The Patrons of Venice (ヴェニスのパトロン/ベニスのパトロン) は、ルネッサンス期のヴェニスの商人となって、交易を行って富を築くゲームです。
発売は Toccata Games というカナダにある新興のメーカーです。コンポーネントはちょっとチープ(素材に値札が付いていたりする)ですが、ゲームそのものはしっかりと作り込まれています。
「マップボード」です。ヴェニスの街を模しています。
ボードの左端には「Market (市場)」があり、右端には「Pirate Wharf (海賊の波止場)」があります。商品カードの取引に使います。
街の中で使うのは四角いエリアのみです。河や道は装飾です。
エリアには、緑色の「中央市場 (Campo)」が7カ所あり、その周囲にオレンジ色のエリアがあります。 各エリアがどのエリアと隣接しているかは、ゲームで重要な意味を持ちます。
「Goods Card (商品カード)」です。
イラスト・商品名・売買価格が書かれています。
右下のカードは「海賊カード」。運が悪いと、海賊に商品カードを略奪されることがあるのです。
「Business Tile (ビジネスタイル)」と「Statue Tile (彫像タイル)」です。
いずれもマップボード上のエリアに配置されるタイルです。ビジネスタイルと商品カードを組み合わせることによって、「Manufactured Goods (工業製品)」や「Luxury Goods (高級製品)」を生産することが可能となります。
彫像タイルは、さまざまなボーナスをもたらす特別なタイルです。
どの商品カードを何をどのように組み合わせると何を生産することが出来るかは「プレイヤーボード」にまとめられています。
プレイヤーボードの上部には、矢印の書かれた3つの船(ボックス)があります。商品カードは、この右端の船から順次運搬され、左端のボックスに運ばれてヴェニスに到着します。
これは商品カードとビジネスタイルを組み合わせて生産される特別なカードです。
右の2つは工業製品である「Cloth」と「Canvas」の製品カードです。
左端は「Favour Cards (愛顧カード)」です。高級製品を生産するとこのカードがもらえます。愛顧カードは勝利得点源(1枚につき1点)でもあります。
そしてプレイヤーマーカーとお金。
各プレイヤーはプレイヤーボードを1枚ずつ受け取ります。その「船」の3つのボックスに商品カードをランダムに1枚ずつ(計3枚)置きます。さらに手札として商品カードを1枚ずつ受け取ります。また、ゲームボードの「マーケット」に2枚の商品カードを置きます。
各プレイヤーに金10ずつを配り、ゲームボードの脇にコマやカードを配置したらゲームスタートです。
自分の手番では5種類のアクションのうち1つを選択します。そして、選択したそのアクションを全プレイヤーが行います。
以下、各アクションについて簡単に説明してみましょう。
1.予約 / Reserve [ 船上の商品を予約する ]
プレイヤーボード上の任意の商品カード1枚について、自分のプレイヤーカウンターを置くことで「予約」を行うことが出来ます。このアクションは手番プレイヤーから順次1回ずつ行います。
「予約」された商品カードは、他のプレイヤーに予約されることはありません。また、「海賊」(後述)に略奪されることもなくなります。つまり、確実に自分の荷物として受け取ることが保証されます。
自分のプレイヤーボード上の商品カードを予約するには金1を銀行に支払います。他人のプレイヤーボード上の商品カードを予約することも可能で、その場合はそのプレイヤーに金2を支払います。
他人の船上にある商品カードを予約した場合、その商品カードは後で予約したプレイヤーがいずれ獲得することになります。
2.出航 / Sail [ 船がヴェニスに入港する ]
プレイヤーボード上の3つの船のうち、最も左側にある商品カードがヴェニスに入港します。このアクションが選択された場合、4つのステップが発生し、それを順次処理します。
a.商品カード公開ステップ
商品カードの山から、プレイヤーの数だけ新たに商品カードを引いて、それらを全て公開します。
これは、新たに船へ積まれる商品カードの候補になります。
b.海賊ステップ
もし、上記a.のステップで「海賊カード」がオープンされた場合は、ヴェニスに到着した商品カード(プレイヤーボード上の船の中で、最も左側にある商品カード)は海賊に略奪されてしまいます。略奪された商品カードは、マップボードの「海賊の波止場」に置きます。
ただし、「予約」されている商品カードは略奪の対象になりません。この処理を行った後、商品カードをプレイヤー数だけ場に公開するよう調整します。
c.荷降ろしステップ
ヴェニスに到着した商品カードの荷降ろしを行います。降ろした商品カードが予約されていれば、誰のプレイヤーボード上であったとしても、その商品カードはマーカーを置いたプレイヤーのものになります。そうでなければ、プレイヤーボードの所有者が商品カードを受け取ります。
受け取った商品カードは、直ちに「マーケット」に売却するか、あるいは手札に入れることのどちらかを行います。
d.船積みステップ
各自のプレイヤーボード上の商品カードを右となりに移動させます。そして空いた最も左側の船に、上記a.のステップで公開されている商品カードから1枚だけ選んで獲得します。
これは手番プレイヤーから行います。最終的に、公開された商品カードは船に積まれることになります。
3.交易 / Trade [ 商品を市場で取引する ]
このアクションでは、手札の商品カードを「マーケット」に売却したり、あるいは購入することが出来ます。まず手番プレイヤーから順番に「売却」を行って、それが終了してから今度は「購入」をやはり順番に行います。
売却した商品カードは、マップボード上の「Market (マーケット)」に置きます(ただし例外もあり/詳細略)。
購入は、マーケット上に置かれている商品カードを額面価格で購入することが出来るのですが、面白いことに「海賊の波止場」に置かれている商品カードも購入することが出来るのです。
これは「出航」アクション時に海賊に略奪された商品なのですが、それが売りに出されているわけです。しかも購入価格は額面価格にかかわらず「金1」で済みます。へんなところで良心的な海賊さんですね
4.出資 / Sponsor [ ビジネスか彫像に出資する ]
マップボード上のヴェニスの街に「ビジネスタイル」か「彫像タイル」を配置します。これは手番プレイヤーから順番に「ビジネスタイル」か「彫像タイル」のどちらかを配置するアクションを行います。
「ビジネスタイル」は、生産(後述)に必要な施設で、ビジネスタイルごとに生産される「製品」が決まっています。ある種類のビジネスタイルをヴェニスに配置する際には、対応した「製品」の生産に必要な「商品カード」を手札に所有していなければなりません。
写真の例では、「Draper (呉服商 / Cloth を生産するビジネスタイル)」に対して出資するために、Cloth 生産に必要な「羊」カードを公開しています。
配置しようとするビジネスタイルをすでに所有していれば、この手続きは必要ありません。いずれにせよ、タイルを配置する際には、タイルに書かれたコストを支払う必要があります。配置したタイルの上には、自分のプレイヤーマーカーを置きます。
ビジネスに出資する代わりに「彫刻」に出資することも出来ます。これは「Campo」と呼ばれる緑色のエリアに彫刻タイルを置くアクションです。最初の彫刻タイルは金3で済みますが、2個目以降の彫刻タイルを置く場合にはさらに余分なコストがかかります。
彫刻タイルには所有権がなく、配置された Campo に所属する全てのビジネスタイルに、さまざまな利益をもたらします。
5.生産 / Produce [ 製品を生産する ]
「Manufactured Goods (工業製品)」や「Luxury Goods (高級製品)」を生産することが出来ます。
生産するためには、必要な商品カードと、対応するビジネスタイルを所有していなければなりません(これはプレイヤーボード上にまとめられています)。
Cloth や Canvas の「工業製品」には対応するカードがありますが、「高級製品」を生産した場合は、それが何であっても「Favour Cards (愛顧カード)」を受け取ります。これは勝利得点+1の価値があります。
生産を行うと収入が得られることがあります。
基本的な収入の他に、生産を行ったビジネスタイルが所属する Campo の状況によって、さらにボーナスの利益を得ることがあります。
基本的にはこれを繰り返します。
ゲームの目的は「勝利得点を10点(3~4人プレイ時は12点)」取ることです。所有するビジネスタイルは1つにつき1点(ただし彫刻タイルに隣接していると2点)で、高級製品を生産してもらえる「愛顧カード」1枚につき1点として計算します。
基本的なメカニクスは、あちこちの著名なゲームを参考にしていることは一目瞭然なのですが、それをマイルドにアレンジして、別の新しい面白さを作り出すことに成功しています。
箱にはプレイ時間が「2時間」と書かれていますが、中盤過ぎは思ったより早く一気に収束しますので、もっと早く終わるかと思います。そういう意味で、実は意外と「鋭い」ゲームではないでしょうか。
勝ちパターンはいくつもあって、どれも有力な筋のようです。まだ1回しかプレイ出来ていませんが、もっと深く研究したいと思わせるような素晴らしい作品だと思いますね。
= DATA =
◆タイトル :The Patrons of Venice (ヴェニスのパトロン)
◆デザイナー:Ken Stevens
◆メーカー :Toccata Games
◆3-5人/10歳以上/120分程度
◆参考サイト:
http://www.toccatagames.com/index.html(メーカーサイト)
http://www.boardgamegeek.com/game/12189
http://www.geocities.jp/atog2_435/
※「ゲームインデックス」→「Patrons of Venice,The」でたくさんのレポートが読めます。
※「ダウンロード(ゲーム翻訳)」でルール和訳が公開されています。
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