5日(土)は、千歳烏山ゲーム倉庫にて「Indonesia (インドネシア) / Splotter Spellen」をプレイするゲーム会、題して「インドネシア会」を開きました。参加者は、かゆかゆさん・PHYさん・つん坊さん、それに僕の4人です。どうでもいいですが、「インドネシア会」と書くとエスニック料理を食べたり民族舞踊でも踊りそうな会みたいですけど、もちろんゲーム会です。
「インドネシア」をプレイするにあたってルールの翻訳作業を行ったのですけれども、実はこれが案外と手間取りました。文章量は7P弱ほどなのでルールブック全文を読み通すのにはそれほど時間はかからなかったのですが、細かい処理や用語についての説明が不足している上に、誤植がところどころにあったためです。
結局1人で作業するのは諦めて、このゲームを所有しているかゆかゆさんにヘルプを依頼し、2人で個別に独自訳を仕上げてそれを交換しつつルールを確認し合い、さらに BoardGameGeek で情報を拾うという作業を経て、やっとルールの全容をほぼつかむことが出来ました。せっかくなので、写真のように気合いを入れたルールの和訳を作ってみましたよ。
※ルール和訳は pgdb に登録しました。こちらからどうぞ。PDF形式です。
2011/12/29補足:一部の方には配布していますが、現時点では非公開状態です。細かな点を修正して、第二版ルールに対応した和訳を後日何らかの形で公開する予定です。気長にお待ちいただければありがたいです。
Indonesia (インドネシア) / Splotter Spellen
このゲームは5人までプレイ可能ですが、念のため今回は4人に抑えてプレイに臨みました。
Splotter の最新作「Indonesia」です(といっても発売は昨年秋ですけれども)。インドネシアを舞台にビジネスを展開し、一財産を築くことを目指す経済&開発ゲームです。
このゲームで財産を増やすに基本的な要素は「会社(Cpmpany)」です。会社には、陸上で商品を生産する「製造会社(Puroduction Company)」と、それを運送する「海運会社(Shipping Company)」の2種類があります。製造会社で生産された商品を海運会社の船舶を使って「都市」へ運ぶと売却益を得る、というスキームが「インドネシア」における経済の基本構造です。
商品を売却するのは製造会社ですが、製造会社に運送能力はなく、商品は海運会社の船舶を使わなければ都市に運び込むことは出来ません(陸上運送は不可)。船舶を使うには使用料が必要です。商品を輸送する製造会社の所有者は、使用する船舶を持つ海運会社の所有者に使用料を支払います。つまり、製造会社と海運会社は所有者が異なっていれば、売却益の一部は海運会社に流れることになります。これも「インドネシア」におけるもうひとつの経済の姿となります。
ゲームは大きく3つの時代(Era)に分かれます。一定の条件下で新しい時代(New Era Phase)に進むと、新しい都市の勃興と新時代にふさわしい会社の設立準備が整います。競りによってプレイ順を決定(Bid for Turn Order Phase)した後、このゲームで最も特徴的な合併(Merger Phase)が行われます。「合併」とは、原則として同業種の2つの会社をひとつにまとめようとすることです。これについて詳細は後述しましょう。
ここで各プレイヤーは会社を設立(Acquisition Phase)することが出来ます。会社設立には資金を必要とはしませんが、研究開発(R&D)値の「スロット」を越えて会社を所有することは出来ません。ゲーム開始時に「スロット」は「1」なので、各プレイヤーは1社ずつしか持つことは出来ないということです。
製造会社は商品を生産する機能を持ちます。どの会社がどの商品を生産するかは、その会社の「企業権利書」に書かれています。まず、会社が設立した場所(エリア)に生産する商品マーカーが配置されます。一方、海運会社は商品を輸送する機能を持ちます。海運会社が設立されると、1隻の船舶が海域に配置されます。
その後で研究開発(R&D)段階を上昇(Research & Development Phase)させます。任意の1つの要素を1段階だけ上昇させることが可能です。この「研究開発(R&D)」には「スロット(会社所有数を規定する)」「拡張(会社を規模を拡大する数を規定する)」「合併(合併宣言対象の会社規模を規定する)」「「輸送量(船舶で輸送可能な商品の個数を規定する)」「ターンオーダー(プレイ順を決める競りで有利になる)」があります。
そしていよいよ会社を運営(Oparation Phase)する段階に入ります。製造会社は生産した商品を出来るだけ多く都市に運び込まなければなりません。ただし、各船舶は1隻ごとに商品を輸送可能な個数が決まっています。つまり、海運会社の所有者のR&Dである「輸送量」をまでしか商品を運べないのです。
また、都市にも商品を受け入れる限界数がありますので、それ以上は売却することが出来ません。それでも製造会社の商品売却は義務なので、近場の都市に売却不可となったとしても、遠くの都市に売却可能であれば、高い運送料を支払って赤字になったとしても売却しなければなりません。なお、商品の価格は種類ことに固定です。
全ての会社の運営が終了したら、都市が発展(City Growth Phase)する可能性があります。一定の条件下において都市は「サイズ」が上昇し、商品を受け入れる個数が増加します。サイズの大きな都市へは、より多くの商品を売却することが出来るようになります。
さて、このゲームの華である「合併」についてです。設立当初、全ての会社は1枚の「企業権利書」から構成されています。権利書が1枚ずつの2社が合併すると2枚の権利書を持つ1つの会社が誕生します。これを繰り返すとさらに権利書の枚数の多い会社が発生することもあります(ゲーム的には最大5枚)。これがまず基本。
合併を宣言する際にはR&Dの「合併」値が、合併対象となる権利書の枚数と同じがそれ以上でなければなりません。ゲーム開始時にはR&Dの合併値は「1」なので、そもそも合併を行うことが出来ません(2つの会社が合併すれば権利書は2枚以上になるからです)。これが「2」になって初めて合併の宣言を行うことが可能となります。
合併は競りによって行われます。合併が宣言された会社のそれぞれの所有者か、空いているスロットのあるプレイヤーがこの競りに参加出来ます。そして最も高い金額をつけたプレイヤーが落札します。
この落札金は、合併する会社の所有者に分配されます。これは、合併前の会社が持っていた商品マーカー(または船舶マーカー)の数に応じて配分されます。例えば、スパイスを6個持つ会社Aと4個持つ会社Bが合併され、落札金額は300だったとしましょう。そうすると、会社Aの所有者には180、会社Bの所有者には120が落札金から支払われるということです。
合併で面白いのは、会社の所有者でなくても合併の宣言は可能だということです。自分とはまるで無関係な会社の合併を宣言してもまったく構いません(ただし、落札した場合に支払う分配金が高くなります)。自分の所有する2つの会社を合併宣言することも可能ですが、空きスロットのある他のプレイヤーが競りに介入してくるかもしれません。
「インドネシア」は優れた経済ゲームです。メカニクスはやや複雑で、相互にリンクしたゲーム的な力学をすっきりと説明するのが難しいタイプのゲーム(インストのハードルが高い)なのですが、それを乗り越えて遊んだ先の世界は別天地であり、フリークたちにとってチャレンジしがいのあるエレガントで美しい作品です。
よくあるドイツゲームのように資金がカツカツということはなく、ゲームを通してそれなりに余裕があります。ぼんやりプレイしていたとしても、そこそこの利益を上げるのは難しくはありません。しかし与えられている機会はそんなには多くはないのです。ということは、好機を逃さずに効率的に利益を叩き出すにはどうしたらいいかを考えるゲームだということです。そしてその方針はゲーム中に多く用意されており、いずれもテクニカルで創造的な戦術を生み出のに十分な素地にあふれています。
特に「合併」は、荒々しく厳しい意志決定をプレイヤーに迫ることになるでしょう。この場面での相場観や立ち振る舞い方は、1回プレイ済みの僕でも完全にはほど遠いレベルでしか理解していません。このゲームの勘所がどこにあるかと問われれば、それは間違いなく「合併」であり、プレイ研究の中心もこの部分に集中することになるでしょう。
では「インドネシア」に全く問題がないかといえばそんなこともないというのが、このゲームを紹介する身としてはとても残念な話です。まず、冒頭にも書いたように、ルールは説明不足です。それを何とか乗り越えたとしても、コンポーネントが今ひとつ使いづらいのは何とかならなかったのでしょうか。ゲームボードやコマの配色が、デザイン的には美しいものの、識別しずらくて機能的はありません。エリアの大きさとコマの大きさもアンバランスで扱いづらく、総じてプレイアビリティは低めと言わざるを得ません。
システム面でも、びっくりするような斬新さはなく、それどころか細やかさに欠ける面すらあります。ただ、それがデザイナー陣が苦労して調整した結果であるのなら、個人的にはそれを受け入れることはやぶさかではありません。
今回のセッションでは、僕を除いた3人が海運会社と製造会社の両方を運営し、輸送量を支払わないで効率的に商品を都市へ供給する方針を採ったのに対し、僕だけは製造会社だけで経営を回す作戦に出ました。儲けの何割かは輸送料に消えてしまいますが、構わず商品を大量生産した売却益を荒稼ぎする方針としました。もちろん、R&Dは「拡張」をいち早く選択します(商品がより多く生産可能となる)。
ちなみに、製造会社の景気が良くなると、その恩恵に与ろうと周囲の海には海運会社の船がわらわらと集まってきます。このあたりは実際の経済活動そのものの自然な展開で、見ていても面白いです。
序盤の終わり頃には全員がコツを飲み込みはじめ、資金的にも余裕が出てきたこともあって合併が頻繁に行われるようになっていきました。合併がゲームに与える影響は大きく、単に会社のオーナーが変わったというだけではなく、盤上の状況も自分の置かれている立場もがらりと変わるのです。
仮に合併によって会社を失ったとしても、実はそんなに痛手ではありません。それが大きな会社であれば分配金も大きくなり、その価値で会社を売り抜けたという意味になります。さらにスロットに空きが出来るので新しい会社を設立することも、新たな合併を仕掛けることも出来るようになります。
このように「インドネシア」の合併には、単に敵対的買収を目的にしているというだけではなく、運営の効率化や新たな海運ルートの開拓、そしてゲーム進行に関わる駆け引き等々、実に多様で意味合いを持っており、それがこのゲームの味わいをより一層深いものにしていると言えます。ですから、的確なタイミングで自分の目的に応じた合併パターンをよく考えて決断しなければなりません。
今回のインストは1時間ほど(お疲れさまでした>かゆかゆさん)、実質的なプレイ時間は4時間ほどに及びましたが、間延びした感覚はまるで無く、とても密度の濃い時間を過ごすことが出来ました。慣れればもっと短い時間でプレイすることも可能でしょう。これだけ入り組んだ内容を持つ開発系のゲームが3~4時間できちんと収束するというのは、ある意味驚きでもあります。
そして同卓の厳しい目を持ったメンバーにも好評でなりより。もはや再戦は必然で、しばらく僕は「インドネシア」の伝道師となってあちこち回るとしましょうか。
http://www.boardgamegeek.com/game/19777
Oraklos (オラクロス) / Splotter Spellen
もうひとつのスプロッター。アクションゲームの一種です。自分の前に並べられたカードの配列を、机に上にばらまかれたキューブから探し出すゲームです。
配列を構成する条件がやや厳しめで、僕にはちょっと難しかったです。意外と駆け引きの要素があったりしますので、コミュニケーションゲームの一種として考えれば楽しめるかも。
http://ejf.cside.ne.jp/review/oraklos.html
Trump, Tricks, Game! (トランプトリックスゲーム) / Phalanx Games
4回目。すいません、今までルール間違っていました。ルールブックを隅までちゃんと見直して、今度こそちゃんとしたルールでやったと思います。
今回はマストフォロー時に手札にスートが1枚だけなら一時的に拒否可能な上級ルールのみを使用しました(押しつけルールが絶不評だったので)。ゲームの方は、前回のSGCで勝ったプレイヤーのプレイを参考に「4ゲーム目重視」の方針を立てて勝ちました。これは使えるかも。
http://ejf.cside.ne.jp/review/trumptricksgame.html
Deflexion / (Self Published)
かゆかゆさんが持参。レーザービームで相手のファラオを打ち抜きます。2人用のアブストラクトゲームです。
チェスのようなボード上にコマがありますが、これには片面か両面にミラー(鏡)がついているものがあります。自分の任意のコマをタテ・ヨコ・ナナメのいずれかの方向に1マス移動させるか、あるいは90度の方向転回をしたら、自陣のボタンを押してレーザー光線を発射します。
「レーザー光線」は比喩ではなく、本当に発光する装置がボードに付いています。もちろんレーザー光線はコマの鏡に当たれば反射しますし、反射した先が鏡ならさらに連鎖して反射します。これは面白いギミックです。
もし、レーザー光線がコマに当たり、当たった場所がコマの鏡の面でなければ、そのコマは除去されます(それが自分のコマであっても)。もし除去したコマが相手のファラオであれば、あなたの勝利となります。他にも特殊な機能を持ったコマがあったりしますが。基本的なルールはほとんどこれだけです。
1ゲームしかプレイしていませんが、派手派手しい見た目以上に硬派な思考ゲームではないでしょうか。なかなか面白いので僕はとても気に入りました。ただ、レーザーボタンを押しても何の音もしないので、演出的にはちょっと寂しいかな。そういうゲームじゃない?
http://www.boardgamegeek.com/game/16991
Vegas Showdown / Avalon Hill (Hasbro)
リクエストが入ったのでエントリー。僕の他は全員が初プレイです。僕は何回目だろう… さすがにちょっと飽きてきたかも。
過不足無くまとめ上げられたメカニクスは優等生的にキレイですけれども、あまり刺激もないからか、同卓メンツには可もなく不可もなしみたいな評価でした。
http://www.boardgamegeek.com/game/15364
Slipe (スライプ) / Calm
ヤフオクで700円(送料込)。2人用アブストラクトゲーム。かゆかゆさん持ち込み。コマはモザイクタイルですね。
コマには2種類あって、ひとつだけ色の違うのが「メインピース」、他は「サブピース」です。ゲームの目的は、真ん中にある「センター」マスに自分のメインピースを移動させることです。自分の手番では自分のコマを1個だけ移動させることが出来ます。コマは、タテかヨコに、他のコマに当たる直前のマスまで直線的に移動させなければなりません(途中のマスで止まれない)。サブピースは、センターマスを通過することが出来ますが、そこで停止は出来ません。
ちょっとだけ時間が空いたので、かゆかゆさんと対戦してみたんですが… やり方がまずいのかゲームがダメなのかわかりませんが、どちらかがミスをしなければ延々と続いていくような気が。しばらくやってみましたが、一向に終わる気配がないので中断しました。うーむ。
http://calm.peewee.jp/
レポートは以上です。
とにかく今日は「Indonesia」に尽きます。ゲーム会に至るまでにちょっと苦労したので、これが遊べるゲームだと発見出来ただけでも儲け物です。アフターは「かつくら」にて。ごはん・みそ汁・キャベツがお変わり自由だったので、もりもり食べながらゲーム談義に花が咲きました。
朝から晩まで本当にお疲れさまでした>ご参加の方々
またぜひ遊びましょう。
コメント
コメント一覧 (8)
機会があれば、伝道師moonさんと対戦させて頂きたいものです。
コメント早っw
「インドネシア」は、きっとつなきさんも気に入ってもらえると思いますよ。これでプレイアビリティが良ければ自信を持っておすすめ出来るのですけれども… 何にせよ、ぜひ遊びましょう。
開催のお話を聞き、皆さんがどう評価されるか、とても気になっていました>インドネシア。プレイアビリティについては気になりますが、スプロッターのゲームはそういったものが多いような気もしています。UR1830B.C.しかり、アンティクィティしかり。いずれにしても、次回はぜひ参加させて下さいませ。
『デフレクション』気に入っていただけたようで、よかった。ぜひMixiのデフレクション・コミュにもいらっしゃいな。ではでは!
「インドネシア」はぜひぜひ。調子に乗って第2回インドネシア会でも企画しようかしら。スギ花粉が飛んでなければすぐにでも企画するんだけどなぁ…
「デフレクション」のコミュがあるとはw
さっそく入りましたよ。よろしくお願いいたします。
インドネシア初版を手に入れたのですが、ルールに不安がありもし良ければmoon様の訳をいただくことは出来ますでしょうか?
不躾なお願いですみません。
ご検討頂けますと幸いです。
本作は、BoardGameGeek(BGG)で有志が和訳を公開されています(私の訳ではありません)。これは第二版訳ですが、初版コンポーネントでも問題なかったと思います。
https://www.boardgamegeek.com/filepage/127980/indonesia-japanese-rule
今確認したら、さらに別の方がサマリーを公開していますね。せっかくなのでこちらも活用しましょう。
https://www.boardgamegeek.com/filepage/205746/indonesia-japanese-summary
なお、これらをダウンロードするためには、BGGのアカウントが必須です。BGGアカウントをお持ちでなければ、今後もずっと役に立ちますので、ぜひ登録しておいてください。
活用させていただきます。
ありがとうございます☺️