26日(土)は、カワサキさん宅で開かれた「シチリアの殖民」のテストプレイ会に行ってきました。参加者はカワサキさんの他、A葉某さん、常時次人さん、かゆかゆさん、タクヤさん、yas-oさん、それに僕の計7名でした。
「シチリアの殖民」はカワサキファクトリーの新作で、今年のゲームマーケットで販売予定の創作ゲームです。ゲーム自体は2005年の秋に開催された「第2回素人ボードゲーマーNo.1決定戦」にて初お目見え(当時のタイトルは『ポリス評議会』)し、それからずっと調整が続けられてきました。
それがいよいよ発売の見込みとなり、最終的な調整を兼ねたテストプレイ会に参加させていただいたわけです。ちなみに僕はこのゲームはまったくの初プレイでした。途中バージョンをプレイしているところは、各種イベント等でもう何回も見ているのですが、タイミングがまったく合わずに、この日まですれ違いのままプレイできずにいました。発売前に念願のプレイ機会を与えてもらって本当にうれしかったです。
この日は朝から晩まで、体の芯から凍るような寒さでした。もう少し厚着をしていけば良かった…
シチリアの殖民 / カワサキファクトリー
まず、本日第1回目のテストプレイ。5人。
シチリアの地に植民を行い、開発をし、発展させることで得点を競います。カワサキさんらしい、多くのテストプレイに裏付けされた盤石で独自のメカニクスと洗練されたスタイルが強烈に目を惹きました。
※補足:「シチリアの殖民」は現時点で調整段階であり、また以下の記事は主に記憶を頼りに書いています。したがって実際に頒布されるものとは異なる可能性があることをご承知おきください。
ゲーム開始時に5枚の法案カードがに配布されます。メインやサブのゲームボードや各プレイヤーごとのボードに必要なセットアップを行ったらゲーム開始です。
ラウンド開始時にまず、各プレイヤーはプレイ順に「立候補者」か「投票者」のどちらの立場になるか宣言します。
最後のひとりが宣言する前に、他のプレイヤーがすべて「立候補者」か「投票者」だけだった場合、最終宣言者はそうでない立場を宣言しなければなりません(つまり『立候補者』か『投票者』が少なくとも1人はいる状態にしなければなりません)。
立候補者側のプレイヤーは、手札から1枚ずつ法案カードを選択し、一斉に公開します。
この時、立候補者が複数いるのであれば、誰が何の法案カードを選択したのかは、他の誰にも(投票者にも他の立候補者にも)わからないように処理されます(テストプレイでは、カードスリーブを少し工夫したギミックでこれが実現されていました)。
公開された法案カードを見て、投票者プレイヤーはプレイ順に、任意の1枚の法案カードに、自分の投票チップを置きます。
投票は必須で、棄権は出来ません。また、立候補者側のプレイヤーは投票することはできません。
法案カード上にひとつでも投票チップが置かれたのであれば、その法案カードを公開した立候補者は「当選」します。複数の立候補者が当選することもあります。
当選した立候補者プレイヤーはプレイ順に、当選した報酬としてお金を受け取る(立候補者数によって報酬額は異なる/立候補者数が多いほど、当選が難しくなるので報酬額も多くなる)か、あるいは必要な追加コストを支払って、自分が提出した法案カードを実行するか、そのどちらかを選択します。
なお、落選したプレイヤーは何も行えません。
続いて投票者プレイヤーがプレイ順に、自らが投票した法案カードを実行します。実行にあたってコストの支払いが生じるのであれば、それを支払います。
この後で立候補者プレイヤーは、自分の提出した法案カード上にある投票チップを獲得し、自分の管理ボード上の所定の位置に置きます(獲得した投票チップは非公開)。これはゲーム終了時に得点になる可能性があります。
法案カードには大きく分類して「入植」「開拓」「建設」「特権」「資金援助」の5種があります。最も基本的な「入植」と「開拓」について簡単に説明してみましょう。
ボード上には4つの地形(草原・森林・麦畑・荒野)があり、「入植」と「開拓」はそれらに対応した種類があります。例えば「入植」は「入植草原」「入植森林」「入植麦畑」「入植荒野」の4種があります(開拓も同様)。
ある地形への入植カードを実行する場合、その地形の空いているマスに最大で3個の「小屋」コマを配置ルールにしたがって置くことが出来ます。小屋を配置する時には、個数に応じてコストを支払います。
ただしこの時、入植カードに指定された地形とは別の地形に対して入植を行うことも可能です。このような例外的な入植は、より多くにコストがかさむようになっています(入植コストはカード上に記載されています)。
「開拓」も同様に地形ごとに分かれています。「開拓」を実行する場合も、指定された地形のマスにある自分の小屋コマを1~3個除去して自分のストックに戻すことが出来ます。すべて小屋を除去せずに一部を残して置くことも可能です。
除去した小屋コマ数に応じて得点が得られます。「開拓」にはコストはかかりません。開拓カードに指定された地形とは別の地形で開拓も行えますが、この場合には追加コストがかかります。
「開拓」によって小屋コマを除去したのであれば、その地形へ都市タイルを配置します。都市タイルは、その地形上で建設予定地コマのあるマスへ強制的に配置されます(そのマスに小屋があれば除去)。そしてその都市タイル上に開拓を行ったプレイヤーのコマ(投票チップ)を置いて、都市の所有者を明示します。その後、建設予定地コマを都市に隣接する任意のマスへ移動させます。
都市にはいくつかの役割があります。最もわかりやすいのが「建設」法案カードによって「彫像」「宮殿」「宿舎」の建設候補地になるということです。これらの特殊建造物にはいずれも特殊効果があり、勝利には欠かせない重要なオブジェクトです。
また都市タイルの枚数はゲームの終了条件にも関わっています(残り枚数が少なくなるとゲーム終了)し、さらに終了時のボーナス点にも関わっています。都市をめぐる攻防が本ゲームの見どころにひとつになっています。
この日は昼すぎから合計で3回プレイしました。1回目はお約束でルールの一部聞き落とし(都市に隣接しない小屋の扱い)があってゲームに参加したかどうかすら危ういものでした。20点も取れず、順位も下から2番目。いや申し訳ない。
気を取り直して2回目は、冒頭3ラウンドで連続して立候補するもすべて落選(つまり3ラウンドを何も出来ないで手札だけが減っていく)というハードラックに陥り出鼻をくじかれました。後半で少し持ち直しましたが、結果的には同点最下位。うーむ。
これじゃ何をして来たのかわからないということで、3回目はやっと少しはまともな展開になりまして、中盤までは勝敗に絡んだつもりだったのですけれども、結局ここでも終盤に失速して、やっぱり下から2番目の点数でおわりました。まぁ、こんなもんです。
ルール的には、2回目で配布された法案カードのうち2枚を左隣へ渡すというルールが加えられ、これが法案カードのルールと抜群に相性が良かったようで、なかなか面白い効果を生み出すことになりました。さらに3回目では、強力だった「彫像」の効果が見直され、これによって戦略の多様性が増すことになりました。
そしてテストプレイ後は、3回のプレイを踏まえて、特権カード(上で省略しましたが、特殊効果を持つカードです)の効果について議論が自然発生的に起こり、あまり利用されなかったいくつかの特権カードを、より面白く自然に「シチリアの殖民」へ溶け込ませるためにはどうしたら良いかについて多くの意見が交わされました。具体的にそれらをご紹介できないのが残念なくらい、これは深みのある内容だったと思います。
「シチリアの殖民」は、カワサキファクトリーが満を持して放つ、極めて野心的な作品です。多くのテストプレイに裏打ちされた細やかな工夫の積み重ねと、そのストイックともいえる技巧的で硬派な内容は、市販のゲームに匹敵する完成度を誇ります。
ただし、プレイ時間はたっぷり90分かかり、プレイヤー間の濃密な駆け引きが最初から最後まで繰り広げられるゲーマーズゲームですので、これまでのカワサキファクトリー・ブランドのゲームとはは少し趣きが異っていることに、購入を考えている人はよく注意を払っておく必要があるかと思われます。
まだ調整段階ではありましたが、この規模の開拓・開発系のゲームとしては、ここ数年自分が遊んだ中では最も面白いものでした。これでゲームマーケットの楽しみがひとつ増えました。完成が心から楽しみな作品です。
レポートは以上です。仕事が少し残っていたのと、翌日もゲーム会だったので、少し早めに帰宅しました。素晴らしいゲームを何度も遊べて、充実した1日でした。こんなことでよろしければ、またぜひ協力させてください。今後ともよろしくお願いいたします。