倉庫整理で見つけた懐かしい本の第3弾。

ジェームス・F・ダニガン著「ウォーゲーム ハンドブック」(ホビージャパン)
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1982年刊。著者のジェームス・F・ダニガンは、本場アメリカで、ヒストリカルシミュレーションゲームの勃興期に忽然と現れた巨人とも言うべき天才です。氏がデザインした無数のゲームは、そのまま70年代以降から現在に至るまで、シミュレーションゲームの歴史そのものであると言っていいでしょう。

本書は、日本でシミュレーションゲームの紹介と普及を目指して、ダニガン氏の「THE COMPLETE WARGAMES HANDBOOK」を翻訳本としてホビージャパン社から出版されました。

この本を今読むと、さすがにかなりの部分で賞味期限切れの内容が多いです。これは先日紹介した「ボード・ゲーム」の内容に今でも通用する部分が多いことと対照的で、大変に興味深いところではあります。

この本が出版された当時、僕は近所にある公民館を利用してシミュレーションゲーム専門のサークルを主催していました。そこのメンバーはこの本にまったく興味を示さず、かと言って購入した僕自身もあまり真剣に読み込みませんでしたmoon Gamer

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シミュレーションゲームの包括的・概念的な小難しい解説を読むよりも、ゲーム専門誌に掲載されていた新作情報や戦術記事を読んだり、何よりもみんなゲームをすること自体の方がずっとずっと楽しかったからです。一言で言えば若かったということでしょうか。

ついでに言うなら、シミュレーションゲーム業界全体がまだ若さに満ちあふれていた時期でもありました。いくつもの会社からたくさんのシミュレーションゲームが出版・輸入されて、ホビーショップやおもちゃ屋の棚には、高価なゲームが誇らしげに並んでいました。1ドル=250円くらいの時代でしたから、輸入ゲームは高価にならざるを得なかったのです。

複数あったゲーム専門誌では、制作サイドによる議論とも口げんかとも区別が付かないような喧噪が常に起こっていました。誰もがこんな状態で良いわけがないと感じていながら、それをうまく収束させる手段などあるはずもなく、専門誌が煽ったブームの後押しもあって、熱病にかかったかのようにみんなゲームをプレイしまくっていました。

この本が出版された頃と前後して、ダニガンが所属するSPI社は突如として倒産します。ショッキングなニュースではありましたが、まだ熱狂の渦の中にあった日本では、専門誌が上手く情報統制したおかげで、それほど影響は無かったように記憶しています(インターネットもパソコン通信も無い時代でしたから)。

しかしそれからゆっくりと確実に、シミュレーションゲーム界は冬の時代へと向かうことになるのです。

※90年代初頭に、このホビーが奇跡的な復興を遂げるお話はまたいつかmoon Gamer