Legends of Andor (アンドールの伝説) は、2013年のドイツ年間エキスパートゲーム大賞を受賞したゲームです。この記事を書いている時点では未発売ですが、近日中に日本語版が発売される予定もあるようです。
先日、「アンドールの伝説」の英語版を購入し、ショップ添付の和訳ルールを元に、6月のSGC例会にてプレイしました。
それは、エキスパートゲーム大賞ノミネートにふさわしい、充実した内容のゲームで、一緒にプレイしたメンバー共々、楽しい時間を過ごすことができました(※6月の時点では受賞発表前)。
「アンドールの伝説」には、シナリオに相当する「伝説」を単位としてゲームを行います。本作にはこれが 5 つ収められており、そのいずれもが緊迫感に満ちたと演出が施されています。
それぞれの「伝説」は、物語として魅力的であることはもちろん、ゲーム的にも盛り上がるよう入念に作られているのです。このような考え抜かれた「伝説」のデザインは、エキスパートゲーム大賞を受賞した大きな理由にもなっているのではないでしょうか。
ひとつの「伝説」は、数枚のカードによる「伝説デッキ」で構成されています。プレイヤーたちは、まずどの伝説をプレイするかを選び、それで使用する伝説カードを順番に重ねて伝説デッキを作ります。伝説準備カードに記載された通りにセットアップを行い、そして伝説デッキの一番上にあるカードを読み上げることでゲームが開始されます。
「アンドールの伝説」の魅力である「伝説」についてご紹介したいところですが、その内容を書いてしまうとネタバレになってしまいます。そこで本記事では、本作の特徴的なゲームシステムである「時間トラック」と「伝説トラック」についてご紹介しましょう。
※本記事の訳語は、僕が購入したゲームストア・バネストによって添付されていた日本語ルールブックに準じています。後日発売される日本語版とは異なるかもしれません。また、伝説の内容によっては、ここに書かれたこと以外の例外的な処理が発生することもあります。
◆時間トラックと時間マーカー
「アンドールの伝説」は協力ゲームです。プレイヤーはそれぞれ異なる特殊能力を持つ「ヒーロー」ひとりを担当し、全員が協力して伝説カードで提示された問題を解決し、クリアを目指します。
本作では、ヒーローごとの時間管理システムに特徴があります。まず、ヒーローごとに「時間マーカー」が用意されています。
あるヒーローが手番でアクションをすると、そのヒーローの時間マーカーを時間トラック上で進めます。ヒーローごとに時間マーカーを管理しますので、それぞれの消費時間は、同じアクションをしない限りは異なってきます。
また時間トラックは、7マスの「昼」と、3マスの「夜」に分かれています。ヒーローが夜にアクションをすると、夜のマスをひとつ進むごとに精神力を余分に消費します。「精神力」とは、ヒーローの耐久力と、戦闘能力を決定する重要な要因のひとつです。
たいていのヒーローは、精神力が減ると戦闘能力も減退し、これがゼロになるとヒーローは倒れて「体力 (Strength:基礎的な攻撃能力) 」をひとつ失います。
プレイヤーは手番で、「通常アクション」を 1 回だけ行います。手番で通常アクションを行うことは、ヒーローの (ルール的な意味で) 義務です。通常アクションには「移動」「戦闘」「待機」「盟友の移動」の 4 種があります。
このうち「移動アクション」について簡単に説明しましょう。ヒーローが移動アクションを行う場合、ボード上の隣接するスペースへ移動するごとに、そのヒーローの時間マーカーを 1 マス進めます。
ヒーローは 1 回の移動アクションで複数のスペースを移動することもできます。例えば、3 スペース移動したら、そのヒーローの時間マーカーを時間トラック上で 3 マス進めます。つまり、1 回の手番で複数の時間が消費されたことになります。
「戦闘アクション」も、ひとつの手番で複数の時間を消費する可能性のあるアクションです。ヒーローが戦闘を行う場合は、まずそのヒーローの時間マーカーを 1 マス進めます。そして「ヒーローの攻撃」→「モンスターの攻撃」→「戦闘力の比較」と進んで戦闘結果を適用します (戦闘の敗者は精神力を失います)。
戦闘の結果、ヒーローとモンスターがいずれも精神力が残しているなら、戦闘当事者のヒーローは、この戦闘を継続するか、あるいはやめるかを選択します。
もし、戦闘を継続することにしたら、戦闘当事者のヒーローは、その時間マーカーをさらに 1 マス進めます。そして上述の一連の手続きを行います。こうして、時間を費やすことで複数の戦闘を繰り返すことができます。
もちろん戦闘中に夜になると、そのことによって精神力を失いますし、1 日の時間を越えて戦闘を継続することはできません。
また、複数のヒーローたちが協力して 1 体のモンスターと戦う「チーム戦闘」の場合でも、それに参加するすべてのヒーローは、戦闘開始時と、戦闘を継続するたびに、それぞれの時間マーカーを 1 マスずつ進めます。ですので、同じモンスターを一緒に攻撃しているのに、あるヒーローは昼で、別のヒーローは夜になっているということもあり得ます。
その他の通常アクションに「待機アクション」という、いわば何もしないことを選択するアクションもあります。しかしそれでも、そのヒーローは時間マーカーはひとつ進めなければなりません。
手番で選択義務のある通常のアクションの他に、時間を消費しない「自由アクション」も幾つかあります (詳細は略)。自由アクションは、通常アクションの前か後に好きなだけ行えます。しかし、自由アクションだけを行って手番を終えることはできません。ですから、手番が回ってくるたびに、原則としてヒーローの時間マーカーは少なくともひとつは進みます。
◆1 日のサイクル
時間トラックは「日の出」枠から始まります。
全てのヒーローは、1 日の始まりを日の出枠から開始します。そして 1 日の終わりも、この日の出枠の中で処理が行われます。
ヒーローは自分の手番を開始する前に、もう時間を使いたくないか、あるいは使えないとき、自分の時間マーカーをこの日の出枠に戻すことで「1 日を終える」ことができます。その日の最初に 1 日を終えて日の出枠に戻ったヒーローは、翌日には最初の手番となります。
あるヒーローが 1 日を終えて日の出枠に戻ったとしても、他のヒーローは、望むのであればまだ手番を使ってアクションを行うことができます。1 日を終えて日の出枠に戻ったヒーローは、その日は手番が飛ばされるので、何も行動をすることができません。
すべてのヒーローが日の出枠に戻ってきたら、そこで 1 日の終わりに行う一連の処理を実施します。この処理では、モンスターが自動的に移動し、井戸が復活し、そして伝説マーカーが伝説トラック上でひとつ進みます。
◆伝説トラックとは
伝説トラックは、ゲーム進行に関わる 2 つの極めて重要な意味を持っています。
伝説トラックは 14 マスあって、それぞれのマスには下から順番に「A」〜「N」の文字が描かれています。ある伝説が開始されると、その伝説ごとに、指定された伝説トラック上のマスに「星」トークンを配置します。
例えば、入門編の「伝説1」では、冒頭に「A」「B」「C」「D」「F」「H」「N」へ星トークンを配置するように指示されています。
ゲーム開始時(=伝説の開始時)には、「A」のマスに「伝説マーカー」を配置します。ゲームが進むと、この伝説マーカーがアルファベット順に(A→B→C→…)進みます。
伝説マーカーが進んだ先のマスに「星」トークンが配置されていれば、該当する伝説カードを引きます。伝説カードにも、伝説マーカーがどのマスに進んだら引くのかが示されています。
伝説カードを引いて、その説明を誰かが読み上げることで、それが実際に起こります。例えば、モンスターが増えたり、新しいアイテムが出現したり、盟友や農夫が登場したり、その他の様々なことが起こり、時にゲーム中の環境が劇的に変化します。これによって勝利条件が変化することさえあります。
そして伝説トラックにはもうひとつ、ゲームの終了条件に関わる重要な役割が与えられています。
伝説トラック上を伝説マーカーが進み、最後のマス「N」に到達すると(特に指定されていない限り) 伝説は終わります。
伝説が終わったとき、伝説カードで指示された勝利条件が全て達成されているのであればヒーローたちの勝利です。しかしそうでなければ失敗となります。
つまり、伝説をクリアするための時間は限られているということです。したがってプレイヤーたちは、可能な限り効率的に行動し、伝説の勝利条件を速やかに満たすよう努めなければなりません。
上述したように、伝説マーカーが自動的に進む処理は 1 日の終わりに行います。しかし、それだけではありません。実は戦闘と深い関係にあります。前置きが長くなりましたが、いよいよこの優れた仕組みについて解説しましょう。
◆戦闘と伝説トラックとの関係
モンスターと戦闘を行ってヒーローが勝利すると、戦闘に参加したヒーロー(たち)は報酬を受け取ります。そして、敗北した(=倒れた)モンスターはスペース「80」に置くことになっています。
さて、そのスペース「80」にあるシンボルに注目してください。ここには写真のように、伝説マーカーと上矢印が描かれています。これは、ヒーローが勝利し、モンスターが敗北するたびに、伝説マーカーが伝説トラック上でひとつ進むことを意味しています。
伝説マーカーが進んだ先のマスに星トークンがあれば伝説カードが引かれ、そこで状況が大きく変わることがあることは前述しました。戦闘勝利よって伝説マーカーが進むのですから、伝説カードによる環境の変化は、1 日の終わりだけではなく、ヒーローたちがボード上で活動している間にも起こりうるのです。
そして、伝説マーカーが進むということは、その伝説をクリアするために残された時間が減ってしまうということをも意味しています。戦闘で勝利するたびに、モンスターという障害物が消滅し、更に報酬までも受け取ることができますが、その代償として残り時間が少なくなってしまうのです。
つまりヒーローたちは、効率的な行動とともに、無駄な戦闘も行わないように考えなくてはなりません。そして必要な戦闘を行うのであれば、勝利の確率をできるだけ上げる方策をよく練らなければなりません。
戦闘はダイスを使いますので、中途半端な戦力差では不安定要因が増加するだけです。戦闘に負ければ、体力と精神力、それに何よりも大事な時間を失うことになります(戦闘は時間を消費する行動であることは前述の通りです)。
しかし状況によっては、強力なモンスター相手に、あえてギャンブルのような戦闘をしなければならないこともあるでしょうし、楽勝だと思っていたモンスター相手に、不運によって思わぬ敗北を喫することもあるでしょう(何しろダイス判定ですので)。
可能であれば、意に反した事態に陥ったときの打開策も事前に考えておくことです。もっとも、正面突破しか解決手段がないならば、運を天に任せて力任せに突進するのも、それはそれで楽しい展開ですけれどもw
◆ドイツ年間エキスパートゲーム大賞受賞の栄冠に輝く
このように、伝説カードと戦闘勝利で伝説マーカーを進める 2 つのアイデアがシナジーを生み、その他の要因も高く評価されたことによって、「アンドールの伝説」はゲーム史に名前が刻まれる作品となりました。
実際に本作をプレイしていただけば、入門編の「伝説 1」だけでも十分にその緊張感を味わうことができます。そしてそれをクリアしたら、もっと先に進みたくなるでしょう。またこのような仕組みのおかげで、本作のプレイ時間がそれほど長くならないことも大きな美点となっています。
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/127398/legends-of-andor
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