18日(土)は、西八王子にて開催された「ハンマー・オブ・ザ・スコッツ会」に参加してきました。これは、かつて僕の参加した「ハンニバル会」と同じく taroさんの主催で、参加メンバーもほぼ同じメンツです。
もちろんハンニバル会と同じく、公民館の会議室を終日借り切って「ハンマー・オブ・ザ・スコッツ」だけをひたすらプレイするという単一タイトル限定のゲーム会です。参加者はトータルで9人で、最大3卓が同時に立っていました。
「Hammer of the Scots (ハンマー・オブ・ザ・スコッツ) 」は、13世紀末のスコットランド独立戦争がテーマのシンプルなシミュレーションゲームです。一見馴染みがなさそうなテーマですが、この古い戦いを背景にした映画「ブレイブハート」はご存じの方も多いでしょう。この映画は1995年に公開され人気を博し、アカデミー賞5部門を受賞した名作です。この映画の主人公ウィリアム・ウォレスは実在の人物で、「ハンマー・オブ・ザ・スコッツ」でも重要なユニットとして登場します。
このゲームは「スコットランド」と「イングランド」の双方に分かれて2人でプレイします。特徴的なのは部隊を表すユニットが木製の「ブロック」になっているというという点です。シミュレーションゲームの世界ではよくこれを「積木システム(積木ユニット)」などと言われることが多いのですが、まずはこれについてざっと説明してみましょう。
積木の部隊は右図のように立てて使用します。通常は、そのコマの片面にだけ部隊の情報が記載されており、所有者の側にだけそれが見えるように配置します。相手はコマの裏(普通は無地)しか見えず、戦闘になって初めて相手の部隊の情報が明確になります。
シミュレーションゲーム的には、戦場の霧(相手側の戦力把握が実際に戦ってみるまでは困難であるということ)を表現する手法のひとつである「アントライド・ユニット(戦力未確認ユニット)」の極めてシンプルな実装例です。
この積木システムは、各部隊の戦力が段階的に減少してくようにデザインされるのが普通です。コマの各辺には「戦力」が書かれており、どの辺を上にして置くかによって、そのコマの現在の戦力を表します。例えば、戦闘の結果としてダメージを負えば、そのコマの戦力は減少し、コマを「回転」させてそれを表示するのです。
「ハンマー・オブ・ザ・スコッツ」の発売元のコロンビア・ゲームズは、これを「ブロックゲーム(Block Game)」と呼び、それをほぼ専門に制作している珍しいパブリッシャーです。「ハンマー・オブ・ザ・スコッツ」は、コロンビア・ゲームズのラインナップの中でも屈指の高評価作品となっています。
Hammer of the Scots (ハンマー・オブ・ザ・スコッツ) / Columbia Games
僕が到着したのは午前11時30分過ぎくらい。
事前にルールブックを通読してきましたが、初プレイなので taroさんにインストをお願いしました。これが意外と長い時間がかかって50分間くらいだったでしょうか。「ハンマー・オブ・ザ・スコッツ」はウォーゲーム系としてはシンプルなルールなのですが、スコットランド側とイングランド側で異なる細かい処理がいくつかあって、それをひとつひとつ口頭でていねいに説明していたらうっかり長くなってしまったようです。いや、ほんとにお疲れさまでした>taroさん
ハンマー・オブ・ザ・スコッツのマップボードは、スコットランドの大部分とイングランドの北部が描かれています。ユニットを配置するのは陸上のみで、多数の「エリア」に分割されています。
このゲームではエリア単位で移動・戦闘・補充などの基本的な処理が行われます。各エリアには「城塞」のアイコンと数値によって経済的な価値が示されており、ゲームでは戦力の回復などを行う「補充ポイント」や、ユニットが冬営可能な「スタック制限」(いずれも後述)を意味しています。
14箇所のエリアには貴族の領地であることを示す「紋章」が描かれています。この紋章のあるエリアを制圧したり、あるいは貴族の部隊を戦闘によって全滅させることで、その貴族を自分の陣営に引き込むことが出来ます。そしてこのゲームの目的は、ゲーム終了時までにゲームに登場する全14の貴族のうちより多くの貴族を自分の支配下に置くことにあります。
ゲームはカードを使用することで進行します。ゲームの進行単位は「年(Year)」で、それは各プレイヤーごとに最大で5つのターン(双方で最大10ターン)をプレイします。年の開始時にそれぞれ5枚ずつのカードが配布されるところからゲームは始まります。
カードは「1」~「3」までの数字が書かれた20枚と、特殊なイベントが書かれた5枚とがあります。各ターン開始時に手札から1枚のカードを双方が秘密裏に選択し、それを同時に公開します。この数字の大きい方から手番を行います(同値はイングランド先攻)。ただし、イベントカードがオープンされたら、それから実施します。
自分がプレイした数字カードは、それがこの手番で行動させることの出来るグループの数を表しています。あるエリアに存在する全てのユニット(部隊)はひとつのグループと見なされますので、例えば「2」のカードをプレイしたら、2つの別々のエリアにあるグループを行動させることが出来るということになります。
ユニットには「移動力」が設定されています(ほとんど『2』)。この移動力の数だけエリアを移動することが可能です。ただし、エリアとエリアの境界線には1手番で通過可能なユニットの上限(6ユニットか2ユニット)が決まっていますので、それの数を超えて移動させることは出来ません。
互いにユニットを移動させた結果、同じエリアに敵味方のユニットが存在していれば戦闘となります。ユニットには「A」「B」「C」の3つのランクがあり、まず「A」から戦闘の処理を行います。同じランクのユニットが攻撃・防御に存在した場合は防御側のユニットから戦闘処理を行います。「A」~「C」までのユニットが1回ずつ行うことを「戦闘ラウンド」といいます。
戦闘結果は、1ユニットずつ解決します。そのユニットの「戦力(Strength)」の数だけサイコロを振り、「戦闘力(Combat)」以下の目だけ相手に損害を与えます。損害を受けた側は、ルールにしたがってユニットの「戦力(Strength)」を低下させなければなりません。
もし貴族ユニットが戦闘中に全滅してしまった場合、ただちに最低戦力(1)で敵側に寝返って、次の戦闘ラウンドから寝返った側のユニットとして戦闘に参加します。まるで将棋の駒のようです。
ユニットは戦闘を行う代わりに退却も可能です。いずれにせよ、そのエリアから一方の側のユニットしかいない状態になるか、あるいは3ラウンド終了まで戦闘は継続します。戦闘に勝利した側は、戦闘に参加したユニットを「再編成」して、隣接エリアを含めてユニット配置を調整することが可能です。
これを繰り返し、双方のプレイヤーが5枚のカードを使い切るか、あるいはカードを同時に公開した時にどちらもイベントカードだった場合に「年(Year)」が終了します。ここから「冬営(Wintering)」という補充・再配置・再編成を行います。ここでは多数の処理を行いますが、ポイントになる部分をかいつまんで。
まず貴族のユニットは自分の領土(エリア)に戻ります。その際、そのエリアに敵の軍隊がいた場合は、現在の戦力で敵に寝返ります。勝利条件に絡むこともあり、貴族の領土の支配はとても重要な意味を持っています。
イングランド軍は歩兵と貴族以外のユニットは全て「解散」して本国に戻ります。ようするに盤上からいなくなります。残った歩兵や貴族はエリアに書かれた「城塞」の数値(補充ポイント)を使って戦力の回復を行うことが出来ます。ただし、エリアで冬営可能なユニットの個数は城塞の数値までです。それを超えて残っているユニットは除去しなければなりません(スタック制限)。
ひとつだけ例外があって、イングランド軍はエドワード1世のユニットが盤上にある時にだけ、そのエリアにスタック制限を無視して何個でも残ることが出来ます(エドワード1世のユニットが2年連続の冬営をすることは不可)。
さらにイングランド軍は「徴募」によってイングランド北部エリアに大量に新しいユニットが完全戦力で登場します(ただし、エドワード1世が冬営してれば徴募は出来ません)。1年が終わるたびに、全軍単位で再編成されるのがイングランド軍の特徴です。
これに対してスコットランド軍は、エリアの補充ポイントを利用して新たなユニットを盤上に登場させます。補充ポイントはユニットの戦力回復にも使われますので、そのマネージメントは極めて重要です。新しくユニットを登場させる場合でも、スタック制限は守らなければならないので、最後のターンでうまくユニットを展開しておかないと、思うようにユニットが増えずに苦労することになるでしょう。
こうして、規定のターン終了後に、自分の支配している貴族の多い方が勝利です。同数(双方が7貴族支配)の場合は、ウィリアム・ウォレスのユニットが除去されていればイングランド軍の勝利で、そうでなければスコットランド軍の勝利です(註:勝利条件について付属の日本語ルールが誤っていますのでご注意ください)。
この日、僕は3ゲームを行いました。残念ながら全敗でしたけれども、3戦目の途中までは誤った勝利条件でプレイしていたので、その条件下では2戦目は勝利でした。なので、この結果はあまり気にしないことにします。当日は「ダイスの目が悪い」とぼやきっぱなしでしたけれども、後で振り返ってみると、ダイスの出目をとやかく言う以前の反省点が山のようにあって実に恥ずかしい限り。
このゲームは、特にユニットの移動と冬営でゲーム的なテクニックを駆使することで、保有ユニットのより効率的な拡大再生産を行うことが出来ます。これらのルールを十分に理解して実際に盤上で実現するには、事前の十分な研究を行うとか実戦経験を積み上げるなどの取り組みが必要です。見た目以上に実力の差がつくゲームなのです。
また、スコットランドとイングランドの置かれている立場がルールによって異なっているのが実に面白かったです。目指す目標(勝利条件)は双方で同じであるにも関わらず、それを実現するための戦略や軍の運用方針の根本が大きく違っているのです。この日も僕はスコットランド軍を担当した後にイングランド軍を担当したのですが、まるで別のゲームをプレイしているかのような、一種のカルチャーショックを味わいました。
レポートと簡単なレビューは以上です。
「ハンマー・オブ・ザ・スコッツ」は、この時代の戦いの一端を知ることの出来るエキサイティングな思考ゲームです。同系統の作品と比較しても、ライトでありながら、戦略性とゲーム性のバランスが取れた素晴らしいウォーゲームではないでしょうか。サイコロを使う機会が多いので、ゲームの流れに乱数の影響が少なからず関わってきますが、それが全てではないことはすでに述べた通りです。
研究しがいのある優れたゲームですので、次にこのゲーム会が開かれる時には、しっかり予習してから戦いに臨みたいと思います。参加者のみなさま、本当にお疲れさまでした。またぜひ誘ってください。
http://www.boardgamegeek.com/game/3685
コメント
コメント一覧 (7)
正直、これほどまでのレポートを書いていただいて嬉しい限りです。今回、両陣営を担当されたことで作戦研究のしがいも出てくると思います。
対戦は言ってもらえれば喜んで行いますので是非。
この会は広めるのが目的だったので単発で終えようと思ったのですがリクエストが多いようでしたら次回も検討してみようと思います。
お疲れさまでした。
今回は勝利条件のこともありましたし、僕もゲームに不慣れだったこともあり、レポートを書くことよりもゲームそのものの紹介に重点を置いてエントリーをまとめてみました。
こちらでも対戦者を見つけてまたプレイしてみたいと思います。
本文中にも書きましたが時代背景は「ブレイブハート」そのものです。映画の評価は一般的には良好のようですが、やっぱりヒストリアンには物足りませんでしたかねぇ(汗)。映画はほとんどフィクション仕立てみたいですし。
ちなみに「ワーテルロー」とはちょっと違いますね。スケール的にはこちらがより戦略級って感じでしょうか。
PS、おひさしぶりです。お元気ですか?
お久しぶりです。こちらは元気ですよ。
そちらは相変わらずお忙しいようですね…
このゲームはサンセットゲームズで通販にて販売されています。
http://www.sunsetgames.co.jp/
http://www.sunsetgames.co.jp/list/lists.htm
リストの「コロンビアゲームズ」→「Non Series」中に「ハンマー・オブ・ザ・スコット」があります。
最近、仕事が忙しく土日が休めないので困ってます。
でも、E-bay等のオークションなどでチマチマ買ってます。