namibia

ナミビア、と聞いて、これが何となく国名であるとはわかっても、その国がどこにあるのかまで知っている人は、おそらくそれほど多くはないでしょう。少なくとも日本では、ナミビアという国が話題になったことは、現在はもちろん、過去にもほとんどありません。

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ナミビアは、アフリカ大陸の南西部、南半球側に位置する国です。希望岬のある南アフリカ共和国の北西部と言えばわかりやすいでしょうか。

今回の記事とは関係がないので詳細には書きませんが、特に近世以降において、アフリカのどの地域にも凄惨な歴史が現在でも暗い影を落としています。ナミビアも例外ではありません。この国が成立したのは1884年で、それはドイツの植民地としてでした(ドイツ領南西アフリカ)。アフリカのほとんどの国がそうであるように、ナミビアの国境線も植民地を支配する側の国々の都合によって決められました。

さて、日本においては知名度が低いナミビアですが、前述のようにドイツでは歴史的になじみのある国のようです。今回のレビューする「ナミビア」は、ドイツの Mucke Spiele から発売されました。

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このロゴは、同人ゲームの制作者なら見たことがあるかもしれません。発売元は通称「ドイツのコマ屋(あるいは単に『コマ屋』)」こと www.spielmaterial.de から派生したオリジナルゲームブランド Mucke Spiele のものです。

たまにサイトへアクセスすると、新作がけっこうなペースで追加されていたりしますね(そしてそのゲームで使用されているのコンポーネントがコマ屋サイトの方で売られていたりしますw ゲームの企画が先なのかコンポが先なのかは知る由もありませんがw)。

Overview

「ナミビア」は4種類の天然資源(鉱物)を発掘し、それを港へ運んで、できるだけ高い価格で売却して利益と評判を競うボードゲームです。プレイタイムは120分と箱に記載されており、これは昨今の基準では長時間ゲームとして分類される長さでしょう。

ゲームは全6ラウンドあって、各ラウンドには4つのフェイズがあります。サドンデスルールはありませんが、ラウンド数(ターン数)が決まっているので、いつまでも終わらないというようなことはありません。ちなみに脱落ルールはあります(まず起こらないでしょうけれど)。

各ラウンドのフェイズ構成は以下のようになっています。

1.植民地の執政官買収フェイズ
2.建設フェイズ
3.船積みフェイズ
4.管理フェイズ

簡単に言うと、まずそのラウンドのプレイ順等を決定するための競りが行われ、その順番で発掘調査や鉱山や鉄道を建設し、そして実際に発掘を行い、それを港まで運んで利益や評判を得ます。「評判」の要素を除くと、マップがヘクスグリッドなのも含めてまるで「蒸気の時代」の構造を想像する方もいるかもしれません。しかし両者は細部においてまるで異なる構造のゲームです。

植民地の執政官買収フェイズ
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競りのルール自体はシンプルです。現在のラウンド数を最低入札価格として、スタートプレイヤーから順に、競り上げるかパスして抜けるかを選択します。最初に競りから抜けたプレイヤーを4位(4人プレイ時)として、1〜4位を決めます。この順位が建設フェイズと船積みフェイズでのプレイ順となります。

この競りには他にもいくつかの意味があります。まず順位が上であるほど、多くの「線路」を受け取ります。線路とは、鉱山から鉱物を港へ運搬するための交通機関で、収益を得るためにも、評判を上げるためにも重要なインフラです。なお、盤上に配置された線路に所有権はなく、可能であれば誰でも無料で使える公共交通機関でもあります。線路の建設はこの後の建設フェイズで行います。

もうひとつ。競りで順位が上であるほど、より多くの評判を失います。評判は勝利得点でもあるので、失う評判に見合うだけの価値があるかどうかを見極めるながら入札する必要があるわけです。まとめると、競りではプレイ順と線路が得られて、入札したお金と評判が失われます。

なお、最初に競りから脱落したプレイヤー(4人プレイ時なら第4位)は、この後のフェイズでプレイ順や線路建設では不利となりますが、2つの特典が与えられています(後述)。ですので、大金をつっこんで3位になるよりは、早々と脱落して4位を選択した方が得なケースがあります。

moon Gamer 建設フェイズ

鉱山の開発と鉄道建設を行うのが建設フェイズです。建設フェイズは以下の5つステップを、1〜5の順番で、プレイ順にしたがってプレイヤーごとに行います(あるプレイヤーが1〜5を行ってから、次のプレイヤーが1〜5を行う)。

a.鉱山の建設完了
b.新鉱山の建設開始
c.資源調査
d.鉄道建設
e.トラックを鉱山へ移動

このゲームであつかう4種類の「鉱物」は、盤上のマス(ヘクス)から産出されます。プレイヤーが鉱物を産出するためには、マスの上に鉱物キューブが存在することと、そこに「鉱山」の存在が必要となります。

このゲームでは「ダイヤモンド」「金」「銀」「銅」の4種類の鉱物が扱われますが、各プレイヤーが採掘できるのはそのうち3種類だけです。その組み合わせはプレイヤーごとに異なっています。つまり各プレイヤーは、ダイヤモンド・金・銀・銅のうちいずれかひとつを扱えないのです。自分が扱えない鉱物キューブの存在するマスには鉱山を建設することはできません。

鉱山を建設するには2ラウンドかかります。前のラウンドの建設フェイズ・ステップ2「新鉱山の建設開始」で新しい鉱山を配置することで、次のラウンドの建設フェイズ・ステップ1「鉱山の建設完了」で鉱山が完成します。

新鉱山の建設開始を行うマスは、他の鉱山が存在せず、なおかつそのプレイヤーが採掘可能な種類の鉱物キューブが存在していなければなりません。

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セットアップ時に鉱物キューブがいくつか配置されますが、ゲーム中に鉱物キューブを配置することも可能です。それを行うのがステップ3「資源調査」です。

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資源調査ステップでプレイヤーは、ルールで規定された条件に合致する空いたマスに1〜2個の鉱物キューブを配置します。

さて、プレイヤーは「新しい鉱山の建設」ではひとつの鉱山を、「資源調査」ではひとつのマスに対して鉱物キューブを配置します。これらは可能であれば必ず行わなければならない義務となっています。さらにプレイ順が4番目のプレイヤー(植民地の執政官を買収フェイズで最初に競りから抜けたプレイヤー)は、これらを可能な限り2回行わなければならない、という特典がついてきます。これはきわめて重要なルールです。

プレイ順が最後のプレイヤーが新鉱山建設と資源調査を2回行えるというのは、特に序盤において強烈なアドバンテージになります。特に4人プレイにおいて、序盤に2ラウンド連続して4番手になったプレイヤーは、恐らく相当に有利な状況となってしまうと思われます。いずれにせよ、この最終手番プレイヤーの特典を誰が得るのか、少なくとも中盤すぎまでは誰もが意識してプレイする必要があるでしょう。

これは「植民地の執政官を買収フェイズ」の競りにおいて、多額のお金をつっこんでプレイ順が3位になってしまうことに対する警鐘ともなります。3手番プレイヤーは得るものが少ないのですが、それなら失うものをできるかぎり減らすよう心がけるべきです。

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建設フェイズの最後の2つのステップは、いずれも鉱物の運搬に関わるものです。

鉄道はヘクスサイドに連続するように配置され、鉱山と港を結びつけます。鉄道は、鉱物を大量に運搬するための交通機関で、盤上に配置された時点で中立的な公共施設となり、可能であれば誰でもそれを使用することができます(使用するのは次の船積みフェイズ)。

トラックは限定的な鉱物運搬を行うための車両で、各プレイヤーごとに1台ずつ所有しています。これを自分の鉱山へ配置させておくことで、次の船積みフェイズでその鉱山の鉱物を鉄道を使わずに港まで運搬可能となります。

船積みフェイズ

完成した鉱山から、鉱物キューブを港に運搬するフェイズです。少しばかり変わった処理なので、順番に説明しましょう。

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船積みフェイズでは、プレイ順1位〜3位のプレイヤーが順番にアクティブプレイヤーとなります。プレイ順最下位プレイヤーは、このラウンドの船積みフェイズではアクティブプレイヤーにはなりません。

アクティブプレイヤーはまず、4種類の鉱物(ダイヤモンド・金・銀・銅)のうちひとつの種類を選択します。プレイ順2位と3位のプレイヤーが鉱物の種類を選択する場合は、このフェイズの自分より前の手番でまだ選択されていない種類の鉱物を選ばなければなりません。

またこの時に選択する鉱物は、自分が採掘できない種類の鉱物をあえて選択してもかまいません。

盤上には港が4つあります。アクティブプレイヤーは、鉱物の種類をひとつ選ぶ際に、港もひとつ選びます。この時に選択する港も、このフェイズでまだ誰にも選択されていない港でなければなりません。

なんだか面倒そうですが、実際の手続きはとても簡単です。アクティブプレイヤーは鉱物の種類を表す「鉱石ディスク」というマーカーをひとつ取り(それが運搬可能な鉱物の種類となる)、それを任意の港に置くだけです。後の手番で別のアクティブプレイヤーが港を選択する際には、マーカーまだ置かれていない港から選択すればいいのです。

その後で、選択された種類の鉱物をアクティブプレイヤーがまず船積み(自分の鉱山にある鉱物キューブを目的の港へ鉄道やトラックを使って運搬すること)します。アクティブプレイヤーの船積みが終了したら、その後でまだ船積みしていないプレイヤーたちが、プレイ順で船積みを実施します。

全員が船積みを実施したら、そのアクティブプレイヤーのサイクルが終了します。そして次のプレイ順のプレイヤーがアクティブプレイヤーとなり、鉱物の種類選択と全員の船積みを実施します。こうして、プレイ順3位のプレイヤーがアクティブプレイヤーとなり、全員の船積みが終わった時点で船積みフェイズは終了します。

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鉱石の種類ごとの市場価格・需給状況・売却総数は、「鉱石指標」と呼ばれるトラック上で記録します。

「鉱石指標」は右図のような構成で、鉱石の種類ごとに1列ずつの計4列のトラックを使います(右端の1列は拡張用に準備されたもののようで、このセットでは使いません)。

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各トラックごとにその鉱石の相場を表す「鉱石ディスク」(丸くて平たいコマ)と、その鉱石の需要状態を示す「需要ポーン」(チェスのポーンのような形状のコマ)が置かれています。

プレイヤーによって鉱石が売却されると、その鉱石の供給数を表す「供給マーカー」(黒いドラム缶コマ)で、このフェイズで売却された鉱石の総数を種類ごとに記録します。

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プレイヤーが鉱物キューブを港に運ぶと、まず市場価格にて売却され、運搬したプレイヤーは収益としてコインを受け取ります。

市場価格は、売却した鉱石の種類に対応した鉱石指標上にある「鉱石ディスク」の置かれたマスの値です。

その後で、同じトラック上の供給マーカーを、現在の値に+1したマスに移動させます。

例:銀の供給マーカーが「6」にある時、銀がひとつ売却されたら、それを「6」→「7」に移動させます。

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プレイヤーが鉱石をひとつ売却するごとに、供給マーカーもひとつカウントアップします。その値が、同じ列の「需要ポーン」の置いてある値を超えた瞬間、その鉱石の市場価格は半額となります。例:銅の市場価格が「4」、供給マーカーが「3」、需要ポーンも「3」の時、銀が売却されたら、供給マーカーを「5」に移動させた上で、銀の相場を半額(『4』→『2』)にします。

船積みフェイズにおいて市場価格は下がることはあっても上がることはありません。市場価格はこの後の管理フェイズにおいてさらに変動し、それによって鉱石の市場価格が上下することがあります。

船積みフェイズでは アクティブプレイヤーがまず鉱石の船積みを行って、その後で他のプレイヤーもプレイ順で船積みを行えます。もし、アクティブプレイヤーではないプレイヤーが船積みを行った場合、アクティブプレイヤーは評判ポイントを受け取ります。

受け取る評判ポイントは、船積みが実施された鉱山の数(鉱石の数、ではなく、『鉱山』の数)ひとつにつき2ポイントずつと、トラックによって船積みされた場合に2ポイントです。アクティブプレイヤー自身が船積みを行っても、収益は得られますが評判ポイントは得られません。

このようにして船積みフェイズは実施されます。前述のように、プレイ順が最下位のプレイヤーはアクティブプレイヤーにはなれず、したがってひとつのラウンドで運送される鉱石は3種類のみとなります。

管理フェイズ

ここでは主に「鉱石指標」を調整します。

1.供給が需要を上回っていれば、需要が+2(※船積みフェイズにて相場は半減している)
2.需要と供給が同じであれば、相場+1と需要+1
3.需要が供給を上回っていれば、相場+2と需要半減
4.このラウンドの船積みフェイズで船積みされなかった鉱石は、相場+3と需要+3

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需要が低い鉱石は、すぐに市場で飽和状態になって価格が暴落しやすくなります。需要が高くても供給されない鉱石は相場は上がりますが暴落の危険性が高まります。取引されなかった鉱石は、市場の期待が高まります。だいたいそんな感じでしょうか。

この調整後に、鉱石指標から供給マーカー(ドラム缶)を取り除き、また港に置いた鉱石ディスクも除去します。

また、すべての鉱石を採掘した鉱山はここで「廃坑」となり、鉱山マーカーを所有者に戻した上で、鉱山マーカーのあったマスに黒い四角形の廃坑マーカーを置きます。あるヘクスが廃坑になると、ゲーム終了までずっとそのままです。

また第3ラウンドと第5ラウンド終了時に、プレイヤーはお金を使って評判ポイントを購入することができます。

ゲーム終了

第6ラウンドが終了するとゲームは終了します。

盤上に鉱石キューブが残っており、そこに鉱山マーカーがない場合は、そのような鉱石キューブ1個について市場価格が−1されます。その後で、建設中の鉱山に鉱石キューブがあれば、それをその時点での市場価格で売却することができます。最後に、各プレイヤーは所持金5について1評判ポイントを獲得します。ゲーム中に獲得した評判ポイントと、この時点で得た評判ポイントを合算して、最も高い評判ポイントを得たプレイヤーの勝利となります。

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Namibia (ナミビア)
Designer: Brian Robson
Publisher: Mucke Spiele /2010
3 − 4 Players / 120 minutes

セッションレポートを書くつもりがレビューになってしまいました… レポートは別の機会に。