SdJ 2006 に「郵便馬車」が輝いたこの日、千歳烏山はゲーム倉庫にて、「1830 - Railroads and Robber Barons / Avalon Hill」と「Age of Steam (蒸気の時代) / Warfrog」の両方を1日中楽しもうというゲーム会を開きました。
この日は朝から雨模様でしたが、朝から晩まで濃密な時間を過ごすことが出来ました。参加者はSGC有志の方々で、YOKさん、atogさん、たまさん、MERCURYさん、それに僕の5人です。
「1830」「蒸気の時代」ともに、長時間かかる重量級の鉄道ゲームであり、同時に、世界中で多くのフリークたちの心を引きつけて止まない逸品でもあります。いずれも「鉄道ゲーム」というカテゴリだけに留まらず、テーブルゲーム全体を通して見ても傑出した歴史的なタイトルであると言っても決して過言ではありません。恐らく、今後も長くプレイされていくことでしょう。
これらの傑作をいっぺんにプレイしようという豪勢かつ荘厳な企画に参加することが出来た幸運に酔いしれた1日でした。
1830 - Railroads and Robber Barons / Avalon Hill
19世紀を舞台にした20世紀の傑作ゲーム。
「1830」は、19世紀の初め頃のアメリカ北東部を舞台にした鉄道ゲームです。当時、アメリカに出現した鉄道産業は、西部開拓や軍需の高まりに比例して、やがてアメリカ金融資本の中枢をも担う超巨大産業へと発展することになります。その歴史の始まりは、小規模でありながら野心的な零細鉄道会社が次々と設立されたことに端を発します。そして、蒸気機関が改良され力強くなっていくと共に、激しい市場競争が繰り広げられました。
「1830」も、この史実と同様に、まず小さな鉄道会社(一部、鉄道馬車も含まれますが)の設立から開始されます。それを礎として、さらに大きな鉄道会社が設立され、やがて盤上は線路タイルで埋め尽くされていきます。しかし成功を収めるには、他の会社、そして他のプレイヤーとの情け無用な競合に何としてでも勝ち抜かなければなりません。
プレイヤーの目的は個人資産を増やすことです。それには鉄道会社の「株券」の運用が極めて重要な意味を持っています。このゲームは、鉄道会社の運営が主眼ではなく、株式ゲームとして考えた方がいいでしょう。
鉄道会社は、線路を敷設し列車を購入して走らせるなどの「運営」することで収益を上げます。それぞれの鉄道会社で「運営」を行う権利は、その鉄道会社の「社長」プレイヤーが持ちます。そして「社長」になるには、その鉄道会社の「株券」を誰よりも最も多く所有していなければなりません。
この間接的とも言える会社所有権の考え方をさらに徹底させているのが「現金」の扱いです。このゲームのお金は、プレイヤー個人が所有する資金と、それぞれの鉄道会社が保有する資金とを厳密に区別して管理します。
個人資産を増やすためには鉄道会社の運営が不可欠であり、鉄道会社の収益を増加させるには、運営によって「路線」を拡大したり、あるいは「列車」を購入するなどの投資が必要です。この鉄道会社の運営に必要な経費は、プレイヤーの個人資産ではなく、会社が保有する資金によって賄われるのです。
他にも「1830」には鉄道ゲームと経営ゲームの面白さを際だたせるためのアイデアが数多く盛り込まれています。実際、ルールの分量はかなり多いのですが、実を言うと基本的なメカニクスは見た目ほど複雑ではありません。しかしプレイングは技巧の極みをプレイヤーに要求します。それは、それぞのれアクションの選択肢が広く、シチュエーションが多岐にわたるためです。
プレイヤーに与えられる機会(手番)は多く、そのたびに困難な状況判断とシビアな決断を迫られることになるでしょう。そのため、平均しても6時間はかかる長時間ゲームでありながら、最初から最後まで緊張した状態が続きます。
ゲームが開始されるとランダムな要素は消失して全てがプレイヤーの行動の結果によってゲームは支配されます。これは、自由度が高いことと相まって、戦略的柔軟性を高く広くしており、「1830」の特筆すべき長所であり大きな魅力となっています。
この日、僕はほぼ10年ぶりに「1830」をプレイしました。久しぶりに遊んだ「1830」は、過去に僕が感じた光をまだ失ってはいませんでした。それどころか、さらにその輝きに磨きがかかっていたような気さえしたのです。かつて、僕が「1830」をプレイした時には、もう少しのんびりしたゲームだっだはずなのですが、失われた10年の間に、あらゆる戦術が研ぎすまされ、洗練されていました。
瞬く間に過ぎ去った序盤にあっけにとられつつ盤上をぐるりと見渡して、やはりこのゲームが、発売以来20年を経てもなお強力な愛好者が多くいることに妙な納得をしたりしていました。同時に、昔の感覚が海馬の奥底からわき上がってくるなつかしさも入り交じり、「1830」が自分にとって特別なゲームであることを今さらながら思い起こしたりもしていました。
さてセッションの方ですが、日本を代表する「1830」プレイヤーである atogさんが終始リードする形で進行しました。途中、いろいろなエピソードがあったのですが長くなるので残念ながら詳細は割愛。
で、なんだかんだとディーゼル列車が走り始めた終盤に突入しまして、状況に大差がついたと全員一致で判定され、見事に atogさんの貫禄勝ちとなりました。プレイ時間は実質5時間ほどで、まさにあっという間に過ぎ去ったような気がします。
今回は大差のついた形になりましたが、いくつかの手筋もプレイ中に思い出しましたし、この次はもう少し手応えのあるところを見せるくらいにはなりたいです。近いうちに再戦することになるでしょう。
http://www.boardgamegeek.com/game/421
Age of Steam (蒸気の時代) / Warfrog
新世紀における鉄道ゲームのあり方のひとつ。
もう何回目のプレイなのかはとうに忘れています。ヘビーローテーションどころの話ではなく、僕にとって「蒸気の時代」は、すでに人生の一部と言い切ってしまえるくらいの存在になっています。
このセッションは、初プレイの方もいらしたので基本マップを採用しました。僕は最近、かなりバランスの厳しい拡張マップをプレイしたばかりということもあり、もしかすると基本マップが今ひとつ緩~く感じてしまうかもしれないな、とか不遜なことを何となく考えていたのですけれども、もちろんそれは杞憂以前の無駄な憂いでした。5人プレイという最適の環境もあったのでしょうが、バランスはほどよくカツカツ状態で、ため息と冷や汗にまみれながら、最後まで深い思索を楽しむことが出来ました。
「蒸気の時代」で最も重要なことは「計画」です。乱数の影響で正確に先の状態を完全に読み切ることは不可能ですが、それでも可能性のいくつかは推測することが出来ます。それらに正確に対応するため、計画はひとつではなく、いくつかの候補を用意するべきでしょう。場は流動的ではありますが、拡散する選択肢は有限なのです。
序盤においては特に、短期的な収支の改善には最新の注意を払う必要があります。しかし、やがて到来する5リンク、6リンクの時代を見据えた長期的展望も十分に見据えておかなければなりません。それは Goods Display 上のキューブを考慮するのは当然として、他のプレイヤーの動向(中でも路線タイルの配置状況/現状と延ばそうとする方向)にも注意を払うべきです。
さてこのセッションですが、開始早々に、僕を除いた4人がマップの東側に集中しました。 僕だけが西側に線路を引いている状態です。普通、このような形は僕にとって歓迎すべきなのですが、そうはうまくいかないもので、商品キューブの配置状態があまり良くなかったのです(マップ上・Goods Display共に)。
このため、3ターンより先にどのような路線配置を目指すべきなのかを僕は序盤から必死に探っていました。西側には僕以外の他に誰もいないので、商品キューブだけは盤上に豊富にあるのですが、4リンク以上で効率的にキューブを運送するルートを作るのはかなり骨が折れそうな状況だったのです。
打開策のひとつとして、僕はアクションで「Engineer(1ターンに路線タイルを4枚配置可能)」を多用してみました。タイルをより多く、そしてより優位な順番で引くために株式発行枚数は多めに行います。路線拡大の回数はゲームを通して決まっていますので、それを少しでも効率的に行うための苦肉の策とも言えます。
「蒸気の時代」の有力な戦略のひとつに、序盤から出来るだけ株の発行を抑えて、資金的に効率的な運営を目指す考え方があります。一時期、この作戦は僕の周囲でかなり流行したのですが、最近になってこれとは全く反対の考え方が表れるようになりました。すなわち、あえて株を大量に発行して、コスト増大のリスクをさらなる収益を増大でカバーするという方針です。
株発行数が多くなると、少なくとも目先の現金は潤沢となりますので、それを利用することで積極的に場を優位に支配しようという考え方です。株発行数を抑える作戦は、どちらかと言えば場の状況に合わせて柔軟に対応するという受動的な方針ですので、その考え方は極めて対称的です。
どちらが優れているということではなく、また状況に応じて作戦を切り替える必要すらありますが、とにかくこの時はこの積極策で攻めてみようと考えました。ゲーム中、かなり右往左往したのですけれども、最終的ににこれは正解だったようで、ゲーム終盤には6リンクで数回の商品キューブを運送する機会を得られるまでになりました。
最後の2ターンには atogさんや MERCURYさんの猛追を受けたのですが、路線数の多さが決め手ともなって(路線数は得点になります)、最後はわずかの差で逃げ切ることに成功し、何とか勝利を収めました。
http://www.boardgamegeek.com/game/4098
レポートは以上です。
朝から夜まで11時間に渡る濃密なゲーム会が終了しました。そして終了すると同時に、また同じ内容のゲーム会がすぐに開かれることも決まりました。 ということで、近日中にまた似たようなレポートがお目見えすることになると思います。
本日はお疲れさまでした>参加者各位
またぜひお付き合いくださいませ。
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