moon Gamer - ボードゲームブログ

テーブルゲーム(ボードゲームやカードゲームなど、電気を使わないタイプのゲーム)と、その周辺の話題を中心にした記事や写真を広く公開している個人ブログです。

タグ:SGC例会

Legends of Andor

Legends of Andor (アンドールの伝説) は、2013年のドイツ年間エキスパートゲーム大賞を受賞したゲームです。この記事を書いている時点では未発売ですが、近日中に日本語版が発売される予定もあるようです。

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先日、「アンドールの伝説」の英語版を購入し、ショップ添付の和訳ルールを元に、6月のSGC例会にてプレイしました。

それは、エキスパートゲーム大賞ノミネートにふさわしい、充実した内容のゲームで、一緒にプレイしたメンバー共々、楽しい時間を過ごすことができました(※6月の時点では受賞発表前)。

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「アンドールの伝説」には、シナリオに相当する「伝説」を単位としてゲームを行います。本作にはこれが 5 つ収められており、そのいずれもが緊迫感に満ちたと演出が施されています。

それぞれの「伝説」は、物語として魅力的であることはもちろん、ゲーム的にも盛り上がるよう入念に作られているのです。このような考え抜かれた「伝説」のデザインは、エキスパートゲーム大賞を受賞した大きな理由にもなっているのではないでしょうか。

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ひとつの「伝説」は、数枚のカードによる「伝説デッキ」で構成されています。プレイヤーたちは、まずどの伝説をプレイするかを選び、それで使用する伝説カードを順番に重ねて伝説デッキを作ります。伝説準備カードに記載された通りにセットアップを行い、そして伝説デッキの一番上にあるカードを読み上げることでゲームが開始されます。

「アンドールの伝説」の魅力である「伝説」についてご紹介したいところですが、その内容を書いてしまうとネタバレになってしまいます。そこで本記事では、本作の特徴的なゲームシステムである「時間トラック」と「伝説トラック」についてご紹介しましょう。

※本記事の訳語は、僕が購入したゲームストア・バネストによって添付されていた日本語ルールブックに準じています。後日発売される日本語版とは異なるかもしれません。また、伝説の内容によっては、ここに書かれたこと以外の例外的な処理が発生することもあります。

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◆時間トラックと時間マーカー
「アンドールの伝説」は協力ゲームです。プレイヤーはそれぞれ異なる特殊能力を持つ「ヒーロー」ひとりを担当し、全員が協力して伝説カードで提示された問題を解決し、クリアを目指します。

本作では、ヒーローごとの時間管理システムに特徴があります。まず、ヒーローごとに「時間マーカー」が用意されています。

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あるヒーローが手番でアクションをすると、そのヒーローの時間マーカーを時間トラック上で進めます。ヒーローごとに時間マーカーを管理しますので、それぞれの消費時間は、同じアクションをしない限りは異なってきます。

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また時間トラックは、7マスの「昼」と、3マスの「夜」に分かれています。ヒーローが夜にアクションをすると、夜のマスをひとつ進むごとに精神力を余分に消費します。「精神力」とは、ヒーローの耐久力と、戦闘能力を決定する重要な要因のひとつです。

たいていのヒーローは、精神力が減ると戦闘能力も減退し、これがゼロになるとヒーローは倒れて「体力 (Strength:基礎的な攻撃能力) 」をひとつ失います。

プレイヤーは手番で、「通常アクション」を 1 回だけ行います。手番で通常アクションを行うことは、ヒーローの (ルール的な意味で) 義務です。通常アクションには「移動」「戦闘」「待機」「盟友の移動」の 4 種があります。

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このうち「移動アクション」について簡単に説明しましょう。ヒーローが移動アクションを行う場合、ボード上の隣接するスペースへ移動するごとに、そのヒーローの時間マーカーを 1 マス進めます。

ヒーローは 1 回の移動アクションで複数のスペースを移動することもできます。例えば、3 スペース移動したら、そのヒーローの時間マーカーを時間トラック上で 3 マス進めます。つまり、1 回の手番で複数の時間が消費されたことになります。

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「戦闘アクション」も、ひとつの手番で複数の時間を消費する可能性のあるアクションです。ヒーローが戦闘を行う場合は、まずそのヒーローの時間マーカーを 1 マス進めます。そして「ヒーローの攻撃」→「モンスターの攻撃」→「戦闘力の比較」と進んで戦闘結果を適用します (戦闘の敗者は精神力を失います)。

戦闘の結果、ヒーローとモンスターがいずれも精神力が残しているなら、戦闘当事者のヒーローは、この戦闘を継続するか、あるいはやめるかを選択します。

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もし、戦闘を継続することにしたら、戦闘当事者のヒーローは、その時間マーカーをさらに 1 マス進めます。そして上述の一連の手続きを行います。こうして、時間を費やすことで複数の戦闘を繰り返すことができます。

もちろん戦闘中に夜になると、そのことによって精神力を失いますし、1 日の時間を越えて戦闘を継続することはできません。

また、複数のヒーローたちが協力して 1 体のモンスターと戦う「チーム戦闘」の場合でも、それに参加するすべてのヒーローは、戦闘開始時と、戦闘を継続するたびに、それぞれの時間マーカーを 1 マスずつ進めます。ですので、同じモンスターを一緒に攻撃しているのに、あるヒーローは昼で、別のヒーローは夜になっているということもあり得ます。

その他の通常アクションに「待機アクション」という、いわば何もしないことを選択するアクションもあります。しかしそれでも、そのヒーローは時間マーカーはひとつ進めなければなりません。

手番で選択義務のある通常のアクションの他に、時間を消費しない「自由アクション」も幾つかあります (詳細は略)。自由アクションは、通常アクションの前か後に好きなだけ行えます。しかし、自由アクションだけを行って手番を終えることはできません。ですから、手番が回ってくるたびに、原則としてヒーローの時間マーカーは少なくともひとつは進みます。

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◆1 日のサイクル
時間トラックは「日の出」枠から始まります。

全てのヒーローは、1 日の始まりを日の出枠から開始します。そして 1 日の終わりも、この日の出枠の中で処理が行われます。

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ヒーローは自分の手番を開始する前に、もう時間を使いたくないか、あるいは使えないとき、自分の時間マーカーをこの日の出枠に戻すことで「1 日を終える」ことができます。その日の最初に 1 日を終えて日の出枠に戻ったヒーローは、翌日には最初の手番となります。

あるヒーローが 1 日を終えて日の出枠に戻ったとしても、他のヒーローは、望むのであればまだ手番を使ってアクションを行うことができます。1 日を終えて日の出枠に戻ったヒーローは、その日は手番が飛ばされるので、何も行動をすることができません。

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すべてのヒーローが日の出枠に戻ってきたら、そこで 1 日の終わりに行う一連の処理を実施します。この処理では、モンスターが自動的に移動し、井戸が復活し、そして伝説マーカーが伝説トラック上でひとつ進みます。

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◆伝説トラックとは
伝説トラックは、ゲーム進行に関わる 2 つの極めて重要な意味を持っています。

伝説トラックは 14 マスあって、それぞれのマスには下から順番に「A」〜「N」の文字が描かれています。ある伝説が開始されると、その伝説ごとに、指定された伝説トラック上のマスに「星」トークンを配置します。

例えば、入門編の「伝説1」では、冒頭に「A」「B」「C」「D」「F」「H」「N」へ星トークンを配置するように指示されています。

ゲーム開始時(=伝説の開始時)には、「A」のマスに「伝説マーカー」を配置します。ゲームが進むと、この伝説マーカーがアルファベット順に(A→B→C→…)進みます。

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伝説マーカーが進んだ先のマスに「星」トークンが配置されていれば、該当する伝説カードを引きます。伝説カードにも、伝説マーカーがどのマスに進んだら引くのかが示されています。

伝説カードを引いて、その説明を誰かが読み上げることで、それが実際に起こります。例えば、モンスターが増えたり、新しいアイテムが出現したり、盟友や農夫が登場したり、その他の様々なことが起こり、時にゲーム中の環境が劇的に変化します。これによって勝利条件が変化することさえあります。

そして伝説トラックにはもうひとつ、ゲームの終了条件に関わる重要な役割が与えられています。

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伝説トラック上を伝説マーカーが進み、最後のマス「N」に到達すると(特に指定されていない限り) 伝説は終わります。

伝説が終わったとき、伝説カードで指示された勝利条件が全て達成されているのであればヒーローたちの勝利です。しかしそうでなければ失敗となります。

つまり、伝説をクリアするための時間は限られているということです。したがってプレイヤーたちは、可能な限り効率的に行動し、伝説の勝利条件を速やかに満たすよう努めなければなりません。

上述したように、伝説マーカーが自動的に進む処理は 1 日の終わりに行います。しかし、それだけではありません。実は戦闘と深い関係にあります。前置きが長くなりましたが、いよいよこの優れた仕組みについて解説しましょう。

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◆戦闘と伝説トラックとの関係
モンスターと戦闘を行ってヒーローが勝利すると、戦闘に参加したヒーロー(たち)は報酬を受け取ります。そして、敗北した(=倒れた)モンスターはスペース「80」に置くことになっています。

さて、そのスペース「80」にあるシンボルに注目してください。ここには写真のように、伝説マーカーと上矢印が描かれています。これは、ヒーローが勝利し、モンスターが敗北するたびに、伝説マーカーが伝説トラック上でひとつ進むことを意味しています。

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伝説マーカーが進んだ先のマスに星トークンがあれば伝説カードが引かれ、そこで状況が大きく変わることがあることは前述しました。戦闘勝利よって伝説マーカーが進むのですから、伝説カードによる環境の変化は、1 日の終わりだけではなく、ヒーローたちがボード上で活動している間にも起こりうるのです。

そして、伝説マーカーが進むということは、その伝説をクリアするために残された時間が減ってしまうということをも意味しています。戦闘で勝利するたびに、モンスターという障害物が消滅し、更に報酬までも受け取ることができますが、その代償として残り時間が少なくなってしまうのです。

つまりヒーローたちは、効率的な行動とともに、無駄な戦闘も行わないように考えなくてはなりません。そして必要な戦闘を行うのであれば、勝利の確率をできるだけ上げる方策をよく練らなければなりません。

戦闘はダイスを使いますので、中途半端な戦力差では不安定要因が増加するだけです。戦闘に負ければ、体力と精神力、それに何よりも大事な時間を失うことになります(戦闘は時間を消費する行動であることは前述の通りです)。

しかし状況によっては、強力なモンスター相手に、あえてギャンブルのような戦闘をしなければならないこともあるでしょうし、楽勝だと思っていたモンスター相手に、不運によって思わぬ敗北を喫することもあるでしょう(何しろダイス判定ですので)。

可能であれば、意に反した事態に陥ったときの打開策も事前に考えておくことです。もっとも、正面突破しか解決手段がないならば、運を天に任せて力任せに突進するのも、それはそれで楽しい展開ですけれどもw

◆ドイツ年間エキスパートゲーム大賞受賞の栄冠に輝く
このように、伝説カードと戦闘勝利で伝説マーカーを進める 2 つのアイデアがシナジーを生み、その他の要因も高く評価されたことによって、「アンドールの伝説」はゲーム史に名前が刻まれる作品となりました。

実際に本作をプレイしていただけば、入門編の「伝説 1」だけでも十分にその緊張感を味わうことができます。そしてそれをクリアしたら、もっと先に進みたくなるでしょう。またこのような仕組みのおかげで、本作のプレイ時間がそれほど長くならないことも大きな美点となっています。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/127398/legends-of-andor

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Nieuw Amsterdam

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公私ともに多忙にて、だいぶ前のことになってしまいましたが、4/21 (土) の SGC 例会にて Nieuw Amsterdam (ニューアムステルダム) / White Goblin Games をプレイしました。

せっかくなので、メモ代わりにこのエントリーを投下します。この日は 4 人ゲームで、同卓の全員がこのゲームを初プレイでした。

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ニューアムステルダムは17世紀の、アメリカ大陸がまだ欧州各国の植民地であった時代を背景にしたマンハッタンを舞台にしたゲームです。

プレイヤーはパトロンとなり、現地の土地を整備したり、ニューアムステルダムへ建物を寄贈したり、先住民と取り引きをして動物の毛皮を本国に送ったりすることで勝利点を得ることが目的です。

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入手と利用方法の異なる複数の資源 (リソース) が用意されていたり、インタラクションが薄くてその機会が限定されていたり、個々の手続きは単純ながらも要素がてんこ盛りだったりと、イマドキのフリーク向けっぽい構成のゲームでした。

特殊効果のたぐいが盛り込まれてはいないためでしょうか、ボリューム満点の見た目ほどには濃密さが感じられず、むしろあっさりした印象を持ちました。ゲーマーズゲームであることは確かながらも、その中では軽い方に位置する内容かと思います。

特筆すべきはコンポーネントの素晴らしさ。ニューアムステルダムのアートワークは、実用性も兼ね備えたトップクラスの出来映えです。ボードやコマを見ているだけでもわくわくしますね。

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ところで、この日のセッションは僕は 2 位でした。この規模のゲームを、初見でだいたい意図通りに立ち回ることが出来たこともあってとても楽しめました。

そのうちリプレイしたいものですが、これだけの分量のルールはすぐに忘れてしまいそうです。ですので、まだ覚えているうちに、無いよりはマシ程度のルールサマリーを作ってみました。それを未来の自分のために、このエントリーに置いとくことにします。随時更新… かも?


Nieuw Amsterdam (ニューアムステルダム) ルールサマリー 最終更新 2013-05-28

  • 準備フェイズ
    1. 新着貿易船スロットと新規開拓地スロットを空にして再補充
    2. 先住民交易者用の毛皮スペースの空きスペースへ毛皮タイルを埋める
    3. 現金箱のアクショントークンを再配置
  • 競りフェイズ
    1. まだ列を獲得していない、最も小さな手番順トークンを持つプレイヤー以下を行う
      1. 残っている列をひとつ選択する
      2. その列の最上部へ自分の手番順トークンを置く
      3. 価格を宣言する (ゼロでもよい)
    2. 手番順に、まだ列を獲得していないプレイヤーは、現在価格より高い値をつけるかパスする
    3. 対象の全員が、一度ずつ値付けかパスしたら競りは終了する (一周のみ)
    4. 最高値を付けた落札プレイヤーがその列のアクショントークと手番順トークンを獲得する
    5. 支払いは、全種類の資源を利用可能 (価値はどれも同じ)。
    6. 落札プレイヤーが手番順トークンを持っていたら、それを列を選んだプレイヤーへ渡す
  • アクションフェイズ
    1. 街ステップ
      • 目的:VP
      • 利益:追加アクションの無償化 (最大多数が条件)
      • 関連:事業の維持コスト支払い (食料)
      • 手続:
        • 選択 #1:事業の建設
          • 概要:ニューアムステルダムへ事業 (建物) 配置
          • 支出:建物ごとに木材 1 個
          • 制限:1 手番で建物は 3 つまで
        • 選択 #2:選挙
          • 概要:ニューアムステルダムへ配置した事業の最大数を比較
          • 報酬:VP / エリアごとに単独最大多数で 3 点、単独でない最大多数で 2 点
          • 注意:手番プレイヤーのみ加点
    2. 土地ステップ
      • 目的:VP / 木材入手 / 食料 (定期収入)
      • 関連:事業の維持コスト (食料)
      • 手続:
        • 選択 #1:土地の追加
          • 概要:未整地の土地カード入手
          • 連動:ロングハウスを 1 つ上流へ移動 → 関連:先住民と交易
          • 制限:1 手番で土地入手は 1 枚まで
        • 選択 #2:整地
          • 概要:家が制限いっぱいに建設されている全ての土地を整地
          • 報酬:記載されて木材の総数 / 整地した最も右の土地から VP
    3. 交易ステップ
      • 目的:VP / コイン / 毛皮 / 商品 (定期収入)
      • 手続:
        • 選択 #1:先住民と交易して毛皮を得る
          • 支出:商品 / +食料 (交易所とロングハウスの位置関係による)
          • 報酬:毛皮 (1〜4枚)
        • 選択 #2:毛皮の積み込み
          • 報酬:VP / コイン / 商品 (定期収入)
    4. 特殊アクション
      • 各ステップの自分の手番中であれば任意の時点で 1 回の特殊アクションを行える
      • ステップごとに特殊アクションを1回ずつ行えるので、ラウンドごとに 3 回実行可能
      • アクションタイルを持っていないステップでも実行可能
      • 1 回につき 1 コイン支払う。対応地区の事業所が最大多数 (同数でも) で無償。
      • パスすると 1 コインの収入
      1. 製材所 コインと木材の等価交換
      2. 穀物倉 コインと食料の等価交換
      3. 波止場 倉庫追加
        • 支出:木材
        • 制限:1 つまで
      4. 水車小屋 土地へ家を配置
        • 支出:家 1 軒につき材木 1
        • 制限:3 つまで / 空き家スペースの数が上限
      5. 闇市場 毛皮を得る
        • 支出:1 枚につきコインと商品の組み合わせでコスト 3
        • 制限:3 枚まで
      6. 貿易会社 交易所の移動
        • 支出:木材 1
        • 制限:移動は1アクションで 1 回のみ / 移動先は有効なスペースまで
  • 食料&収入フェイズ
    1. 整地された土地から食料を受け取る
    2. 建設済み事業 1 つにつき食料 1 個を支払う。支払えなければ不足分の事業除去と VP -2
    3. 所有している船カードから商品を受け取る。倉庫のある波止場までしか貯蔵できない。
    4. 事業のある地区 1 つごとに 1 コインの収入。その地区で事業所数が単独多数なら +1 コイン
  • ゲーム終了:6 ラウンドでゲーム終了
    1. 最終選挙:地区ごとに事業所数が単独最大なら 3 VP、同数なら 2VP
    2. 家がすべて建てられている未整地の土地カードが最も右にあれば位置による VP
    3. 余剰毛皮 1 枚につき 1 VP
    4. その他の資源はすべて一緒にして、3 個につき 1 VP
    5. サドンデスなし / タイブレークなし (引き分け)
  • BoardGameGeek : http://www.boardgamegeek.com/boardgame/128898/new-amsterdam
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La Loire

3/24 (日) に、地元は千歳烏山で行われたSGC例会に参加し、La Loire (ロワール川) / Mind the Move を遊んできましたので、レビューとレポートをまとめました。

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◆概要
La Loire (ロワール川) は、Emanuele Ornella が 2012年に制作した経済ゲームです。彼は、Oltre Mare (オルトレマーレ / 2004)、Il Principe (君主論 / 2005)、Hermagor (ヘルマゴール / 2006)、Charon Inc (カロン株式会社 / 2010) など、国内でも和訳付きで発売された幾つものゲームを手がけています。

制作ペースは年に1〜2作のようで、そのほとんどはカードとお金を使った内容になっています。La Loire (ロワール川) は、まさしくそういう作品です。

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◆ゲームボード
ゲームボードには、ひとつの対角上に「ナント」と「オーリアン」という2つの都市があります。

2つの都市の間には、ロワール川を挟んで9つずつの村があり、各村はひとつのマスを表します。つまり、都市から都市への距離は10マスであり、ゲームボードには総計20マスがあることになります。

18の村には、それぞれひとつずつ商品のシンボルが描かれています。商品シンボルは木材・チーズ・穀物・ワインがあり、ゲームで扱われるその他の商品としてビールもあります。

◆商人とメッセンジャー
プレイヤーは2つのトークンが与えられます。すなわち「商人」と「メッセンジャー」の2つです。ゲーム開始時に商人トークン(ポーン)はナント、メッセンジャートークン(キューブ)はオーリアンに配置されます。

◆勝利条件
プレイヤーの目的はより多くの勝利点をあげることです。商人は村で商品を購入し、それを都市で売却して現金収入を得ます。商人は都市で建物を建設してメッセンジャーが勝利点を獲得する機会の増加と得点効率を上昇させることができます。メッセンジャーはメッセージを配達することで勝利点や少しばかりの収益を得ます。どちらも新たなキャラクターを雇用して、制約に縛られた移動やアクションの利便性や能率を劇的に改善することができます。

◆移動とアクション
プレイヤーは手番になったら、2つのトークン(商人とメッセンジャー)のうちどちらかを移動させます。その後で動かしたトークンのアクションを行います。そしてもう一方のトークンを移動させて同様にアクションを行います。アクションは任意ですが、移動は必須です。また移動を行った後でなければアクションは行えません。マスの種類ごとに可能なアクションは異なります。また、商人とメッセンジャーでも可能なアクションが異なります。

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◆移動と馬
商人とメッセンジャーは、どちらも馬で移動します。馬は白い円盤トークンで、その上に商人トークンやメッセンジャートークンを乗せる(スタック)と、それらのトークンが馬に乗っていることを表します。

馬トークンは2枚まで重ねることが可能です(注:右写真で馬トークンを3枚重ねているのは特殊効果によるものです)。そして重ねられた馬トークンの枚数+1マスが、トークンが1手番で移動するマス数となります(馬に乗っていない商人とメッセンジャートークンは1マスのみ移動)。

馬に乗って複数のマスを移動する場合、途中のマスで止まることはできません。短い距離を移動したいのであれば、移動開始前に馬の数を調整しておく必要があります。誰も乗っていない馬を自分のスタックに1枚だけ加えたり(ただし馬の枚数はスタックごとに最大2枚)、あるいは馬を移動開始マスに何枚でも置いて移動したりすることが可能です。

商人とメッセンジャートークンは、ある都市(ナントとオーリアン)から出発した後は、次に都市に止まるまでは方向転換が行えません。マスは周回構造になっていますので、例えばナントから出発したトークンが、オーリアンで止まらずに通過したのであれば、そのまま同方向へ進んで、少なくともナントに停止するまでは方向転換を行えません。ちょうど都市に止まったトークンは、次の移動開始時にどちらの方向へも進めます。しかし次に都市にちょうど止まって、そこから移動を開始するまでは方向転換が行えません。

◆商人のアクション
商人とメッセンジャーではアクションの選択肢が異なります。

商人の主な目的は現金収入です。村で商品を購入し、都市で売却して差額をもうけにするのが基本です。しかし、ひとつの村ではひとつの商品しか購入できません。また、木材を除いて1種類の商品は1つしか所有することができません。都市では幾つの商品でも売却できます。商品の価格は市場に示された村の種類ごとに決まります。ある種類の村で商品が購入されますと、その種類の村の価格相場が上昇します。

商人は都市に止まった手番で、商品を売却する代わりに建物を建設したり、ロワール川の勝利点を購入したりできます。いずれにせよ、どれかひとつのアクションしか行えません。

商人が都市から移動するためには、5ドニエ以上保有していなければなりません。そうでなければ、手番で1ドニエを受け取って商人の手番を終了しなければなりません(商人トークンは他に何もできない)。また10ドニエを越える所持金があれば、余剰なお金を捨てて10ドニエにしなければなりません。なお、メッセンジャーにはこれらの制限はありません。

◆メッセンジャーのアクション
メッセンジャーは、都市や自分の建物からメッセージ(手紙?)を受け取って、それを指定された村へ配達することで、主に勝利点を獲得します。メッセージには「レベル」があり、レベル1メッセージの目的地はひとつの村だけです。レベル2メッセージは2つの、レベル2メッセージは3つの村が配達先となり、また特定のキャラクター(後述)を雇用していなければなりません。

レベル1メッセージは獲得できる勝利点が少ない代わりに、わずかに現金収入が得られます(レベル2以上のメッセージは勝利点のみ)。

更に特別なメッセージとして修道院メッセージ(レベル4)があります。これは自分の修道院からのみ購入可能な価値の高いメッセージです。配達先は村ではなく、いずれかの都市(ナントかオーリアン)のみになっています。

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◆特殊効果
「サーカス」がある村ではキャラクターを雇用することができます。これは商人でもメッセンジャーでも可能なアクションです。キャラクターは特殊効果を持ち、その効果はゲーム終了時まで維持されます。

また都市では「宮殿」と総称されている建物が4種類あって、これを商人が購入することで、メッセージ関連で大きな効能を持つ特殊効果が得られます。また「宮殿」は、商人が勝利勝利点を得ることのできる数少ない要素のひとつでもあります。

◆ルールの問題点
残念ながらこのゲームには、幾つかの問題点があることを書かなければなりません。

まずルールブックにはエラッタがあります。面倒なことに、英語とドイツ語のルールブックには、それぞれ別の誤りがあります。
ソース:http://www.boardgamegeek.com/thread/924618/erratas-corrections

  1. 「サーカス」の村で行う商人アクションでは、商品を1ドニエ安く購入するか、キャラクターを雇用するか、そのどちらかだけを行えます。これら2つのアクションをひとつの手番で両方とも行うことはできません(英文ルールのエラッタ)。
  2. 都市(ナントかオーリアン)で行う3つの商人アクション(商品売却・建物建設・ロワール川の勝利点購入)は、ひとつの手番で、それぞれのアクションを任意の順で1回ずつ行えます(ドイツ語ルールのエラッタ)。

また、ゲームボードにエラッタがあるのでは? という情報も見つけました。しかしこれは公式なエラッタとして扱われていませんし、ソース元では伝聞情報としてボードには誤りはないという話になっています。したがって今のところは、現状のままでも構わないと思います(ま、確かに麦畑のような背景にチーズのシンボルってのはヘンテコな気がしますけれども)。
ソース:http://boardgamegeek.com/thread/898961/mistake-on-game-board

もうひとつ。キャラクターカードの「女官(Lady in Waiting)」の効果についてです。「女官」の特殊効果で、2人目のキャラクターを雇用するときに支払う追加コストは、カード上では「+1ドニエ(1の数字が書かれたコイン)」になっています。しかし英文ルールの特殊効果一覧表では「+2ドニエ」となっています。一方で、ドイツ語ルールでは「+1ドニエ」です。この件について、僕はBGGで情報を見つけられませんでした。とりあえず、カード表記を優先して「+1ドニエ」でいいかと思います。なお、ゲームストア・バネスト訳では、そのようなエラッタ対応になっていました。
ソース:http://banesto.shop6.makeshop.jp/board/board.html?code=banesto_board1 「エラッタ情報」番号53の書き込み

※注意:これらのソース(典拠)へのリンクはすべて上記に記載しています。まずはそれらをご自分で確認し、理解するようにしてください。このブログの記事を鵜呑みにしてはいけません。

◆アートワークの問題点
各プレイヤーの2つのトークンが、どこにいてどちらの方向へ向かっているのか、フリーの馬トークンがどこに幾つあるのか、そういった基本的な情報が一目でとてもわかりにくく、ゲームボードの機能性が低いように思えました。馬トークンをスタックして移動するルールは、アイデアとしては良くても、現在の方法ではプレイアビリティが決して良くはありません。アイデアの実装として、他にもっと良い方法はなかったのでしょうか ?

「ロワール川」は、異なる機能を持つ2つのトークン(商人とメッセンジャー)を使ったピック&デリバリーです。その根幹となるトークン移動をこのような煩わしいギミックにしてしまったのはどうしたことでしょうか。見た目を美しくしたかったのは理解できるにしても、それで遊びづらくなってしまったのであれば本末転倒です。

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◆戦略 (初回プレイ後に僕が考えたこと)
キャラクターの特殊効果を獲得することは、ロワール川で勝利するためには必須要素です。また複数のキャラクターを組み合わせて相乗効果を生み出すこともまた重要です。これまで説明してきたように、「ロワール川」には移動やアクションに多くの制約が課せられており、それを少しずつ解除する機能として設定されている特殊効果が多くあるためです。

ですから、キャラクターを雇用する「サーカス」の位置には気を遣いましょう。ルールによってサーカスは何度も移動します。自分の思い通りに移動先をコントロールすることは困難でも、現在の村から移動してしまうだろうということを予測することは可能です。またキャラクターの中には、サーカスに止まりやすくしたり、移動を基本ルールより柔軟に対応可能にしたりする特殊効果を持つものがありますので、その雇用も考えましょう。

また「ロワール川」は、商人で勝利点の機会と効率を増加させ、メッセンジャーでそれを回収するような構造になっているように思えました。商人は、勝利点を直接獲得する手段が少なく、できたとしても効率が悪くなっています(都市に宮殿を作っても4ドニエで2勝利点のみ、ロワール川の勝利点購入も6ドニエか10ドニエ必要)。農場・城・修道院建設で直接勝利点を獲得できないのも、そういう方針でデザインされているためと思われます。

メッセンジャーが配達するメッセージは、レベル1よりもレベル2や3の方が実は早く行えますので、勝利点だけに着目すると、設定数値以上に得点効率が高いです。各プレイヤーの配達可能なメッセージ数は、ゲーム終了条件と絡んで上限があります(4人プレイ時は誰かが8通配達すると終了フラグ)から、低い点数のメッセージを多く運ぶのは、ゲームを早く終わらせたいという意図がない限り、さほど良い作戦とはいえないのではないでしょうか。現金収入を伴うメリットがあるとはいえ、出来れば早めにレベル1メッセージの配達を切り上げて、必要なキャラクターを雇用(徒弟と助っ人)し、いち早くレベル2以上のメッセージ配達を目指す方が効率的だと思いました。

◆セッション
このセッションで勝利したすいせいさんは、実に興味深い作戦を採用していました。ほとんどのキャラクターは雇用すると1勝利点が得られます。しかしキャラクターの購入コストは1〜10ドニエまで様々です。そこですいせいさんは、コスト1ドニエの安価なキャラクターを、サーカスに止まるなど機会があるごとに次々と雇用したのです。特殊効果の活用を目的とした雇用ではありますが、1手番1ドニエで1点が得られるという、コストパフォーマンスが高いという貴重な副産物が結果として付いてくることになりました。

最後に決め手になったのは、配達済みのメッセージの勝利点を上昇させる青キャラクター(購入コスト10ドニエ)でした。すいせいさんはこれを最終手番で雇用し、それまでトップを独走していたプレイヤーをわずかに差しきって逆転勝利を収めたのでした。キャラクターの雇用は1手番で1人しか行えないので効率よく行うのは大変に難しいのですが、すいせいさんは他のキャラクターの特殊効果を活用するなどして、その高いハードルを乗り越えた末につかみ取った勝利だったわけで、本当にお見事でした。


「ロワール川」は、勝利するための道筋が幾つもあり、それを考えている時間はとても楽しかったです。適度な歯ごたえがあって、アイデアだけならユーロスタイルのゲーマーズゲームとしては及第点の作品でしょう。それだけに、エラッタやプレイアビリティの悪さをとても残念に思いました(どうも最近こんなことばかり書いてる気がしないでもありません)。

事前の情報収集が不完全だったため、今回はすべてのエラッタが適用できなかったこともあり、もし次の機会があれば、ぜひとも正確なルールでプレイしたいと思っています。ということで、再戦熱烈希望です。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/130008/la-loire

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