15日(土)は、西八王子は taroさんの自宅で開かれたゲーム会に参加してきました。参加者は taroさんの他に、カエルさん、一味さん、それに僕の4人です。メインのゲームは「Successors (サクセサーズ) / Avalon Hill」。ちょうど10年前(1997年)に発売されたゲームです。そういえば発売元のアバロンヒル社は、この翌年にハスブロー社に買収されました。当時は衝撃的なニュースでしたが、今となってはなんだか遠い昔のことのようです。

この「Successors」は発売当初、ルールブックに不明瞭な点が多くあったため、その内容が十分に理解される前に不名誉な評価を市場から下されてしまいそうになった不幸な作品でもあります。多くのエラッタを経て、現在はルールが明瞭化が進んだこともあり、BoardGameGeek の評価値も概ね高いレベルで安定しています。ですが、今でも発売当初の悪いイメージが払拭しきれていない人もいるようです。

エラッタや新ルールを加味するなどして、すでにルールは第2版となっていますが、今回のセッションでは、これら多数のエラッタが適用された初版ルールでプレイしました。自分以外の参加者はすべて2~3回プレイ経験があったので、ルール的な問題点はほとんど発生しませんでした。また、ほとんどのルールは「どこかで見たような」感覚で読めたほどスタンダードな構造のカードドリブンだったこともあり、初プレイの自分も、ルールを習得すること自体にはそれほど苦労しませんでした(ちなみに、ウェブ上で公開されている訳は使っていません)。

問題があったのはゲームの方ではなく自分の体調の方でして…。ここ数日、風邪のひき始めのような感じの頭が熱っぽい状態が続いていたので、前日は安静の時間を多く取って体調を整えました。この日、ゲーム開始から数時間は比較的大丈夫だったのですけれども、思いも掛けず長時間ゲーム(なんと8時間超)となってしまったこともあり、終盤はちょっと疲労気味でゲームに食らいついている状態でした。

冷たくて乾燥した空気と高い青空が広がる典型的な東京の冬の一日。


Successors (サクセサーズ) / Avalon Hill moon Gamermoon Gamer

久しぶりのウォー&マルチ。

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「Successors」は、アレキサンダー大王(アレクサンドロス3世)が急逝した後に勃発した後継者争い、いわゆる「ディアドコイ戦争」をテーマにしたヒストリカルシミュレーションゲームです。軸になるメカニクスはカードドリブンシステムで、デザイナーは傑作「ハンニバル」の Mark Simonitch と、70年代から100を優に超えるゲームを世に送り出してきた Richard H. Berg の両巨頭による合作です。

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ボードには、歴史の教科書によく出てくるアレキサンダー大王の勢力範囲が描かれています(最東部はメディア付近で、それより東はありません)。陸地はエリアに分割され、エリア内には「大都市」「小都市」「城塞」等のスペースがあります。スペースは通路によって接続されています。

ほとんどのエリアには複数のスペースがあり、その過半数に自分の「守備軍」マーカーを配置したら「支配」したことになり、エリアごとに配分された得点が加算されます。エリアの支配から、いくつかの条件を満たすとボーナス点が入ることもあります。得点はこの2種類のいずれかです。

守備軍マーカーを配置するならカードで行えますが、敵対する勢力や中立勢力の守備軍マーカーを除去したり、配置し返したり、あるいは敵からそうなれないように守るには「戦闘ユニット」が必要です。戦闘ユニットは自発的に移動せず、それを行うには「部将」が必要です。

「部将」は各プレイヤーに2人ずつ(4人プレイ時には計8人)与えられます。なんと、これらはゲーム開始時に各プレイヤーへランダムに配られます。部将ごとにセットアップに位置と保有戦力が異なっており、ゲームごとに異なる状況で開始することになるでしょう。

この「部将」こそが、急逝したアレキサンダーの後継者としての立場を狙う重要人物たちです。しかし最初は母国マケドニアの忠臣という立場を取っていますが、各地で自分の勢力を徐々に広げ、自らの「正統性」を主張する地固めを行います。

「正統性」は、勝利得点とは別に管理される重要なステータスです。各地にいる王位継承者や重要人物を支配下に入れたり、あるいは結婚したりすることにより「正統性」は高まります。正統性が高いと、より強力なマケドニア兵の雇用が行えたり、サドンデス勝利に有利に働いたりします。

また「忠臣」である立場のプレイヤーに対しては軍事的に直接行動を取ると、正統性が低下することがあります。ただし、勝利得点が最も多いプレイヤーは「簒奪者(王位を狙うもの)」として扱われるために大義名分が成立し、彼に戦闘をしかけてもこの罰則はなくなります。

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このゲームには、移動も戦闘も不確実な要素に満ちあふれています。単に移動をするにしても、ダイスと部将の能力によって2~4まで変化します。戦闘はさらに不安定で、倍の戦力でぶつかれば(負ける可能性はまだありますが)とりあえずは安心という感じでしょうか。そしてその結果はとてつもなくブラッディで、勝利者はほとんど被害が発生せず、敗北者はほぼ全滅に近い被害を被ります。

つまりプレイヤーは、史実通り相当に不安定な状況に置かれており、大局的にも混沌かつ流動的な展開となりやすくなっています。これは史書から読み取れるディアドコイ戦争の雰囲気が実に生き生きと醸し出されており、制作者たちのコンセプトが適格に表現されている作品でした。

今回のメンバーの中では僕1人が初プレイだったので、序盤からとりあえずあちこち動いてみて、その様子を探ってみました。地中海は見た目よりも狭いとか、あるいは迎撃の重要性やエリアの守り方など、(失敗を重ねつつも)何とか把握はできたような気がします。少なくとも次のゲームでは、今回よりはうまくコマを捌けると思います。

カードドリブンで最重要なカードも、このゲームはそんなに種類が多くないため、全体を把握するのはわりと容易でした。このように、戦術的なことはすぐに結果が適用されることもあって見た目にもわかりやすいのですが、一方、先を見越した長期的な展望を考えて行動を選択するのは相当に難しいタイプのゲームだとも感じました。

というのも、「Successors」は極めて戦略的自由度の高いシステムだからです。プレイヤーの保有する部将は、ルール範囲内において、どれも行動選択に制限がありません。乱数が大きく影響するとはいえ、プレイヤーの形成判断と決断のタイミングが、ゲームの流れを作り出す極めて重要な因子となっているのです。いいゲームです。

もっともラウンドごとの移動範囲はダイスで決まりますので、いつでも最適な選択を実施できるわけでもありません。が、たとえハードラックに陥ったとしても、重要拠点とそこに至るまでに道のりは部将が密集し、たいていは緊張感にあふれたつばぜり合いが盤上で繰り広げられています。つまり、最終盤でもない限りは、他の選択肢は残っているものです。

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さて、ゲームの細かい展開はさておいて、結果的には2位(だったっけ?)に終わりました。これは最後の最後で使ったカードによってたまたま得点を稼ぐことができた幸運のためでしょうね。最後のターンは全員が勝利の可能性があった大接戦となり、随所で派手なイベントや戦闘が乱舞する激しい展開となりました。

あまりの熱戦のために、ゲーム時間が予想よりもかなり長くなってしまったのはご愛敬というか(サドンデスルールがあり、それが適用されるともっと早く終わります)。とにかくも、想像を超えて面白いゲームだったのは大収穫でした。終盤は体調的なこともあってだいぶ疲れてしまいましたが、休日の1日をつぶす価値のある作品でであったことは間違いありません。

特に中盤まで(1~2ターン)のゲームメイクしていく過程は、背筋がぞくぞくするほどの面白さを堪能しました。戦略面は当然として、臨機応変に部隊の運用が可能な迎撃ルールや、多彩な兵種を運用する戦術的な用兵要素も、シンプルなルールの中にたっぷり盛り込まれており、密度の濃い世界をじっくりと味わい、そして楽しむことができました。

ただ正直なところ、乱数の幅が広くてカオティックな構造なために、それなりに人を選ぶゲームだとも思いました。だからこそ、これを楽しめる環境がこんなに近くにあったのは幸運だったといえましょう。ということでぜひとも再戦を。今からマップを眺めて作戦研究をしておきましょうか。
http://www.boardgamegeek.com/game/68


体調的なこともあって、この日はアフターをキャンセルしてすぐ帰りました。本来なら「Age of Empires III」をプレイする予定だったのですが、時間的に難しくてこれはまた後日ということに。

ところで、このセッションで「Successors」が大いに気に入ったので、帰宅してからこの当時の史料を何冊か注文しました。また、さすがにこの時代の文書はネット上にもかなりあるので、今はそちらで予備知識を蓄えているところです。

ということで、本日はお疲れさまでした。
楽しい1日を過ごすことができたことを感謝します。
またぜひ遊びましょう。moon Gamer