22日(土)は、西八王子にて開かれた「Here I Stand / GMT Games」会に参加してきました。このゲームは先月にもプレイされまして、ゲーム会としては2回目です。前回のレポートとゲームの紹介などはこちらのエントリーをどうぞご覧ください。
参加者は前回と1人だけ入れ替わっていますが、今回もしっかり6人揃いました。まずはお部屋を提供していただいた taroさん、一味さん、ファラオさん、カエルさん、PHYさん、そして僕です。
このゲームはルールブックの和訳がクロノノーツにて公開されています。これがなかなかの力作なのですが、どうも急いで仕上げたようで、残念ながら誤訳や誤変換がところどころにあります。また、発売元の GMT よりエラッタがいくつか出ていますが、和訳ルールはそれに対応していません。
幸いにして和訳ルールはPDFで公開されていましたので、そのテキストを抽出した上で、自分なりに再編集してみました。もちろん間違いの訂正やエラッタにも出来る限り対応させています。手間がかかる大変な作業でしたが、ルールを読み直す作業がついでに行えたので効率は悪くなかったかも。
午前11時30分ごろから準備を始め、ルールの確認などしつつ12時30分ごろからゲームは開始されました。そして終わったのは22時30分過ぎ。実に10時間にも及ぶ長時間のセッションとなりました。
Here I Stand / GMT Games
1532年シナリオ。6人。
宗教改革の時代の流れから言えば、序盤の終わり頃といったあたりです。ゲーム的なシチュエーションとして大きな特徴は、ドイツ全土はプロテスタント化していて、さらにプロテスタント勢力に地上部隊が存在することです。したがってマップ上のすべてで軍事的な衝突が発生する可能性があります。
今回、僕の担当はハプスブルグ家でした。この勢力の特徴は「首都が2つあること」と「勢力範囲が分断されていること」です。欧州の西方端に位置するスペイン全土はいいとして、ウィーンを中心としたオーストリア周辺の勢力範囲下はオスマン帝国と対峙している軍事的緊張の高い地域だったりします。また、オランダのアントワープ周辺にも勢力があります。アントワープはキースペースなので大変に重要な地点なのですが、ここほど守りにくい場所もありません。
ゲームが始まるとすぐ、ハプスブルグ家はオスマン帝国軍のうずたかく積まれたハイスタックへの対応に追われることになりました。前回のセッションでは、オスマン帝国プレイヤーのダイス目が極端に悪くて、イスタンブール周辺に軍勢が張り付いていたのとは大違いです。有能で獰猛なオスマン帝国の指導者であるスレイマン1世は、部隊統率力が「12」もあります(他勢力の指揮官は6~8くらいです)。部隊の移動や戦闘の集中運用に大きな制限のあるこのゲームでは、その存在自体が大きな脅威となっているのです。
さらに西方では、イングランドが宣戦布告を行使し、本格的にアントワープ攻略体制に突入しました。アントワープを単独で守るのは至難のワザに思えたので、僕はすぐに救出を諦めてしまいましたけれども、この局面では、腰の重かったフランスを説得するとか、あるいはローマ教皇と一致団結して何かしでかすとか、何か反撃する手はあったかもしれません。淡泊な対応は、やや悔やまれる判断ミスでした。
もっとも、協力相手候補のローマ教皇の方も、プロテスタント勢力相手に、相変わらずいつ果てるともない宗教論争を繰り返していましたので、そちらはそちらで大変そうではありました。状況は一進一退を繰り返していて、ターンごとに欧州の大きく宗教的勢力図が書き換わっていました(実はこのあたり、あんまり詳しくチェックしなかったのですけど…)。
その後、途中経過では実に様々なことがあったのですが、結局はオスマン帝国が陸に海に大躍進する展開となりまして、ハプスブルグ家の勢力をウィーンから押し出してジ・エンド。これにて最後のターンを待たずして、オスマン帝国の勝利をが確定しました(ポイントで判定勝利)。
ハプスブルグ家は、ゲームを通じて地勢的に苦しい形でゲームを進めなければならず、外交において技巧的に立ち振る舞うことが要求されます。ハプスブルグ家が弱体化するとオスマン帝国が台頭してくるのはマップを見れば一目瞭然ですから、逆にこのあたりを交渉材料にして、もう少し上手く時間稼ぎをする必要があったのでしょう。同盟ルールをもっとも活用しなければならないのはハプスブルグ家であり、特にローマ教皇との連携をもっと早めに取るべきでした。
このゲームはこれで2回目のプレイですが、このような複雑で微妙なバランスオブパワーの妙を、僕はどうもまだ完全に理解することが出来ていないような気がします。ゲームが始まってしまうと、カードの強力な効果に対応して捌いていくのに精一杯で、細かい外交のアヤをコントロールする技術を修得するには至っていないということです。全体的に運の比重が高いので、近い将来の予測すら立てづらく、その中で細かい外交を行うはそもそも困難であるということもあります(ま、これは言い訳ですが…)。
ただこのゲームは、言葉で語り尽くせない摩訶不思議な楽しさや奇妙な魅力を持っています。好き嫌いだけを言うなら、間違いなく好きなタイプのゲームなのです。これは僕だけではなかったようで、前回のセッションをきっかけにして、宗教改革の歴史的なバックグラウンドを調べた人も何人かいました。そうすると、「Here I Stand」が当時の歴史的状況をマクロ的な視点から眺めつつ、精密な手法で再現している良作であることが実によくわかるのです。
このように、「Here I Stand」は、主にシミュレーション性を重視して設計されているため、ゲーム性をある程度犠牲にしている箇所もあります。例えばイングランドがそうです。この国は単独でも他の勢力と組んでも、何か大きなことを起こすのが難しい状況に置かれています。これは歴史的にイングランドがそういう時期だったためで、ゲームにおいても手札が少なめに設定されていたり、ヘンリー8世の後継者(勝敗に大きな影響を与えます)がランダムで決まってしまうという問題を抱えています。
しかしながら、これは歴史シミュレーションゲームとしては、ゲームデザイナーによる極めて正しいアプローチなのです。ですが、実際にこの長時間ゲームをプレイするプレイヤーの心理として、そういうことを十分に理解した上でなければ、単に理不尽に苦しい状況に置かれているだけと感じてしまうこともまた理解出来ます。普段は競技性の高いゲームをプレイしている人ならなおさらでしょう。
繰り返しますが、「Here I Stand」は歴史シミュレーションとして完成度の高いゲームとして実に見事に仕上げられています。当時の各勢力のリーダーが持っていたジレンマを、ここまで緻密に表現していることだけでも称賛に値すると僕は思います。濃密な歴史ドラマを体感することの出来る稀少な力作として、そのあたりに楽しむポイントを置いて味わっていただきたいところです。若干バランスの偏った勢力もありますが、絶対に勝てないほどではありません(それでも理不尽に感じるなら、開始時のポイントを増減して調整すればいいのです)。
ところで2回目のセッションで新たな(そして正しい)ルール解釈も出てきたりしました。どうもまだルール運用も不安定なので、もし次のセッションがあるなら、もう少し整理したリファレンスを作りたいと考えています。
http://www.boardgamegeek.com/game/17392
レポートは以上です。みなさん疲労困憊状態ということもあってアフターはなし。長時間に渡ってお付き合いいただきましてありがとうございました。本当にお疲れさまです。またぜひお付き合いください。
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