3/24 (日) に、地元は千歳烏山で行われたSGC例会に参加し、La Loire (ロワール川) / Mind the Move を遊んできましたので、レビューとレポートをまとめました。
◆概要
La Loire (ロワール川) は、Emanuele Ornella が 2012年に制作した経済ゲームです。彼は、Oltre Mare (オルトレマーレ / 2004)、Il Principe (君主論 / 2005)、Hermagor (ヘルマゴール / 2006)、Charon Inc (カロン株式会社 / 2010) など、国内でも和訳付きで発売された幾つものゲームを手がけています。
制作ペースは年に1〜2作のようで、そのほとんどはカードとお金を使った内容になっています。La Loire (ロワール川) は、まさしくそういう作品です。
◆ゲームボード
ゲームボードには、ひとつの対角上に「ナント」と「オーリアン」という2つの都市があります。
2つの都市の間には、ロワール川を挟んで9つずつの村があり、各村はひとつのマスを表します。つまり、都市から都市への距離は10マスであり、ゲームボードには総計20マスがあることになります。
18の村には、それぞれひとつずつ商品のシンボルが描かれています。商品シンボルは木材・チーズ・穀物・ワインがあり、ゲームで扱われるその他の商品としてビールもあります。
◆商人とメッセンジャー
プレイヤーは2つのトークンが与えられます。すなわち「商人」と「メッセンジャー」の2つです。ゲーム開始時に商人トークン(ポーン)はナント、メッセンジャートークン(キューブ)はオーリアンに配置されます。
◆勝利条件
プレイヤーの目的はより多くの勝利点をあげることです。商人は村で商品を購入し、それを都市で売却して現金収入を得ます。商人は都市で建物を建設してメッセンジャーが勝利点を獲得する機会の増加と得点効率を上昇させることができます。メッセンジャーはメッセージを配達することで勝利点や少しばかりの収益を得ます。どちらも新たなキャラクターを雇用して、制約に縛られた移動やアクションの利便性や能率を劇的に改善することができます。
◆移動とアクション
プレイヤーは手番になったら、2つのトークン(商人とメッセンジャー)のうちどちらかを移動させます。その後で動かしたトークンのアクションを行います。そしてもう一方のトークンを移動させて同様にアクションを行います。アクションは任意ですが、移動は必須です。また移動を行った後でなければアクションは行えません。マスの種類ごとに可能なアクションは異なります。また、商人とメッセンジャーでも可能なアクションが異なります。
◆移動と馬
商人とメッセンジャーは、どちらも馬で移動します。馬は白い円盤トークンで、その上に商人トークンやメッセンジャートークンを乗せる(スタック)と、それらのトークンが馬に乗っていることを表します。
馬トークンは2枚まで重ねることが可能です(注:右写真で馬トークンを3枚重ねているのは特殊効果によるものです)。そして重ねられた馬トークンの枚数+1マスが、トークンが1手番で移動するマス数となります(馬に乗っていない商人とメッセンジャートークンは1マスのみ移動)。
馬に乗って複数のマスを移動する場合、途中のマスで止まることはできません。短い距離を移動したいのであれば、移動開始前に馬の数を調整しておく必要があります。誰も乗っていない馬を自分のスタックに1枚だけ加えたり(ただし馬の枚数はスタックごとに最大2枚)、あるいは馬を移動開始マスに何枚でも置いて移動したりすることが可能です。
商人とメッセンジャートークンは、ある都市(ナントとオーリアン)から出発した後は、次に都市に止まるまでは方向転換が行えません。マスは周回構造になっていますので、例えばナントから出発したトークンが、オーリアンで止まらずに通過したのであれば、そのまま同方向へ進んで、少なくともナントに停止するまでは方向転換を行えません。ちょうど都市に止まったトークンは、次の移動開始時にどちらの方向へも進めます。しかし次に都市にちょうど止まって、そこから移動を開始するまでは方向転換が行えません。
◆商人のアクション
商人とメッセンジャーではアクションの選択肢が異なります。
商人の主な目的は現金収入です。村で商品を購入し、都市で売却して差額をもうけにするのが基本です。しかし、ひとつの村ではひとつの商品しか購入できません。また、木材を除いて1種類の商品は1つしか所有することができません。都市では幾つの商品でも売却できます。商品の価格は市場に示された村の種類ごとに決まります。ある種類の村で商品が購入されますと、その種類の村の価格相場が上昇します。
商人は都市に止まった手番で、商品を売却する代わりに建物を建設したり、ロワール川の勝利点を購入したりできます。いずれにせよ、どれかひとつのアクションしか行えません。
商人が都市から移動するためには、5ドニエ以上保有していなければなりません。そうでなければ、手番で1ドニエを受け取って商人の手番を終了しなければなりません(商人トークンは他に何もできない)。また10ドニエを越える所持金があれば、余剰なお金を捨てて10ドニエにしなければなりません。なお、メッセンジャーにはこれらの制限はありません。
◆メッセンジャーのアクション
メッセンジャーは、都市や自分の建物からメッセージ(手紙?)を受け取って、それを指定された村へ配達することで、主に勝利点を獲得します。メッセージには「レベル」があり、レベル1メッセージの目的地はひとつの村だけです。レベル2メッセージは2つの、レベル2メッセージは3つの村が配達先となり、また特定のキャラクター(後述)を雇用していなければなりません。
レベル1メッセージは獲得できる勝利点が少ない代わりに、わずかに現金収入が得られます(レベル2以上のメッセージは勝利点のみ)。
更に特別なメッセージとして修道院メッセージ(レベル4)があります。これは自分の修道院からのみ購入可能な価値の高いメッセージです。配達先は村ではなく、いずれかの都市(ナントかオーリアン)のみになっています。
◆特殊効果
「サーカス」がある村ではキャラクターを雇用することができます。これは商人でもメッセンジャーでも可能なアクションです。キャラクターは特殊効果を持ち、その効果はゲーム終了時まで維持されます。
また都市では「宮殿」と総称されている建物が4種類あって、これを商人が購入することで、メッセージ関連で大きな効能を持つ特殊効果が得られます。また「宮殿」は、商人が勝利勝利点を得ることのできる数少ない要素のひとつでもあります。
◆ルールの問題点
残念ながらこのゲームには、幾つかの問題点があることを書かなければなりません。
まずルールブックにはエラッタがあります。面倒なことに、英語とドイツ語のルールブックには、それぞれ別の誤りがあります。
ソース:http://www.boardgamegeek.com/thread/924618/erratas-corrections
- 「サーカス」の村で行う商人アクションでは、商品を1ドニエ安く購入するか、キャラクターを雇用するか、そのどちらかだけを行えます。これら2つのアクションをひとつの手番で両方とも行うことはできません(英文ルールのエラッタ)。
- 都市(ナントかオーリアン)で行う3つの商人アクション(商品売却・建物建設・ロワール川の勝利点購入)は、ひとつの手番で、それぞれのアクションを任意の順で1回ずつ行えます(ドイツ語ルールのエラッタ)。
また、ゲームボードにエラッタがあるのでは? という情報も見つけました。しかしこれは公式なエラッタとして扱われていませんし、ソース元では伝聞情報としてボードには誤りはないという話になっています。したがって今のところは、現状のままでも構わないと思います(ま、確かに麦畑のような背景にチーズのシンボルってのはヘンテコな気がしますけれども)。
ソース:http://boardgamegeek.com/thread/898961/mistake-on-game-board
もうひとつ。キャラクターカードの「女官(Lady in Waiting)」の効果についてです。「女官」の特殊効果で、2人目のキャラクターを雇用するときに支払う追加コストは、カード上では「+1ドニエ(1の数字が書かれたコイン)」になっています。しかし英文ルールの特殊効果一覧表では「+2ドニエ」となっています。一方で、ドイツ語ルールでは「+1ドニエ」です。この件について、僕はBGGで情報を見つけられませんでした。とりあえず、カード表記を優先して「+1ドニエ」でいいかと思います。なお、ゲームストア・バネスト訳では、そのようなエラッタ対応になっていました。
ソース:http://banesto.shop6.makeshop.jp/board/board.html?code=banesto_board1 「エラッタ情報」番号53の書き込み
※注意:これらのソース(典拠)へのリンクはすべて上記に記載しています。まずはそれらをご自分で確認し、理解するようにしてください。このブログの記事を鵜呑みにしてはいけません。
◆アートワークの問題点
各プレイヤーの2つのトークンが、どこにいてどちらの方向へ向かっているのか、フリーの馬トークンがどこに幾つあるのか、そういった基本的な情報が一目でとてもわかりにくく、ゲームボードの機能性が低いように思えました。馬トークンをスタックして移動するルールは、アイデアとしては良くても、現在の方法ではプレイアビリティが決して良くはありません。アイデアの実装として、他にもっと良い方法はなかったのでしょうか ?
「ロワール川」は、異なる機能を持つ2つのトークン(商人とメッセンジャー)を使ったピック&デリバリーです。その根幹となるトークン移動をこのような煩わしいギミックにしてしまったのはどうしたことでしょうか。見た目を美しくしたかったのは理解できるにしても、それで遊びづらくなってしまったのであれば本末転倒です。
◆戦略 (初回プレイ後に僕が考えたこと)
キャラクターの特殊効果を獲得することは、ロワール川で勝利するためには必須要素です。また複数のキャラクターを組み合わせて相乗効果を生み出すこともまた重要です。これまで説明してきたように、「ロワール川」には移動やアクションに多くの制約が課せられており、それを少しずつ解除する機能として設定されている特殊効果が多くあるためです。
ですから、キャラクターを雇用する「サーカス」の位置には気を遣いましょう。ルールによってサーカスは何度も移動します。自分の思い通りに移動先をコントロールすることは困難でも、現在の村から移動してしまうだろうということを予測することは可能です。またキャラクターの中には、サーカスに止まりやすくしたり、移動を基本ルールより柔軟に対応可能にしたりする特殊効果を持つものがありますので、その雇用も考えましょう。
また「ロワール川」は、商人で勝利点の機会と効率を増加させ、メッセンジャーでそれを回収するような構造になっているように思えました。商人は、勝利点を直接獲得する手段が少なく、できたとしても効率が悪くなっています(都市に宮殿を作っても4ドニエで2勝利点のみ、ロワール川の勝利点購入も6ドニエか10ドニエ必要)。農場・城・修道院建設で直接勝利点を獲得できないのも、そういう方針でデザインされているためと思われます。
メッセンジャーが配達するメッセージは、レベル1よりもレベル2や3の方が実は早く行えますので、勝利点だけに着目すると、設定数値以上に得点効率が高いです。各プレイヤーの配達可能なメッセージ数は、ゲーム終了条件と絡んで上限があります(4人プレイ時は誰かが8通配達すると終了フラグ)から、低い点数のメッセージを多く運ぶのは、ゲームを早く終わらせたいという意図がない限り、さほど良い作戦とはいえないのではないでしょうか。現金収入を伴うメリットがあるとはいえ、出来れば早めにレベル1メッセージの配達を切り上げて、必要なキャラクターを雇用(徒弟と助っ人)し、いち早くレベル2以上のメッセージ配達を目指す方が効率的だと思いました。
◆セッション
このセッションで勝利したすいせいさんは、実に興味深い作戦を採用していました。ほとんどのキャラクターは雇用すると1勝利点が得られます。しかしキャラクターの購入コストは1〜10ドニエまで様々です。そこですいせいさんは、コスト1ドニエの安価なキャラクターを、サーカスに止まるなど機会があるごとに次々と雇用したのです。特殊効果の活用を目的とした雇用ではありますが、1手番1ドニエで1点が得られるという、コストパフォーマンスが高いという貴重な副産物が結果として付いてくることになりました。
最後に決め手になったのは、配達済みのメッセージの勝利点を上昇させる青キャラクター(購入コスト10ドニエ)でした。すいせいさんはこれを最終手番で雇用し、それまでトップを独走していたプレイヤーをわずかに差しきって逆転勝利を収めたのでした。キャラクターの雇用は1手番で1人しか行えないので効率よく行うのは大変に難しいのですが、すいせいさんは他のキャラクターの特殊効果を活用するなどして、その高いハードルを乗り越えた末につかみ取った勝利だったわけで、本当にお見事でした。
「ロワール川」は、勝利するための道筋が幾つもあり、それを考えている時間はとても楽しかったです。適度な歯ごたえがあって、アイデアだけならユーロスタイルのゲーマーズゲームとしては及第点の作品でしょう。それだけに、エラッタやプレイアビリティの悪さをとても残念に思いました(どうも最近こんなことばかり書いてる気がしないでもありません)。
事前の情報収集が不完全だったため、今回はすべてのエラッタが適用できなかったこともあり、もし次の機会があれば、ぜひとも正確なルールでプレイしたいと思っています。ということで、再戦熱烈希望です。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/130008/la-loire
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