。ポンツーンが存在するヘクスは、そこに隣接するヘクスが陸上であれば、潮の満ち引きにかかわらず陸上として扱われます。架設したポンツーンは中立であり、それを誰でも利用することができます。また設置されたポンツーンは水上ユニットの移動を妨げます。

Ore
moon Gamer 鉱石です。通称「石」。鉱石を母船へ輸送し、それを持ち帰れば 1 個につき 2 点が得られます。自ユニットを持ち帰っても 1 ユニット 1 点なので、主要な得点源となるでしょう。また風見鶏によって、クラブ・戦車・ポンツーンを生産するための原材料ともなります。

moon Gamer

この日のセッション:
セッションに参加した全員が初プレイでしたので、最初の数ターンは無難に鉱石を黙々と拾い集める静かな展開が続く… のではどうも緊迫感に欠けるような気がしたので、序盤から無駄に波風を立ててみましたw

というのも、まだ手探り状態の第 6 ターンか 第 7 ターン目あたりに、ふうかさんが、艀 (はしけ) を僕の巡視船の航続範囲へ不用心に進入してきたような気がしたからです。それを見た僕はすかさず自分の手番で、その艀を巡視船で攻撃可能かどうかを調べてみました。当然ながら場にはかなりの緊張が走ります。

艀は大量輸送の要です。各プレイヤーは 1 隻ずつしか持たず、しかも再生産が出来ません。これが序盤で破壊されたり捕獲されたりしたら相当な痛手となるのだから緊張するのも当然です。結果的に、潮の状態がたまたま干潮だったこともあって、わずかに巡視船 2 隻の射程圏に艀は届かなかったので何事も起きませんでした。さてこれが満潮ならどうだったでしょうか。

ということで、この"事件"がちょっとばかり刺激になったせいか、その後は少しずつ緊迫した状態が高まっていくことになりました。そしてボード上の鉱石が少なくなってきたあたりで、ついにふうかさんとの本格的な交戦が始まってしまいました。ボード上に鉱石がないのであれば誰かから奪い取るしかないのですから、これはまあ予想された流れでもあります。

戦いが始まってすぐにふうかさんの戦車 1 両を捕獲したまでは良かったのですけれど、その後は間に海を挟んで、それぞれの対岸の山からの砲撃合戦となったために膠着した消耗戦となってしまい、状況は一進一退となります。互いに損害を積み重ねた後、どちらともなく休戦協定が結ばれ、この戦いは gdgd で終結することになりました。結果的にどちらがどれだけ得したのかはよくわかりませんけれども、恐らくは痛み分けだったのではないかと思います。

moon Gamer

一方、いたるさんとかろくさんも、陸と海のかなり広い範囲で交戦状態となっていました。いたるさんが大規模に攻勢を仕掛けてかなり押してしたような気がしたのですが、あるターンにおいて、最後の仕上げとばかりに大きな戦闘を行おうとした直前に無慈悲なタイムアップ!

今回のセッションで 3 分間の時間管理は、いたるさんが用意してくれたストップウォッチのような iPhone アプリを使いました。ゲーム開始時に、このアプリは最後の 10 秒 (5 秒だったかも) で「カウントダウン」する、という説明を僕らはいたるさん受けていました。

で、確かに残り時間が少なくなってカウントダウンが始まると、画面上では少し違ったエフェクトが表示されるようにはなっていましたけれども、予想に反してそれは無音だったのです www

この思わぬいたるさんのミスをきっかけににしてかろくさんが微妙に復活、そのまま戦いはずるずると泥沼化していったような… 面白いゲームだなあ www

その後いろいろありましたが、第 21 ターンでかろくさんと僕は早々に惑星上から母船を撤収、得点が少なかったふうかさんといたるさんは惑星に残ることになりました。

この時点でいたるさんのユニットは、かろくさんと戦いに明け暮れていたためボードのあちこちに散在しており、母船の周囲は手薄になっていました。もちろんこれを見逃すはずがないふうかさんは、大逆転を狙うチャンスとばかりに物量を投入し、いたるさんの母船めがけて進撃をかけ続けました。この激しい戦闘は最終ターンまで繰り広げられることとなります。

※敵の母船を捕獲すると、その船内に備蓄された鉱石や積載物を全て奪える上に、アクションポイントも増加します。一方、母船を奪われた方はゲームから脱落します。

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最後の最後であわや母船が奪われる寸前まで肉薄されたわずかに凌いで、いたるさんの母船は最終第 25 ターンで飛び立つことに成功しました (大きな損害を被ってはいましたけど)。長い戦いはこうして終止符が打たれることとなりました。

ゲーム終了後の得点計算で勝利したのは僕でした。鉱石の収集が多く、ふうかさんとの戦いで何台かの戦車を失う被害が出たものの、それを早めに休戦したおかげで早期撤収を効率よく行えたのが勝因だったかと思います。あのとき、ふうかさんが徹底抗戦の方針を貫いて戦いが長引いていたら、また違った結果になったかもしれませんね。

ルールの和訳:
このエントリーの冒頭に書いたように、Full Metal Planete のルールはいたるさんが和訳されました。それは以下で公開されています。

[Full Metal Planete日本語ルール / 卓游選科]
http://takuyu.blogspot.jp/2013/04/full-metal-planete.html

これから時間をかけて修正されていくとは思いますが、若干の誤字脱字等々がまだ残っているようです (例えばセットアップで各プレイヤーが受け取るボートの数は 1 ではなくて 2 隻です) 。

いたるさんと言えば、日本を代表するボドゲ和訳クリエイター (というようなことがどこかに書いてあったw) のお一人であることはみなさんよくご存じの通り。彼は、本作に複数存在する仏英訳や、有志が作成したオンライン対戦やソフトウェアのマニュアルなどを参考にこの和訳を制作したそうです。

ただ、複数の仏英訳はそれぞれの内容に微妙なゆらぎがあったようで、いたるさんはそのあたりを苦労して調整しつつ和訳を制作したのだそうです。ゲームに対するこの並外れた情熱は、是非とも見習いたいものです。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/20/full-metal-planete

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La Loire

3/24 (日) に、地元は千歳烏山で行われたSGC例会に参加し、La Loire (ロワール川) / Mind the Move を遊んできましたので、レビューとレポートをまとめました。

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◆概要
La Loire (ロワール川) は、Emanuele Ornella が 2012年に制作した経済ゲームです。彼は、Oltre Mare (オルトレマーレ / 2004)、Il Principe (君主論 / 2005)、Hermagor (ヘルマゴール / 2006)、Charon Inc (カロン株式会社 / 2010) など、国内でも和訳付きで発売された幾つものゲームを手がけています。

制作ペースは年に1〜2作のようで、そのほとんどはカードとお金を使った内容になっています。La Loire (ロワール川) は、まさしくそういう作品です。

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◆ゲームボード
ゲームボードには、ひとつの対角上に「ナント」と「オーリアン」という2つの都市があります。

2つの都市の間には、ロワール川を挟んで9つずつの村があり、各村はひとつのマスを表します。つまり、都市から都市への距離は10マスであり、ゲームボードには総計20マスがあることになります。

18の村には、それぞれひとつずつ商品のシンボルが描かれています。商品シンボルは木材・チーズ・穀物・ワインがあり、ゲームで扱われるその他の商品としてビールもあります。

◆商人とメッセンジャー
プレイヤーは2つのトークンが与えられます。すなわち「商人」と「メッセンジャー」の2つです。ゲーム開始時に商人トークン(ポーン)はナント、メッセンジャートークン(キューブ)はオーリアンに配置されます。

◆勝利条件
プレイヤーの目的はより多くの勝利点をあげることです。商人は村で商品を購入し、それを都市で売却して現金収入を得ます。商人は都市で建物を建設してメッセンジャーが勝利点を獲得する機会の増加と得点効率を上昇させることができます。メッセンジャーはメッセージを配達することで勝利点や少しばかりの収益を得ます。どちらも新たなキャラクターを雇用して、制約に縛られた移動やアクションの利便性や能率を劇的に改善することができます。

◆移動とアクション
プレイヤーは手番になったら、2つのトークン(商人とメッセンジャー)のうちどちらかを移動させます。その後で動かしたトークンのアクションを行います。そしてもう一方のトークンを移動させて同様にアクションを行います。アクションは任意ですが、移動は必須です。また移動を行った後でなければアクションは行えません。マスの種類ごとに可能なアクションは異なります。また、商人とメッセンジャーでも可能なアクションが異なります。

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◆移動と馬
商人とメッセンジャーは、どちらも馬で移動します。馬は白い円盤トークンで、その上に商人トークンやメッセンジャートークンを乗せる(スタック)と、それらのトークンが馬に乗っていることを表します。

馬トークンは2枚まで重ねることが可能です(注:右写真で馬トークンを3枚重ねているのは特殊効果によるものです)。そして重ねられた馬トークンの枚数+1マスが、トークンが1手番で移動するマス数となります(馬に乗っていない商人とメッセンジャートークンは1マスのみ移動)。

馬に乗って複数のマスを移動する場合、途中のマスで止まることはできません。短い距離を移動したいのであれば、移動開始前に馬の数を調整しておく必要があります。誰も乗っていない馬を自分のスタックに1枚だけ加えたり(ただし馬の枚数はスタックごとに最大2枚)、あるいは馬を移動開始マスに何枚でも置いて移動したりすることが可能です。

商人とメッセンジャートークンは、ある都市(ナントとオーリアン)から出発した後は、次に都市に止まるまでは方向転換が行えません。マスは周回構造になっていますので、例えばナントから出発したトークンが、オーリアンで止まらずに通過したのであれば、そのまま同方向へ進んで、少なくともナントに停止するまでは方向転換を行えません。ちょうど都市に止まったトークンは、次の移動開始時にどちらの方向へも進めます。しかし次に都市にちょうど止まって、そこから移動を開始するまでは方向転換が行えません。

◆商人のアクション
商人とメッセンジャーではアクションの選択肢が異なります。

商人の主な目的は現金収入です。村で商品を購入し、都市で売却して差額をもうけにするのが基本です。しかし、ひとつの村ではひとつの商品しか購入できません。また、木材を除いて1種類の商品は1つしか所有することができません。都市では幾つの商品でも売却できます。商品の価格は市場に示された村の種類ごとに決まります。ある種類の村で商品が購入されますと、その種類の村の価格相場が上昇します。

商人は都市に止まった手番で、商品を売却する代わりに建物を建設したり、ロワール川の勝利点を購入したりできます。いずれにせよ、どれかひとつのアクションしか行えません。

商人が都市から移動するためには、5ドニエ以上保有していなければなりません。そうでなければ、手番で1ドニエを受け取って商人の手番を終了しなければなりません(商人トークンは他に何もできない)。また10ドニエを越える所持金があれば、余剰なお金を捨てて10ドニエにしなければなりません。なお、メッセンジャーにはこれらの制限はありません。

◆メッセンジャーのアクション
メッセンジャーは、都市や自分の建物からメッセージ(手紙?)を受け取って、それを指定された村へ配達することで、主に勝利点を獲得します。メッセージには「レベル」があり、レベル1メッセージの目的地はひとつの村だけです。レベル2メッセージは2つの、レベル2メッセージは3つの村が配達先となり、また特定のキャラクター(後述)を雇用していなければなりません。

レベル1メッセージは獲得できる勝利点が少ない代わりに、わずかに現金収入が得られます(レベル2以上のメッセージは勝利点のみ)。

更に特別なメッセージとして修道院メッセージ(レベル4)があります。これは自分の修道院からのみ購入可能な価値の高いメッセージです。配達先は村ではなく、いずれかの都市(ナントかオーリアン)のみになっています。

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◆特殊効果
「サーカス」がある村ではキャラクターを雇用することができます。これは商人でもメッセンジャーでも可能なアクションです。キャラクターは特殊効果を持ち、その効果はゲーム終了時まで維持されます。

また都市では「宮殿」と総称されている建物が4種類あって、これを商人が購入することで、メッセージ関連で大きな効能を持つ特殊効果が得られます。また「宮殿」は、商人が勝利勝利点を得ることのできる数少ない要素のひとつでもあります。

◆ルールの問題点
残念ながらこのゲームには、幾つかの問題点があることを書かなければなりません。

まずルールブックにはエラッタがあります。面倒なことに、英語とドイツ語のルールブックには、それぞれ別の誤りがあります。
ソース:http://www.boardgamegeek.com/thread/924618/erratas-corrections

  1. 「サーカス」の村で行う商人アクションでは、商品を1ドニエ安く購入するか、キャラクターを雇用するか、そのどちらかだけを行えます。これら2つのアクションをひとつの手番で両方とも行うことはできません(英文ルールのエラッタ)。
  2. 都市(ナントかオーリアン)で行う3つの商人アクション(商品売却・建物建設・ロワール川の勝利点購入)は、ひとつの手番で、それぞれのアクションを任意の順で1回ずつ行えます(ドイツ語ルールのエラッタ)。

また、ゲームボードにエラッタがあるのでは? という情報も見つけました。しかしこれは公式なエラッタとして扱われていませんし、ソース元では伝聞情報としてボードには誤りはないという話になっています。したがって今のところは、現状のままでも構わないと思います(ま、確かに麦畑のような背景にチーズのシンボルってのはヘンテコな気がしますけれども)。
ソース:http://boardgamegeek.com/thread/898961/mistake-on-game-board

もうひとつ。キャラクターカードの「女官(Lady in Waiting)」の効果についてです。「女官」の特殊効果で、2人目のキャラクターを雇用するときに支払う追加コストは、カード上では「+1ドニエ(1の数字が書かれたコイン)」になっています。しかし英文ルールの特殊効果一覧表では「+2ドニエ」となっています。一方で、ドイツ語ルールでは「+1ドニエ」です。この件について、僕はBGGで情報を見つけられませんでした。とりあえず、カード表記を優先して「+1ドニエ」でいいかと思います。なお、ゲームストア・バネスト訳では、そのようなエラッタ対応になっていました。
ソース:http://banesto.shop6.makeshop.jp/board/board.html?code=banesto_board1 「エラッタ情報」番号53の書き込み

※注意:これらのソース(典拠)へのリンクはすべて上記に記載しています。まずはそれらをご自分で確認し、理解するようにしてください。このブログの記事を鵜呑みにしてはいけません。

◆アートワークの問題点
各プレイヤーの2つのトークンが、どこにいてどちらの方向へ向かっているのか、フリーの馬トークンがどこに幾つあるのか、そういった基本的な情報が一目でとてもわかりにくく、ゲームボードの機能性が低いように思えました。馬トークンをスタックして移動するルールは、アイデアとしては良くても、現在の方法ではプレイアビリティが決して良くはありません。アイデアの実装として、他にもっと良い方法はなかったのでしょうか ?

「ロワール川」は、異なる機能を持つ2つのトークン(商人とメッセンジャー)を使ったピック&デリバリーです。その根幹となるトークン移動をこのような煩わしいギミックにしてしまったのはどうしたことでしょうか。見た目を美しくしたかったのは理解できるにしても、それで遊びづらくなってしまったのであれば本末転倒です。

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◆戦略 (初回プレイ後に僕が考えたこと)
キャラクターの特殊効果を獲得することは、ロワール川で勝利するためには必須要素です。また複数のキャラクターを組み合わせて相乗効果を生み出すこともまた重要です。これまで説明してきたように、「ロワール川」には移動やアクションに多くの制約が課せられており、それを少しずつ解除する機能として設定されている特殊効果が多くあるためです。

ですから、キャラクターを雇用する「サーカス」の位置には気を遣いましょう。ルールによってサーカスは何度も移動します。自分の思い通りに移動先をコントロールすることは困難でも、現在の村から移動してしまうだろうということを予測することは可能です。またキャラクターの中には、サーカスに止まりやすくしたり、移動を基本ルールより柔軟に対応可能にしたりする特殊効果を持つものがありますので、その雇用も考えましょう。

また「ロワール川」は、商人で勝利点の機会と効率を増加させ、メッセンジャーでそれを回収するような構造になっているように思えました。商人は、勝利点を直接獲得する手段が少なく、できたとしても効率が悪くなっています(都市に宮殿を作っても4ドニエで2勝利点のみ、ロワール川の勝利点購入も6ドニエか10ドニエ必要)。農場・城・修道院建設で直接勝利点を獲得できないのも、そういう方針でデザインされているためと思われます。

メッセンジャーが配達するメッセージは、レベル1よりもレベル2や3の方が実は早く行えますので、勝利点だけに着目すると、設定数値以上に得点効率が高いです。各プレイヤーの配達可能なメッセージ数は、ゲーム終了条件と絡んで上限があります(4人プレイ時は誰かが8通配達すると終了フラグ)から、低い点数のメッセージを多く運ぶのは、ゲームを早く終わらせたいという意図がない限り、さほど良い作戦とはいえないのではないでしょうか。現金収入を伴うメリットがあるとはいえ、出来れば早めにレベル1メッセージの配達を切り上げて、必要なキャラクターを雇用(徒弟と助っ人)し、いち早くレベル2以上のメッセージ配達を目指す方が効率的だと思いました。

◆セッション
このセッションで勝利したすいせいさんは、実に興味深い作戦を採用していました。ほとんどのキャラクターは雇用すると1勝利点が得られます。しかしキャラクターの購入コストは1〜10ドニエまで様々です。そこですいせいさんは、コスト1ドニエの安価なキャラクターを、サーカスに止まるなど機会があるごとに次々と雇用したのです。特殊効果の活用を目的とした雇用ではありますが、1手番1ドニエで1点が得られるという、コストパフォーマンスが高いという貴重な副産物が結果として付いてくることになりました。

最後に決め手になったのは、配達済みのメッセージの勝利点を上昇させる青キャラクター(購入コスト10ドニエ)でした。すいせいさんはこれを最終手番で雇用し、それまでトップを独走していたプレイヤーをわずかに差しきって逆転勝利を収めたのでした。キャラクターの雇用は1手番で1人しか行えないので効率よく行うのは大変に難しいのですが、すいせいさんは他のキャラクターの特殊効果を活用するなどして、その高いハードルを乗り越えた末につかみ取った勝利だったわけで、本当にお見事でした。


「ロワール川」は、勝利するための道筋が幾つもあり、それを考えている時間はとても楽しかったです。適度な歯ごたえがあって、アイデアだけならユーロスタイルのゲーマーズゲームとしては及第点の作品でしょう。それだけに、エラッタやプレイアビリティの悪さをとても残念に思いました(どうも最近こんなことばかり書いてる気がしないでもありません)。

事前の情報収集が不完全だったため、今回はすべてのエラッタが適用できなかったこともあり、もし次の機会があれば、ぜひとも正確なルールでプレイしたいと思っています。ということで、再戦熱烈希望です。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/130008/la-loire

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Locomotive Werks

2013/3/16 のレポートの続きです。前回レポート : http://moon.livedoor.biz/archives/52310082.html

この日、2つ目のゲームは Locomotive Werks (機関車工場) / Winsome Games | Queen Games でした。

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生産数が少なすぎる Winsome Games のプロダクトにありがちな、「気がついたらもう地球のどこでも入手難」な状態となって、すっかり幻のゲームとなっていたわけですが、Queen Games が Kickstarter (またおまえか) でがんばってくれましたので、こうして極東の島国でもようやく遊ぶ機会が得られました。実にすばらしいことです。ゲームの内容がオリジナルとリメイクとで違いがあるかどうかまでは調べていないので不明ですけれど。

国内ではメビウス頒布会で販売されましたので、そのうち一般販売も始まるのではないでしょうか。

◆概要
Locomotive Werks のテーマは19世紀のドイツにおける鉄道機関車の開発史です。プレイヤーは機関車工場の経営者となり、次々と世代交代して市場に登場する機関車を、需要に応じて工場で生産し、それを売却することで、より大きな収益を上げることが目的となります。

プレイヤーはあくまでも工場経営者であって、鉄道ゲームによく見られる線路敷設や株式売買などの鉄道会社経営的要素はありません。

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◆需要
ゲームボードには、様々な機関車が周囲をぐるりと取り囲んでいます。左上の機関車(旅客機関車の第一世代)が、このゲームで最初に登場する機関車です。4人ゲームの場合、全員がこの機関車を「1」だけ生産する工場を持っています。

右の図は、各機関車の世代交代について、ゲームボードのデザイン構成を元に抽象的に表現して作成したものです。

現時点で取り扱い可能な機関車は、ゲームボード上にダイスが配置されている機関車だけです。このダイスは、このラウンドでのその機関車がどれだけの需要を持っているかということと、実際に売却可能な機関車の残余数を表しています。

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◆機関車工場
プレイヤーが保有する機関車工場はカードによって表されています。機関車工場には、カードに記載された機関車を生産する機能(生産能力)を持っています。

生産能力とは、その工場が機関車を製造する生産ラインのようなものです。したがって、ある工場で生産した機関車を出荷し売却したとしても、次のラウンドでその工場はまた生産能力に等しい数の機関車を生産し売却することが可能です。

機関車工場は、プレイヤーが受け取った直後は初期値で「1」の生産能力を持っており、その数字が記されたタイルをカード上に置きます。「1」の生産能力を持つ機関車工場は、あるラウンドにおいて、最大で売却代金に等しい額の収益を上げる可能性があります。

同様に「2」の生産能力を持つ機関車工場は、あるラウンドにおいて、最大で売却代金の2倍に等しい額の収益を上げる可能性があります。以下同様です。

機関車工場の生産能力は、「増設」によって増やすことができます。ただし、生産能力を「+1」するごとに、工場増設コスト(カードに記載されています)の支払いが必要です。

旧式の機関車工場は、より新しい機関車工場に生産ラインをシフトさせることが可能です。シフトするには、新式の機関車工場をプレイヤーが保有していなければなりません。またシフトさせる場合には、工場増設コストの差分を支払う必要があります。生産ラインですので、コストさえ支払えば運用は柔軟に行えるようになっています。

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◆需要と収益
工場で生産した機関車を市場に売却することでプレイヤーは収益を得ます。ですが、市場がいつでも無尽蔵にどんな機関車でも受け入れる、というわけでありません。市場の需要には上限があり、また古い型の機関車は需要が少なくなります。

ゲームボード上の各機関車には2〜4マスの「需要マス」があり、ひとつの需要マスにはひとつのダイスが配置されます(必ずしもすべての需要マスがダイスで埋められるとは限りません)。需要マス上のダイス目が、そのラウンドにおけるその機関車の需要を表します。ダイス目が高い方がたくさん売れるという意味になります。

ある機関車の需要マスに置かれたダイス目の数までは、その種類の機関車工場で生産した機関車を売却が可能です。ダイス目に等しい数の機関車が売却されたら、ダイスは「購入済み」のマスに移動させます。ある機関車工場が、需要を越える生産能力を持っていたとしても、売却可能な上限は需要マス上のダイス目の数までです。

あるプレイヤーが、需要マスのダイス目よりも少ない数の機関車を売却した場合、需要そのものは残ります(ダイス目−売却数=残り需要)。別のプレイヤーが同じ種類の機関車工場を持っていて、まだ生産能力が残っているのであれば、残った需要まではその機関車を売却することが可能です。

つまり需要マスのダイス目は、そのラウンドにおいて、購入済みの機関車工場(同じ機関車工場を複数プレイヤーが所有していることもあります)が売却可能な上限値という意味です。

ひとつの機関車の需要マスに、複数のダイスがある場合の売却については、ルールに従った手順で処理が行われます。詳細は省略しますが簡単にまとめますと、需要マス上のダイス個数が多いほど売却の機会が増加し、ダイス目が大きいほど一度に売却可能な数が多くなります。

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◆世代
ゲームが進行するにつれ、より新しいタイプの機関車が次々と登場します。ゲームボード上で、現時点で最も新しい機関車から時計回りに隣接した位置にある機関車が、次の最先端として登場する機関車です。

機関車には4つの種類があります(旅客・急行・貨物・特殊)。新式の機関車が登場しますと、それと同じ種類で旧式の機関車の需要は下落するようになります。例えば、旅客機関車の第二世代型の機関車がゲームに登場しますと、旧世代となる第一世代型の旅客機関車は需要が落ちていきます。

第三世代型の機関車が登場するようになりますと、同じ種類で二世代古い機関車は新たに購入できなくなります。需要が下落した結果ゼロとなり、市場がなくなってしまった機関車の製造工場は、生産ラインを新しい世代の機関車工場へとシフトさせない限り、もはや利益を生み出すことはありません。

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◆争点
このゲームでは、多くの部分で他プレイヤーとの絡みがあります。しかし関連が密なだけだけであって、競合要素はそれほど多くありません。そのほとんどが機関車を売却する順番に偏在しています。

新規工場の開発は極めてコストが高い設定になっています。新規開発を開始した上で、更に増設まで考慮しますと、所持金にかなりの余裕があるときだけしかこの選択を行えません。無理をして工場を購入しても、十分な利益が出るまでには時間がかかります。このゲームにおいて時間は自分だけではコントロールすることは不可能で、思わぬタイミングで世代交代が一気に進んでしまいますと、利益どころか損害を食らうこともあります。

かといって少ない生産力で工場を自転車操業しているだけでは、時代の最先端の機関車を効率よく生産して収益を上げているプレイヤーに市場の独占を許してしまいます。何をするにしても他プレイヤーの思わくが複雑に絡み合ってきますので、思い通りに進めるのはなかなか難しいゲームです。

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所持金が少なければ、次のラウンドではプレイ順が先になります。そのようなときに、あなたがたっぷり増設した工場の機関車がたまたま大きな需要に恵まれていたのであればチャンス到来です。需要はダイスでランダムに決まりますから正確に読むことはできませんが、自分にとって有利なシチュエーションを思い描きながら計画を立てることくらいはできます。

一方、不運にもそのようなときに世界が不況に波に飲み込まれていたのであれば、頭ひとつ飛び抜けたプレイヤーが収益の要としている市場に介入したり、あるいはその市場を時代遅れにするべく新規開発を推し進めるような行動を取ったりします。どちらにしても現金が必要ですけれど。


この日のセッションでは、ふうかさんが中盤すぎに大きな利益を上げることに成功した後、そのまま順調に業績を伸ばし続けていました。他の3人はそれに対抗するべく、急いで世代交代を推し進めたものの、それを無計画にやっちまったのは性急すぎた行動だったようで、それぞれが十分な収益を上げる前に、まだろくに走ってもいない車両の需要が次々としぼんでいく流れになって自滅したような気がw

中盤までは1ターラーを搾り取るような細かで地味な駆け引きが続いていたのですけれど、それを過ぎたら各自の収益は急速に膨らみ、終盤は1ラウンドで数十どころか3桁に達する大きな収益となって一気に収束しました。

結局、最終ラウンドはふうかさんのウイニングランを眺めているだけだったような。僕の結果は300ターラーちょうどの3位でした。

このゲームはダイスを多用しますが、プレイヤーが収益を上げる経営部分に偶然の要素はありませんので、中盤を過ぎてからある程度の差をつけられると後から追いつくのはかなり難しくなるような気がしました。

初回ゲーム後の感想としては、序盤はほとんどが必然手だけで場が進む作業感が強くて、また終盤の少しばかり大味な展開からしますと、中盤でどうやってゲームメイクするかを考えさせるようなデザインになっているのかなあ、と。

見通しが良くクリーンなシステムはとても気に入りました。今回は何かと悔いの残る展開でしたし、周囲には鉄道ゲーム好きが多いですから、再戦の機会が訪れることを願っています。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/3828/locomotive-werks

※レポートは後日に続きます。次のレポート:http://moon.livedoor.biz/archives/52311074.html

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Express 01

3/16(土)は、地元の千歳烏山はゲーム倉庫にてゲーム会を開きました。いらっしゃったのは、ふうかさん、かろくさん、いたるさんの3人で、僕を入れて計4人でした。この日は2時間級と軽量級を2ゲームずつ計4ゲームを遊びました。例によって、ゲームごとに分割してレポートします。


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◆概要
この日の最初のゲームは Express 01 (エクスプレス01) / Pegasus Spiele でした。鉄道建設と鉄道会社の経営をテーマにしたカードゲームです。

基本ゲームではドイツが舞台となっており、プレイヤーはこの地に鉄道網を建設したり、それらを発展させたりできます。またプレイヤーは投資家でもあり、事業の拡大が見込めそうな鉄道会社の株券を購入し、その会社の運営に携わることで資産の増大をもくろむこともできます。

◆アクション
手番でできることは、「鉄道網の改良して、株券を購入する(あるいはその逆)」「鉄道会社を運用して配当を獲得、プレイ順を変更する」のいずれかです。このような2つのアクションの組み合わせを「アクションセット」といいます。アクションセットに含まれる2つのアクションは、そのどちらかだけを行うこともできます。

「鉄道網の改良」アクションでは、コストを支払うごとに、場のベースカード(初期配置の地図を構成するカード)を線路や駅のカード(まとめて『改良カード』と呼びます)に置き換えたり、既に配置されている改良カードをアップグレードしたりできます。コストを支払う限り、このアクションはひと手番で何回でも行うことができます。

「株券の購入」アクションでは、任意の会社の株券を、コストを支払うことで購入することができます。株券1枚の価格は、ゲームボード上に存在するその鉄道会社の駅数と同じです。

「配当の獲得」アクションは、手番プレイヤーが保有する株券の鉄道会社をひとつ選び、ゲームボード上にある2つの駅間で列車を運行させることで配当金を生み出します。

始点と終点となる2つの駅の距離は、場に公開されている購入済みの株券の枚数で決まります。また、始点と終点の駅の間に別の駅を(前述の距離ルールを遵守する限りにおいて)幾つでも経由することが可能です。多くの駅を通過すれば、払い出される配当も大きくなります。

列車を運行させるルートは、可能な限り配当が最大となるようなルートを選択しなければならず、そのために他の株主と相談することもできます。配当は新たな手札として配布され、株主プレイヤーがそれぞれの株券保有数に応じた枚数を獲得します。

「プレイ順の変更」アクションは、他のプレイヤーとのプレイ順を交換します。このゲームでは、このアクションを用いなければプレイ順が変わることがありません。

◆手札(流動資産)によるコストの支払い
手札は流動的な資産として扱われます。アクションでコストを支払うときには手札から支払います。手札の補充(=流動的な資産を増加させる)は、「配当の獲得」アクションで配当として得るしか方法はありません。

他の誰かの手番で「配当の獲得」アクションが選択され、ある鉄道会社が運用された場合、手番外であってもその鉄道会社の株主であれば、所有している株券の枚数に応じて手札にカードを補充できる可能性があります(なお、配当については例外的な手続きがあって、必ずしもそうならないケースがあります)。

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◆12個の山札
「鉄道網の改良」と「株券の購入」のアクションは、山札から該当するカードを取ることで実施されます。

このとき、山札の上からではなく、任意の山札を選び、その中から自分の望むカードを自由に選ぶことができるのです。このゲームには「山札」が実に 12( ! ) もあって、ルール的に合法であれば、どの山札に中にあるどのカードでも選ぶことができます。

このゲームは、セットアップが終わったらランダムな要素がなくなり、プレイヤーの意思決定のみが場に影響を及ぼします。12 の山札はどれも表向きに置き、必要なタイミングでその中をすべて見ることができます。またコストとして手札から支払われるカードは、任意の山札の上へ表向きに重ねられていきます。

ただし、山札のカードが重ねられている順番を変えることはできません。プレイヤーが任意のカードを山札から選び出すときには、そのカードを山札から単に抜き取ります。そしてゲームが開始されたら、どの山札もシャッフルすることはありません。

◆株券と固定資産
一部の線路カードは株券カードとしても使えるようになっています。しかし、それはどちらかとしてしか扱うことができません。

ゲームボード上に配置されている線路カードに株券カードのシンボルがあっても、それは線路カードとして扱います。逆に誰かの株券となっているカードは、もはやこのゲーム中には線路カードになることはありません(株券を売却するルールはありません)。

株券の価値はプレイヤーの固定資産の大きさを決める主要な要素です。ある1枚の株券は、ゲームボード上に存在するその鉄道会社の色のついた駅数と同価の資産価値を持ちます。例:2つの駅を持つ鉄道会社の株券3枚は資産6の価値を持ちます。

ゲームボード上の駅カードの色は、そのカードをアップグレードすることで変わることがあります。駅が「上書き」されて色が変われば、それを保有する鉄道会社も変わり、該当する鉄道会社の株価は増減し、結果としてプレイヤーの資産も増減します。駅にはどの鉄道会社にも属さない中立的な色(国有鉄道?)もあって、単に株価と資産が下落するだけのこともあります。

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◆戦術
すべての改良カード(線路カードと駅カード)は「ゲームボード上の線路」か「手札(流動資産)」のいずれかになる可能性があります。また前述のように、一部の線路カードは鉄道会社の「株券」ともなります。ある改良カードが、そのどれかとして扱われている間は、その他のどれにもなりません。

これを利用しますと、例えば他人に利用されたくない線路カードを株券として購入してしまうとか、塩漬けの流動資産として手札でずっと握りつぶすことで「ブロック」ができます。これは Express 01 の基本的な戦術のひとつであると言えます。

Express 01 は、新たな駅の建設やアップグレードの制限が緩く、そのために株価(株券の資産価値)の変動を安いコストで簡単に行えます。そのため、ゲーム中に資産価値の大幅な増減が頻繁に発生します。何も対策をしなければ混沌とした濁流に翻弄されるだけから、そうならないための手段のひとつとして、前述のブロック戦術が有効に働くでしょう。

ブロックしたいカードが株券であれば、それを「株券の購入」アクションで購入するだけで目的を完遂できます。株券となる線路カードは、任意の山札の中から自由に選んで購入することができるからです。もっとも、株券カードは線路カードとして重要な地点を構成するようにはなっておらず、また枚数にも限りがあります。そして株券は有償であり、時に高価です(その鉄道会社の駅数と同価)。

ブロック目的のカードが株券ではなく、その他の改良カードで、それがどこかの山札にまだあれば、「鉄道網の改良」アクションでそれを選びとって、鉄道網上の無関係な場所へ配置しておくのも一時的には有効です。もし、このカードを他のプレイヤーがアップグレードして山札の上へ戻ったのであれば、次の自分の手番で「配当の獲得」を行って目的のカードを手札に入れてしまえば良いのです。

もっとも手番が回ってくる前に、他のプレイヤーによってその山札の上に別のカードがかぶせられて、計画が頓挫するかもしれません。このように失敗するリスクはゼロではありませんが、恐らくこれがブロック戦術を実現する最も現実的な方法ではないでしょうか。

あるいは、鉄道網を拡張する際の制限(※)を利用して、どうやってもゲームボード上にブロックしたいカードを配置できないパターンを作り出せるかもしれません。このパズル的な戦術は、150枚を越える線路カード内容を熟知していなければならず、またそうであったとしても難易度は極めて高いと思われます。

※線路カードをゲームボード上に配置する際には、既存の鉄道網を維持しなければならず、またゲームボードの端に対してオープンになる線路は引けません。

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◆キャッシュ・フローの重要性
株券の買い方は大きく2つの方針が考えられます。すなわす、大きな収益の独占を見込んでひとつの会社の株券にのみ集中して買うか、あるいは多くの鉄道会社の株を少しずつ買い集めるかです。

株券は固定資産としてだけではなく、「配当金を獲得」アクションにおいて、運行するルートの最大距離を決める要因でもあります。ある鉄道会社について運行ルートの最大距離は、「配当金を獲得」アクションを選択した手番プレイヤーだけではなく、他の株主が持つ株券の枚数も含めた総数です。

株主が一人だけの鉄道会社を運行すれば利益を独占できますが、長い運行ルートを構築して多大な収益を得るまでには時間と多額の投資が必要です。一方、複数のプレイヤーによる鉄道経営は、より長い運行ルートを安価にすばやく構築することで高い収益を獲得できますが、それは株主ごとに分配されます。

どの方針を選択するにせよ、手札が枯渇しないよう気をつけなければなりません。有償アクションの実施は、配当によって得られる収入にのみ依存しているためです。

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◆デザインコンセプトと問題点
運要素を取り除いた鉄道ゲームといえば「18xx」シリーズが思い浮かびます。鉄道網のアップグレードや鉄道会社の運用と株の仕手戦等々、Express 01 がこの 18xx シリーズに強く影響を受けていることは一目瞭然です。

その上で、流動的な資産を手札で表現したり、株価を駅数と同じにしたり、1枚のカードに複数の機能を持たせる等々から、18xx においてリアルであっても煩雑な要素をできるだけ抽象化し、よりプレイアブルなゲームにしようとしたデザイナーの意図がくみ取れます。

その意欲的な試みは大変に意義のあることです。しかしその構想の実装は、洗練されているとはとても言えない点が幾つかありました。

共有の山札が 12 もあるのは、それぞれのデッキコントロールをプレイヤー同士の争点として戦略の要に組み込み、また目的のカードを探し出しやすくするための工夫としては理解できます。しかし前者は、山札ごとのカード構成をある程度は事前に把握していないと活用できませんし、後者はカード上のシンボルがわかりにくくて結局は十分な効果が得られてはいないように思えました。

ルールブックには(原文から)不明確な点が多くあり、それを解決するために BGG のお世話になりました。とはいえ、そこにはどうやら公式な裁定はなく、知り得た情報はあくまでもアンオフィシャルです。ルールブックから得られる(不完全な)情報が現在のところ唯一の公式情報のようです。

ついでにいいますと、僕の購入した Express 01 に添付されていたショップ訳がちょっとひどい出来ばえで、これが正しいルールの理解に対する障害にもなりました。このゲーム会では HJ 訳を見せてもらったのですが、こちらはざっと眺めただけでも訳文や編集がしっかりしているように見えました。

◆セッションと初回プレイ後の評価
幾つもの問題点を書いてしまいましたが、Express 01 が評価に値しない駄作であると僕は言いたいわけではありません。それどころか、初めてプレイした直後も、そしてこれを書いている今も、このゲームの印象は決して悪くはないのです。

今回のセッションでは、序盤〜中盤までは複数山札サーチという独特のシステムを把握するのが精一杯だったこともあり、勝ち筋を考えるまでとても気が回りませんでした。ともかくも、流動資産のキャッシュ・フローが重要だとまず仮定した上で、中盤までは多数の会社の株券を少しずつ購入し、どのような展開になっても運転資金が枯渇しないように気を使いました。

この方針では、流動資産は主に株券の購入に費やされるため、ゲームボードで改良カードを配置することは必要最小限に抑えるようにし、また配当も他の株主にやってもらうようにしました。

中盤過ぎになってようやくゲームの要点がわかり始めますと、それまでの手探り状態から一転してセッションが熱く盛り上がり始めました。特に、ここまで何度も書いた「カードを握りつぶす(ブロック)」戦術の効果がわかりやすく現れる終盤は大変に面白かったです。

コストさえ支払い続ければ「鉄道網の改良」アクションによって改良カードの配置やアップグレードを一手番で何度でも行えるため、流動資産が増加する終盤になるほど、鉄道会社が保有する駅数の変動幅が大きくなり、株券の資産価値もそれに伴って劇的に変わります。

ですから、終了条件が満たされていた最終ラウンドでは、後手番のプレイヤーの方が場の操作をしやすくなるので優位となります(もちろん、それを行うための流動資産を持っていることが前提です)。

それらを踏まえた上で、キーとなる駅カードの色を変更させられないよう、ゲームが終わるまでにそれを手札にできるだけ多く抱えておくことが勝ち切るために重要な戦術となるのです。その駆け引きの妙を終盤だけでも味わえたのは幸運でした。

初めてプレイした後の感想として、鉄道ゲームとしては水準を十分に超えた作品だと感じました。それだけに、カードの枚数もシンボルデザインも整理しきれていないためプレイアブルではないことと、ルールに不明確な点がいくつもあったという、入り口の狭さをとても残念に思います。

最後に今回のセッションの結果について。ゲーム終了時、ふうかさんと僕とが資金総額で同額となり、株券の枚数が多かった僕が勝利となりました。ふうかさんは序盤から特定の鉄道会社に資金を集中投下し、ゲームボードでは改良を積極的に行うという、僕とは正反対の積極的なアクションを主体にした戦略で利潤を追求していました。

異なる2つの戦略を取ったプレイヤーたちが、そのどちらも資産総額でトップだったということです。これはとても興味深い結果だとは思いませんか。もちろんただの偶然かもしれませんけれど、ひょっとしてこれは Express 01 が優れた戦略ゲームであることの傍証くらいにはなるかもしれませんよ?(まだ1回しかプレイしていないので、この主張は控えめにしておきましょう)。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/127798/express-01

※レポートは後日に続きます。次のレポート:http://moon.livedoor.biz/archives/52310776.html

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namibia

ナミビア、と聞いて、これが何となく国名であるとはわかっても、その国がどこにあるのかまで知っている人は、おそらくそれほど多くはないでしょう。少なくとも日本では、ナミビアという国が話題になったことは、現在はもちろん、過去にもほとんどありません。

moon Gamer

ナミビアは、アフリカ大陸の南西部、南半球側に位置する国です。希望岬のある南アフリカ共和国の北西部と言えばわかりやすいでしょうか。

今回の記事とは関係がないので詳細には書きませんが、特に近世以降において、アフリカのどの地域にも凄惨な歴史が現在でも暗い影を落としています。ナミビアも例外ではありません。この国が成立したのは1884年で、それはドイツの植民地としてでした(ドイツ領南西アフリカ)。アフリカのほとんどの国がそうであるように、ナミビアの国境線も植民地を支配する側の国々の都合によって決められました。

さて、日本においては知名度が低いナミビアですが、前述のようにドイツでは歴史的になじみのある国のようです。今回のレビューする「ナミビア」は、ドイツの Mucke Spiele から発売されました。

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このロゴは、同人ゲームの制作者なら見たことがあるかもしれません。発売元は通称「ドイツのコマ屋(あるいは単に『コマ屋』)」こと www.spielmaterial.de から派生したオリジナルゲームブランド Mucke Spiele のものです。

たまにサイトへアクセスすると、新作がけっこうなペースで追加されていたりしますね(そしてそのゲームで使用されているのコンポーネントがコマ屋サイトの方で売られていたりしますw ゲームの企画が先なのかコンポが先なのかは知る由もありませんがw)。

Overview

「ナミビア」は4種類の天然資源(鉱物)を発掘し、それを港へ運んで、できるだけ高い価格で売却して利益と評判を競うボードゲームです。プレイタイムは120分と箱に記載されており、これは昨今の基準では長時間ゲームとして分類される長さでしょう。

ゲームは全6ラウンドあって、各ラウンドには4つのフェイズがあります。サドンデスルールはありませんが、ラウンド数(ターン数)が決まっているので、いつまでも終わらないというようなことはありません。ちなみに脱落ルールはあります(まず起こらないでしょうけれど)。

各ラウンドのフェイズ構成は以下のようになっています。

1.植民地の執政官買収フェイズ
2.建設フェイズ
3.船積みフェイズ
4.管理フェイズ

簡単に言うと、まずそのラウンドのプレイ順等を決定するための競りが行われ、その順番で発掘調査や鉱山や鉄道を建設し、そして実際に発掘を行い、それを港まで運んで利益や評判を得ます。「評判」の要素を除くと、マップがヘクスグリッドなのも含めてまるで「蒸気の時代」の構造を想像する方もいるかもしれません。しかし両者は細部においてまるで異なる構造のゲームです。

植民地の執政官買収フェイズ
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競りのルール自体はシンプルです。現在のラウンド数を最低入札価格として、スタートプレイヤーから順に、競り上げるかパスして抜けるかを選択します。最初に競りから抜けたプレイヤーを4位(4人プレイ時)として、1〜4位を決めます。この順位が建設フェイズと船積みフェイズでのプレイ順となります。

この競りには他にもいくつかの意味があります。まず順位が上であるほど、多くの「線路」を受け取ります。線路とは、鉱山から鉱物を港へ運搬するための交通機関で、収益を得るためにも、評判を上げるためにも重要なインフラです。なお、盤上に配置された線路に所有権はなく、可能であれば誰でも無料で使える公共交通機関でもあります。線路の建設はこの後の建設フェイズで行います。

もうひとつ。競りで順位が上であるほど、より多くの評判を失います。評判は勝利得点でもあるので、失う評判に見合うだけの価値があるかどうかを見極めるながら入札する必要があるわけです。まとめると、競りではプレイ順と線路が得られて、入札したお金と評判が失われます。

なお、最初に競りから脱落したプレイヤー(4人プレイ時なら第4位)は、この後のフェイズでプレイ順や線路建設では不利となりますが、2つの特典が与えられています(後述)。ですので、大金をつっこんで3位になるよりは、早々と脱落して4位を選択した方が得なケースがあります。

moon Gamer 建設フェイズ

鉱山の開発と鉄道建設を行うのが建設フェイズです。建設フェイズは以下の5つステップを、1〜5の順番で、プレイ順にしたがってプレイヤーごとに行います(あるプレイヤーが1〜5を行ってから、次のプレイヤーが1〜5を行う)。

a.鉱山の建設完了
b.新鉱山の建設開始
c.資源調査
d.鉄道建設
e.トラックを鉱山へ移動

このゲームであつかう4種類の「鉱物」は、盤上のマス(ヘクス)から産出されます。プレイヤーが鉱物を産出するためには、マスの上に鉱物キューブが存在することと、そこに「鉱山」の存在が必要となります。

このゲームでは「ダイヤモンド」「金」「銀」「銅」の4種類の鉱物が扱われますが、各プレイヤーが採掘できるのはそのうち3種類だけです。その組み合わせはプレイヤーごとに異なっています。つまり各プレイヤーは、ダイヤモンド・金・銀・銅のうちいずれかひとつを扱えないのです。自分が扱えない鉱物キューブの存在するマスには鉱山を建設することはできません。

鉱山を建設するには2ラウンドかかります。前のラウンドの建設フェイズ・ステップ2「新鉱山の建設開始」で新しい鉱山を配置することで、次のラウンドの建設フェイズ・ステップ1「鉱山の建設完了」で鉱山が完成します。

新鉱山の建設開始を行うマスは、他の鉱山が存在せず、なおかつそのプレイヤーが採掘可能な種類の鉱物キューブが存在していなければなりません。

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セットアップ時に鉱物キューブがいくつか配置されますが、ゲーム中に鉱物キューブを配置することも可能です。それを行うのがステップ3「資源調査」です。

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資源調査ステップでプレイヤーは、ルールで規定された条件に合致する空いたマスに1〜2個の鉱物キューブを配置します。

さて、プレイヤーは「新しい鉱山の建設」ではひとつの鉱山を、「資源調査」ではひとつのマスに対して鉱物キューブを配置します。これらは可能であれば必ず行わなければならない義務となっています。さらにプレイ順が4番目のプレイヤー(植民地の執政官を買収フェイズで最初に競りから抜けたプレイヤー)は、これらを可能な限り2回行わなければならない、という特典がついてきます。これはきわめて重要なルールです。

プレイ順が最後のプレイヤーが新鉱山建設と資源調査を2回行えるというのは、特に序盤において強烈なアドバンテージになります。特に4人プレイにおいて、序盤に2ラウンド連続して4番手になったプレイヤーは、恐らく相当に有利な状況となってしまうと思われます。いずれにせよ、この最終手番プレイヤーの特典を誰が得るのか、少なくとも中盤すぎまでは誰もが意識してプレイする必要があるでしょう。

これは「植民地の執政官を買収フェイズ」の競りにおいて、多額のお金をつっこんでプレイ順が3位になってしまうことに対する警鐘ともなります。3手番プレイヤーは得るものが少ないのですが、それなら失うものをできるかぎり減らすよう心がけるべきです。

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建設フェイズの最後の2つのステップは、いずれも鉱物の運搬に関わるものです。

鉄道はヘクスサイドに連続するように配置され、鉱山と港を結びつけます。鉄道は、鉱物を大量に運搬するための交通機関で、盤上に配置された時点で中立的な公共施設となり、可能であれば誰でもそれを使用することができます(使用するのは次の船積みフェイズ)。

トラックは限定的な鉱物運搬を行うための車両で、各プレイヤーごとに1台ずつ所有しています。これを自分の鉱山へ配置させておくことで、次の船積みフェイズでその鉱山の鉱物を鉄道を使わずに港まで運搬可能となります。

船積みフェイズ

完成した鉱山から、鉱物キューブを港に運搬するフェイズです。少しばかり変わった処理なので、順番に説明しましょう。

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船積みフェイズでは、プレイ順1位〜3位のプレイヤーが順番にアクティブプレイヤーとなります。プレイ順最下位プレイヤーは、このラウンドの船積みフェイズではアクティブプレイヤーにはなりません。

アクティブプレイヤーはまず、4種類の鉱物(ダイヤモンド・金・銀・銅)のうちひとつの種類を選択します。プレイ順2位と3位のプレイヤーが鉱物の種類を選択する場合は、このフェイズの自分より前の手番でまだ選択されていない種類の鉱物を選ばなければなりません。

またこの時に選択する鉱物は、自分が採掘できない種類の鉱物をあえて選択してもかまいません。

盤上には港が4つあります。アクティブプレイヤーは、鉱物の種類をひとつ選ぶ際に、港もひとつ選びます。この時に選択する港も、このフェイズでまだ誰にも選択されていない港でなければなりません。

なんだか面倒そうですが、実際の手続きはとても簡単です。アクティブプレイヤーは鉱物の種類を表す「鉱石ディスク」というマーカーをひとつ取り(それが運搬可能な鉱物の種類となる)、それを任意の港に置くだけです。後の手番で別のアクティブプレイヤーが港を選択する際には、マーカーまだ置かれていない港から選択すればいいのです。

その後で、選択された種類の鉱物をアクティブプレイヤーがまず船積み(自分の鉱山にある鉱物キューブを目的の港へ鉄道やトラックを使って運搬すること)します。アクティブプレイヤーの船積みが終了したら、その後でまだ船積みしていないプレイヤーたちが、プレイ順で船積みを実施します。

全員が船積みを実施したら、そのアクティブプレイヤーのサイクルが終了します。そして次のプレイ順のプレイヤーがアクティブプレイヤーとなり、鉱物の種類選択と全員の船積みを実施します。こうして、プレイ順3位のプレイヤーがアクティブプレイヤーとなり、全員の船積みが終わった時点で船積みフェイズは終了します。

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鉱石の種類ごとの市場価格・需給状況・売却総数は、「鉱石指標」と呼ばれるトラック上で記録します。

「鉱石指標」は右図のような構成で、鉱石の種類ごとに1列ずつの計4列のトラックを使います(右端の1列は拡張用に準備されたもののようで、このセットでは使いません)。

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各トラックごとにその鉱石の相場を表す「鉱石ディスク」(丸くて平たいコマ)と、その鉱石の需要状態を示す「需要ポーン」(チェスのポーンのような形状のコマ)が置かれています。

プレイヤーによって鉱石が売却されると、その鉱石の供給数を表す「供給マーカー」(黒いドラム缶コマ)で、このフェイズで売却された鉱石の総数を種類ごとに記録します。

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プレイヤーが鉱物キューブを港に運ぶと、まず市場価格にて売却され、運搬したプレイヤーは収益としてコインを受け取ります。

市場価格は、売却した鉱石の種類に対応した鉱石指標上にある「鉱石ディスク」の置かれたマスの値です。

その後で、同じトラック上の供給マーカーを、現在の値に+1したマスに移動させます。

例:銀の供給マーカーが「6」にある時、銀がひとつ売却されたら、それを「6」→「7」に移動させます。

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プレイヤーが鉱石をひとつ売却するごとに、供給マーカーもひとつカウントアップします。その値が、同じ列の「需要ポーン」の置いてある値を超えた瞬間、その鉱石の市場価格は半額となります。例:銅の市場価格が「4」、供給マーカーが「3」、需要ポーンも「3」の時、銀が売却されたら、供給マーカーを「5」に移動させた上で、銀の相場を半額(『4』→『2』)にします。

船積みフェイズにおいて市場価格は下がることはあっても上がることはありません。市場価格はこの後の管理フェイズにおいてさらに変動し、それによって鉱石の市場価格が上下することがあります。

船積みフェイズでは アクティブプレイヤーがまず鉱石の船積みを行って、その後で他のプレイヤーもプレイ順で船積みを行えます。もし、アクティブプレイヤーではないプレイヤーが船積みを行った場合、アクティブプレイヤーは評判ポイントを受け取ります。

受け取る評判ポイントは、船積みが実施された鉱山の数(鉱石の数、ではなく、『鉱山』の数)ひとつにつき2ポイントずつと、トラックによって船積みされた場合に2ポイントです。アクティブプレイヤー自身が船積みを行っても、収益は得られますが評判ポイントは得られません。

このようにして船積みフェイズは実施されます。前述のように、プレイ順が最下位のプレイヤーはアクティブプレイヤーにはなれず、したがってひとつのラウンドで運送される鉱石は3種類のみとなります。

管理フェイズ

ここでは主に「鉱石指標」を調整します。

1.供給が需要を上回っていれば、需要が+2(※船積みフェイズにて相場は半減している)
2.需要と供給が同じであれば、相場+1と需要+1
3.需要が供給を上回っていれば、相場+2と需要半減
4.このラウンドの船積みフェイズで船積みされなかった鉱石は、相場+3と需要+3

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需要が低い鉱石は、すぐに市場で飽和状態になって価格が暴落しやすくなります。需要が高くても供給されない鉱石は相場は上がりますが暴落の危険性が高まります。取引されなかった鉱石は、市場の期待が高まります。だいたいそんな感じでしょうか。

この調整後に、鉱石指標から供給マーカー(ドラム缶)を取り除き、また港に置いた鉱石ディスクも除去します。

また、すべての鉱石を採掘した鉱山はここで「廃坑」となり、鉱山マーカーを所有者に戻した上で、鉱山マーカーのあったマスに黒い四角形の廃坑マーカーを置きます。あるヘクスが廃坑になると、ゲーム終了までずっとそのままです。

また第3ラウンドと第5ラウンド終了時に、プレイヤーはお金を使って評判ポイントを購入することができます。

ゲーム終了

第6ラウンドが終了するとゲームは終了します。

盤上に鉱石キューブが残っており、そこに鉱山マーカーがない場合は、そのような鉱石キューブ1個について市場価格が−1されます。その後で、建設中の鉱山に鉱石キューブがあれば、それをその時点での市場価格で売却することができます。最後に、各プレイヤーは所持金5について1評判ポイントを獲得します。ゲーム中に獲得した評判ポイントと、この時点で得た評判ポイントを合算して、最も高い評判ポイントを得たプレイヤーの勝利となります。

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Namibia (ナミビア)
Designer: Brian Robson
Publisher: Mucke Spiele /2010
3 − 4 Players / 120 minutes

セッションレポートを書くつもりがレビューになってしまいました… レポートは別の機会に。

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5五将棋

たまたま iPhone アプリで5五将棋(K55 for iPhone)を購入して遊んでみたら面白かったのでシェア。

5五将棋の概要については「5五将棋 portal」というサイトが詳しいです。
http://minerva.cs.uec.ac.jp/~uec55/

5五将棋をごく簡単に説明すると、5×5マスの盤で玉・金・銀・飛・角・歩各1枚ずつだけを使う将棋のバリエーションです。自陣が手前の1列のみ(敵陣に入ったりそこから移動した駒は成れる)なだけで、その他はほぼ将棋と同じルールです。

この類いの変形ミニ将棋は他にもいくつかありますが、5五将棋は特殊なルールがほとんど存在せず、きわめて将棋のルールに近いことが特徴です。なので、将棋の入門用ゲームとして使われることもあるそうです。

また、小さなアブストラクトゲームにありがちな問題のひとつである千日手については、「千日手は先手の負け」というルールが採用されることが多いようです。

5五将棋に慣れないうちは、序盤で膠着してなかなか盤面が先に進まないことが多くあるかもしれません(先に仕掛けた方が一時的に不利になりやすいため)。僕が5五将棋を知ったばかりのころは、それが不満でした。

ですが、何局も指しているうちにコツがつかめてくると、本将棋とは異なる駒の価値観や手筋がわかるようになり、局面ごとに打開策を考えるのがとても楽しくなってきました。たったこれだけのマスと駒の数だけで、変化に富んだ切れ味鋭いゲームを楽しめるとは思いもしませんでした。

5五将棋のiPhoneアプリ「K55」についても簡単にご紹介します。 http://homepage2.nifty.com/kakinoki_y/iphone/k55.html

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開発者はあの「柿木将棋」と同じく柿木義一氏です。優秀な思考エンジンと使いやすいインターフェース、それに多くの機能を持ち、5五将棋を理解するだけではなく、棋力アップにとても役立つツールとなるでしょう。

K55の特筆すべきは、高性能な思考エンジンの出来栄えです。Bonanza Method をベースにした自己学習機能が搭載されており、悪手をできるだけ繰り返さないような作りになっています。これがすばらしい。

たとえば対局中に人間が有利になった局面で、「待った」機能によって盤面を数手戻したりすると、コンピュータは先ほど指した手と異なる手を選択することがよくあります。手数が進んで悪手と評価された手が自動学習機能によって避けられ、別の手を選択したわけです。

K55 は有料アプリですが、無料で5五将棋の対コンピュータ戦を楽しみたければ、たとえば以下のサイトでプレイ可能です(要Javaランタイム)。開発者が異なりますので、当然ながら K55 とは別の思考エンジンが組み込まれています。これはこれで、ビギナーのうちはなかなか手強い相手になるのではないでしょうか。
http://www.geocities.jp/shogi_depot/ssj55/index.html

余談ですが、5五将棋アプリ K55 を知ってハマったおかげで、僕はようやくパズドラから足を洗うことができましたww 将棋をよく知らなくても、2人用のアブストラクトな思考ゲームがお好きな方はぜひお試しください。そして5五将棋を気に入っていただけたのであれば、そのうちぜひ対戦しましょう。

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